魚憑き

湯月@重陽

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一章 淀む池に潜む魚

神の嫁

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 呼び出され、通された部屋は、初めて足を踏み入れる部屋。

 群がるモノが、はじめ何か分からなかった。

 "御家の名代連は妙に長生きだ。"
 ゴリゴリ、クチャクチャと音がする。

「ぁ、、、ぁ、、、、ぁ」

 空気が抜けるような弱々しい母音。血を喪って青白い、でも水気に満ちた肌。見開かれた両眼。
 腹から胸まで開きにされた女が仰臥するのに、八方から伸びる枯れ果てた腕が群がる。女の肉を縁から引き裂かんとする手。刃物でもって肉を削ぐ者、手指でもって無理矢理に引き千切る者。
 ブチリと、老人の枯れた指が女の乳首をもぎ取った。

 ヒーッッ

 高く笛のような其れが悲鳴だと、気づいた瞬間、嘔吐していた。
 人魚の肉は不老不死の妙薬。
 人魚になった神嫁が与える恩寵。
 _彼は、""

  __あそこに居るのは、不幸を避け損なった"彼自身"だった。__


※※


 柘榴のように弾けている。
 嘗て高慢に笑った顔は、最早顔でなく、只の真っ赤な肉だった。
 乱れの無い衣裳を着込んだ、傷の無い身体に赤い丸。
 他は無事なだけ、余計に陰惨だった。

 もう、胃には吐き戻すものも無い。
 首元を緩め袖を折って、ぐんにゃりと重い少女の身体を抱え上げた。
 言い付けられたのは、死体の処理。
 兎に角、移動をと、抱え上げ、外に、

 敷居を越え、










 匂い立つ華の群れ。
 ざわり揺れる葉擦れ。夜に開く生気に満ちた華。濃厚な花の香、水の薫り。ざわと振れる。
 "ケ"が"ハレ"に横滑りにずれる。

 其処に、

 _此の身に余る。"何か"の気配。



「…………は?」

 ぐわんっと雪崩れる圧に、ぐらりと揺れる頭。足元が泥地になったように覚束無くなる。
 少女を取り落としそうになって、慌てた身体が、

 __後ろに引かれた。

 腕。部屋へと振り返り、  目を見開き

 (……黒い、)
   衣裳。伸ばされ掴んでいる手。
          
             ……魚の、翻る尾鰭。


 翔ぶように部屋へと引き込まれ、少女の骸は外へと出され、、、 障子は閉められた。

 _いとも容易く。



※※※



 数日後。神嫁の祝言と、御家の名代らがで集団死したとの周知があった。


fin.
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