アルバトロスはどう応えたか

湯月@重陽

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実は将軍この人とんでもなく自己評価が低いんじゃないかな、とマーシィが思い至ったのは、副官という立場上、一番将軍に接する機会が多かったからだろう。
若干強面ではあるが顔立ちは整った方であるし、戦場ではそれこそ一騎当百くらいに腕の立つ人である。
将軍に推挙されたのは当時の中心メンバーの得手不得手の結果というのもあるが、他の傭兵団時代メンバーからも少しの文句も出なかったのは、戦働きや人望などを鑑みても特に言う事が無かったからだと、ぎりぎり傭兵団時代入隊者のマーシィは知っている。
戦場での突出は時にひやひやするが、フォローの有無ぐらいは考慮に入れておいてくれる人であるので、そこまで大きな問題でもない。

何故マーシィがこんなことを考えているかと言えば、最近の将軍周りが少々剣呑であるためだ。

神官の襲来からこっち、将軍宛てに何度か手紙が届いた。
手紙が届くたび将軍は不機嫌で、神官たちが諦めていないことが知れた。
頭の痛い話である。

もともと、とマーシィは思い出す。
数年前から将軍はピリピリしがちだ。
定期的な夜間外出が増えて、追った隊員は見事に撒かれた。
もともと秘密主義なところがあり、殊に詮索を嫌う人である。
傭兵団入隊以前については口を開かず、辛うじて知られているのはどうやら港町の出身であるらしいということぐらい。それも本人談ではなく、偶々立ち寄った港町でやたらと魚の目利きが出来たからというのだから、これはもう筋金入りだ。

何にせよ。そろそろ選択の時期は近づいていた。
特に傭兵団時代からのメンバーたちは、炯々と目を光らせて号令の時を待っている。

「恩やら義理も都度返しで返してきたんだから、貸しも借りも無いでしょう?」
とっとと離れましょうよ。こんな国なんて。
将軍不在の執務室に、マーシィのぼやきは揺らいで溶けた。

後にマーシィはこの時間を悔いる。
あんな事になるのなら、引きずってでも早く国を離れるんだったと。


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