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6月の暗殺
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なんでこんな事に……
「悪いが、お前には死んでもらう。この「暗殺者A」の名にかけて」
伝説の殺し屋、暗殺者A……
噂だけは知っているが、まさか自分なんかを殺しにくるなんて……
Aは手に持ったナイフを振り上げる。
恐怖で固まった俺は声も出せず、迫りくるナイフを見上げている。
(死んだ……)
と思ったのだが、
ガキィイイイイン!!
俺の前に現れた人影がAのナイフを同じようなナイフで止めていた。
「何者だ…!?」
Aは驚いたように数メートル後ずさる。
「………………」
よく見ると、その人影は女性だった。髪は肩に届くかくらいのショートカット、横から見える顔は作り物と思うくらいに整った顔立ちをしている。
「名乗らぬか……私を邪魔しないほうがいいぞ。私の名は暗殺者A。貴様も見たところ同業のようだが、この名が意味するところはわかるだろ?大人しくその男をこちらに渡せ」
「…………………」
無茶だ。Aの話ではこの女も同じ暗殺者なのだという。しかし、こんな可愛い……いや、女性が伝説の殺し屋に敵うはずがない。
「君!逃げるんだ!君まで死ぬことはない!」
俺の言葉に振り向く女性。その顔は目を少し見開き驚いている。
その瞬間……
「死ぬがいい!」
彼女が振り向いた一瞬の隙に、Aが彼女の眼の前に立つ!
そのままナイフを振り下ろす!
数日前
「偽物………?」
「ああ、最近何人か死亡者が出てるんだが、そのうちの半分は誰かに殺されてる。そして、そいつはどうも暗殺者Aの名を語っているらしいぜ」
私は久々のオフで町をブラブラしていたのだが、知り合いの情報屋「サカグチ=ケンヤ」に呼び止められて、話を聞いていた。
話している店も、見た目はどこにでもあるタバコ屋だが、その実態は4つの国を跨ぐ情報を扱うスペシャリスト。その情報の集積する拠点がここである。
「あんたほどの大物を名乗るんだから、それなりに腕は立つんだろうが……俺の情報だと、愉快犯の可能性が高いな。素性も調べたが、どの暗殺者リストにも該当しなかったんだよ」
ペラっと、調査報告書の紙を見せてくる。
「……………へぇ、元陸軍の大佐か」
「ああ、奴の名はカール=マッカーJr。元陸軍の大佐で、人殺しの任務や猛獣を狩るのを率先してやってたっていう、イカレた奴なんだよ。あまりの残忍さと任務外の者にまで犠牲者を出すもんだから上から懲戒免職処分喰らって、今では一般人なんだが……」
そこで言葉を切るサカグチ。
「なるほど…自身の欲求が満たせないからってところ?」
「そうだ、奴は殺人に飢えている。自分の欲求を満たす為に、罪なき人を夜な夜な殺して回ってるってところさ」
ふむ……正直私には関係のない話ではある。私の名を語って殺しをするなど、そもそも殺してくれと言っているようなものだし、遅かれ早かれ本当のプロに始末されるだろう。
「あんたの気持ちは分かるぜ?だがな、こいつの殺す対象が段々と過激になってるのが気になってな。下手をすると、この国の重要人物まで手を出しそうな勢いなんだ。奴が次に殺すかもしれない対象のリストを作ってみたが……」
そうしてサカグチは新たな資料を渡す。
これは………
「特にこいつだな。アリタ=コウイチ。最近話題になった注目の若手議員だ。俺が思うに今後、この国のトップまで成り上がる可能性を秘めている男だ。すでに、裏の仕事連中もこいつに注目してる。だが、本人はいたってクリーン。黒い噂など一切ない。そういう意味でも好感が持てるな」
「この人をターゲットにする理由は?」
「おそらく、奴もこの事に気づいているし、今最も勢いのあるアリタを殺すことで、自分の知名度を跳ね上げようと考えてるのさ。まあ、愉快犯にあるあるではあるが……」
私は考える。この国のトップである大統領は最近上手く進まない政策で国民から不満を買っていたはずだ。
このアリタ=コウイチはそんな大統領に成り変わる勢いでメキメキと頭角を現していることも同業者や情報屋から私も聞いていた。
現大統領の政策によって貧困層がさらに生活が困難になり餓死者が出ていることも………
「こんな事をアンタに頼むのは気が引けるんだがなAよ。この依頼頼まれちゃくれないか?依頼内容はアリタ=コウイチの護衛でいい。金も弾む。この殺人鬼をどうするかもアンタの自由でいい」
「……どうしてそこまで?」
私の疑問にサカグチは少し苦い顔をして
「俺はよ、隠しちゃいるんだがこの国の出身でね。その未来を担いそうな若者を殺すようなコイツが許せないのさ」
私は驚いた。情報屋はその身の危険性から自分の素性は極力隠すものなのだ。ましてや、サカグチ=ケンヤは情報屋の中でもトップクラスの男なのに……
「わかったわ……貴方の情報は何よりも価値があるし、それを教えてくれた見返りとして依頼は引き受けましょう」
お代は結構よ。
と付け加えておく。それぐらい彼の情報には価値があるのだ。
「ありがとよA。それで…どうするんだこの男?」
「まあ、会ってみないとわからないし、アリタ=コウイチを殺しにくるかもわからないんでしょ?……まあ、貴方の情報なら間違いはないのでしょうけど……」
そう前置きして、私は告げる。
「でも、私の名を語った代償は頂くわ。私と対峙してわかるような男なら見逃してもいいけど、向かってくるなら……」
そんな愚か者に生きる価値はない。
そう断言して、その場を去った。
「悪いが、お前には死んでもらう。この「暗殺者A」の名にかけて」
伝説の殺し屋、暗殺者A……
噂だけは知っているが、まさか自分なんかを殺しにくるなんて……
Aは手に持ったナイフを振り上げる。
恐怖で固まった俺は声も出せず、迫りくるナイフを見上げている。
(死んだ……)
と思ったのだが、
ガキィイイイイン!!
