魚憑き

湯月@重陽

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二章 高山流水

神隠し _隔絶

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 咄嗟に腕で顔を隠した。
 おもてを視たなら、気が触れる。密度が圧となり、酩酊となって、ぐらり眩む意識を手放した。

 帯か布か、目を覆う物。絹か麻か、手足に絡む物。自由の効かぬ中で、おそらくは引き込まれた部屋の中。
 口の中で、ぬめったものが蠢いている。ズルリと引き出された舌の先を噛まれ、赤い糸を引く。

 喘ぎ。悶え。痴態を晒す。
 泣きながら鳴きながら、酩酊に享楽が乗って、狂い善がる昼夜を幾度越えたかも知れず。狂い切れぬ理性の一欠が(よくもまァ、生きているものだ。)と、変に冷静に脳裏でごちる。
 人の身に過ぎたる寵は、身の丈以上の獣にじゃれつかれる事。アチラは遊び、此方は死活。加減を誤られれば、此方は死ぬという自覚の恐怖。

 そして暗転。失神という名の、休憩時間。
 _口の中に、冷たさが溢れて目覚めた。(水…)。

 清い、水。生き物が棲めない程の。
 口移しに与えられる、震える舌が喉が胃の腑がひりつくのは、此の身に帯びた穢れのせいか。
 
 淡い水の世界を、そぞろ泳いで生きてきた。
 …それでも地上で、溺れるは初めて。


※※※


 黄金の光が空間を満たし、ざわめく蓮葉と噎せ返る華香と蜜の気配。発酵した酒の気配。小鼓が鳴って、開く華。影は無くとも生き物の気配に満ち満ちた、終わり無い永の盛りで満ちた世界。
 圧倒される生命の賛歌。
  _人の身には酷なほどの。

 又、蓮の華がポンッと開いた。

 水の面が、ゆらりと揺れた。
 …池の中は、深くて見えない。


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