運命の乗船

綿天モグ

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第123話 ケンの暇つぶし

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「おっ、アサにケン。お前ら何やってんだ?」
「船長おっはよー!暇だから二人で遊んでるの」
「遊んでるってお前ら……終わったらそのニンジンとナイフ、元の場所に戻せよ」

 風邪はもうすっきり治ったみたい!ニールとショーンが大事な話をしてるから僕とアサは談話室で遊ぶことにしたんだ。って言っても船の中でやれることってすごく限られてて、無いなら作れ、がモットーだったりする。

「あ、でもこれでオカリナ作るから……」
「ケン、それな俺らの食糧だって前にも話したよな。買い出しの前に何日分だからどのくらいの量の食べ物が必要だって計算したの覚えてるか?」
「もっちろん!でもー」
「でもじゃねえよ。これで最終日にニンジン足りなくなったらお前のせいだぞ?」

 たった一本のニンジンで怒られるなんてー!
 文句言ったのに船長はニヤニヤ笑ってるだけだし、僕の隣に座ってるアサは会話の内容が分かってないからアワアワしてる。


「もおおおおお!アサ、かわいい!」
「ケン、少し声量抑えろ」
「やだ、船長!見て!アサ、かわいい!」


 おっとー、抱きしめたらアサが余計アワアワしだしたぞっ。
 あきれ顔の船長はほっといてこのままアサとぎゅーってしてるだけでも楽しいかも!

「ケン、アサ、操舵室まで来い。暇なら遊ぶもんを貸してやる」
「なになに?!」
「廊下くらい大人しく歩けよ、お前」


 何だかよく分からないけど、楽しそうだから船長についていくことにした。操縦室はいつもだったらニールとショーンが働いている部屋で、もちろん船長も大体ここにいるんだけど……たまにふらふら船内を歩いてたりするから、神出鬼没だったりする。
 「サボってんの」って聞くと「俺は忙しいんだ」っていつも言うから、何かしてるんだろうけど、僕にはよく分からない!


「ケン?ドコ?」
「ん、っとね、操縦室に行くんだよ」
「ナン、デ?」
「んーそれは分からないの。まだ内緒だよ!行ったら分かるサプライズー!」

 鼻歌うたいながら、船長のあとを追って廊下を下ると、当直中の船員とすれ違ったりする。みんな、船長がいるって気づくとびしって姿勢を正して面白いんだ。僕にとってはお父さんみたいな人だけど、船長は恐ろしいって言ってる人もいるくらいだしね。それに上司なわけだから、畏まるのも当たり前なのかも!

 僕にはよく分からないけどっ!


「おい、ケン。この望遠鏡を貸してやる。もうすぐ島を通り過ぎるはずだから、アサと甲板で見てきたらどうだ?」
「い、いいの?!でもこれ、ミリさんが船長の誕生日にあげたやつでしょ?宝物だっていってたやつ!」
「ああ、俺の宝もんだ。だから壊したら容赦しねえ。大切に使うって約束するなら貸してやる」

 すごいすごいすごーーーーーーーーい!

 この望遠鏡は超がつくくらい特別なんだ。
 船長が他の人に絶対触らせないって有名なんだよ!

 恋人のミリさんが船長のために特注した世界で1つだけの望遠鏡!


「大切に使う!」

 ってことで僕とアサは甲板で観測ごっこをすることになった。



 
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