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一章 淀む池に潜む魚
一人目
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華が歌っているように聴こえた。華に口は無いのに。
華が笑っているように見えた。華に口は無いのに。
走り抜ける足がどんどん前に体を運んで、周りの景色は次々と後ろへ流れていく。
走っているというよりも足が自走しているようで、一昔前の渦巻きの"走っている"の表現が、場違いに脳裏を過る。
ああ、ああ、ああ、 何て事 何て事 何て事
前を向く。
右手にあるのは地獄であった。否、次の瞬間には極楽へと変わってしまった。
光に闇にと反転し続ける。
美しく見えていた庭は、先程まで極楽に見えていた庭は、今では亡者が蔓延り、骸骨が此方に手を伸ばす地獄に見えた。闇にチラつく業火の玄い焔がぬらりと空を焦がして、炙られる半身はじりじりと汗を滲ませた。
ああ、ああ、ああ、 何て事 何て事 何て事なの !
じりじり じりじり じりじりと、炙られる右半身が焼け焦げる。めらめらと燃える焔に炙られる顔は歪んで、右目はもう、見えもしない。
足は、足は、 私、まだ、走れているの?
ああ、ああ、ああ、 何て事 何て事
_何でこんな事に。?
※※
テラテラと脂の光る肉を乗せて、ごそりと飯を掬い取る。あぐりと大口開けて迎え入れれば、口の中を濃い旨味とガツンとしたガーリックの豊潤が満たした。咀嚼し飲み込み、渦巻きの麩が揺れるレトルトの味噌汁で流し込む。
左手に持ったプラスチックの丼。右手の割り箸。机の上の、コンビニ飯の入っていたビニール袋。
スマホが鳴った。
「はい、野辺です。これは、どーもお久しぶりです」
「ああ、、、其れは残念です。後の事は直ぐに?」
「承知しました。直ぐに向かいます」
一息、_食事の残りを掻き込んだ。
ミントダブレットを噛みながら、緑茶を呷る。蓋をして、ゴミ箱に投げた。
※※※
魚を避けようとして人にぶつかった。
足早な影として動く人の群れは、何の反応も示さずに去って行く。
最近建った駅接続の商業ビル群エントランス。高く数階分を抜いて作られた現代芸術のモニュメントの様な空間は、幾らか外の様子が伺い知れる。
雨の気配の無い、一面の灰色の雲。
其の下、2・3階分の高さ迄、一様に淡い色の魚が泳ぐのが見えた。
_店々に並ぶ様々な商品が、川の流れに洗われる小石に見えた。
華が笑っているように見えた。華に口は無いのに。
走り抜ける足がどんどん前に体を運んで、周りの景色は次々と後ろへ流れていく。
走っているというよりも足が自走しているようで、一昔前の渦巻きの"走っている"の表現が、場違いに脳裏を過る。
ああ、ああ、ああ、 何て事 何て事 何て事
前を向く。
右手にあるのは地獄であった。否、次の瞬間には極楽へと変わってしまった。
光に闇にと反転し続ける。
美しく見えていた庭は、先程まで極楽に見えていた庭は、今では亡者が蔓延り、骸骨が此方に手を伸ばす地獄に見えた。闇にチラつく業火の玄い焔がぬらりと空を焦がして、炙られる半身はじりじりと汗を滲ませた。
ああ、ああ、ああ、 何て事 何て事 何て事なの !
じりじり じりじり じりじりと、炙られる右半身が焼け焦げる。めらめらと燃える焔に炙られる顔は歪んで、右目はもう、見えもしない。
足は、足は、 私、まだ、走れているの?
ああ、ああ、ああ、 何て事 何て事
_何でこんな事に。?
※※
テラテラと脂の光る肉を乗せて、ごそりと飯を掬い取る。あぐりと大口開けて迎え入れれば、口の中を濃い旨味とガツンとしたガーリックの豊潤が満たした。咀嚼し飲み込み、渦巻きの麩が揺れるレトルトの味噌汁で流し込む。
左手に持ったプラスチックの丼。右手の割り箸。机の上の、コンビニ飯の入っていたビニール袋。
スマホが鳴った。
「はい、野辺です。これは、どーもお久しぶりです」
「ああ、、、其れは残念です。後の事は直ぐに?」
「承知しました。直ぐに向かいます」
一息、_食事の残りを掻き込んだ。
ミントダブレットを噛みながら、緑茶を呷る。蓋をして、ゴミ箱に投げた。
※※※
魚を避けようとして人にぶつかった。
足早な影として動く人の群れは、何の反応も示さずに去って行く。
最近建った駅接続の商業ビル群エントランス。高く数階分を抜いて作られた現代芸術のモニュメントの様な空間は、幾らか外の様子が伺い知れる。
雨の気配の無い、一面の灰色の雲。
其の下、2・3階分の高さ迄、一様に淡い色の魚が泳ぐのが見えた。
_店々に並ぶ様々な商品が、川の流れに洗われる小石に見えた。
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