俺の前に現れた人影がAのナイフを同じようなナイフで止めていた。
「何者だ…!?」
Aは驚いたように数メートル後ずさる。
「………………」
よく見ると、その人影は女性だった。髪は肩に届くかくらいのショートカット、横から見える顔は作り物と思うくらいに整った顔立ちをしている。
「名乗らぬか……私を邪魔しないほうがいいぞ。私の名は暗殺者A。貴様も見たところ同業のようだが、この名が意味するところはわかるだろ?大人しくその男をこちらに渡せ」
「…………………」
無茶だ。Aの話ではこの女も同じ暗殺者なのだという。しかし、こんな可愛い……いや、女性が伝説の殺し屋に敵うはずがない。
「君!逃げるんだ!君まで死ぬことはない!」
俺の言葉に振り向く女性。その顔は目を少し見開き驚いている。
その瞬間……
「死ぬがいい!」
彼女が振り向いた一瞬の隙に、Aが彼女の眼の前に立つ!
そのままナイフを振り下ろす!
数日前
「偽物………?」
「ああ、最近何人か死亡者が出てるんだが、そのうちの半分は誰かに殺されてる。そして、そいつはどうも暗殺者Aの名を語っているらしいぜ」
私は久々のオフで町をブラブラしていたのだが、知り合いの情報屋「サカグチ=ケンヤ」に呼び止められて、話を聞いていた。
話している店も、見た目はどこにでもあるタバコ屋だが、その実態は4つの国を跨ぐ情報を扱うスペシャリスト。その情報の集積する拠点がここである。
「あんたほどの大物を名乗るんだから、それなりに腕は立つんだろうが……俺の情報だと、愉快犯の可能性が高いな。素性も調べたが、どの暗殺者リストにも該当しなかったんだよ」
ペラっと、調査報告書の紙を見せてくる。
「……………へぇ、元陸軍の大佐か」
「ああ、奴の名はカール=マッカーJr。元陸軍の大佐で、人殺しの任務や猛獣を狩るのを率先してやってたっていう、イカレた奴なんだよ。あまりの残忍さと任務外の者にまで犠牲者を出すもんだから上から懲戒免職処分喰らって、今では一般人なんだが……」
そこで言葉を切るサカグチ。
「なるほど…自身の欲求が満たせないからってところ?」
「そうだ、奴は殺人に飢えている。自分の欲求を満たす為に、罪なき人を夜な夜な殺して回ってるってところさ」
ふむ……正直私には関係のない話ではある。私の名を語って殺しをするなど、そもそも殺してくれと言っているようなものだし、遅かれ早かれ本当のプロに始末されるだろう。
「あんたの気持ちは分かるぜ?だがな、こいつの殺す対象が段々と過激になってるのが気になってな。下手をすると、この国の重要人物まで手を出しそうな勢いなんだ。奴が次に殺すかもしれない対象のリストを作ってみたが……」
そうしてサカグチは新たな資料を渡す。
これは………
「特にこいつだな。アリタ=コウイチ。最近話題になった注目の若手議員だ。俺が思うに今後、この国のトップまで成り上がる可能性を秘めている男だ。すでに、裏の仕事連中もこいつに注目してる。だが、本人はいたってクリーン。黒い噂など一切ない。そういう意味でも好感が持てるな」
「この人をターゲットにする理由は?」
「おそらく、奴もこの事に気づいているし、今最も勢いのあるアリタを殺すことで、自分の知名度を跳ね上げようと考えてるのさ。まあ、愉快犯にあるあるではあるが……」
私は考える。この国のトップである大統領は最近上手く進まない政策で国民から不満を買っていたはずだ。
このアリタ=コウイチはそんな大統領に成り変わる勢いでメキメキと頭角を現していることも同業者や情報屋から私も聞いていた。
現大統領の政策によって貧困層がさらに生活が困難になり餓死者が出ていることも………
「こんな事をアンタに頼むのは気が引けるんだがなAよ。この依頼頼まれちゃくれないか?依頼内容はアリタ=コウイチの護衛でいい。金も弾む。この殺人鬼をどうするかもアンタの自由でいい」
「……どうしてそこまで?」
私の疑問にサカグチは少し苦い顔をして
「俺はよ、隠しちゃいるんだがこの国の出身でね。その未来を担いそうな若者を殺すようなコイツが許せないのさ」
私は驚いた。情報屋はその身の危険性から自分の素性は極力隠すものなのだ。ましてや、サカグチ=ケンヤは情報屋の中でもトップクラスの男なのに……
「わかったわ……貴方の情報は何よりも価値があるし、それを教えてくれた見返りとして依頼は引き受けましょう」
お代は結構よ。
と付け加えておく。それぐらい彼の情報には価値があるのだ。
「ありがとよA。それで…どうするんだこの男?」
「まあ、会ってみないとわからないし、アリタ=コウイチを殺しにくるかもわからないんでしょ?……まあ、貴方の情報なら間違いはないのでしょうけど……」
そう前置きして、私は告げる。
「でも、私の名を語った代償は頂くわ。私と対峙してわかるような男なら見逃してもいいけど、向かってくるなら……」
そんな愚か者に生きる価値はない。
そう断言して、その場を去った。
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