『IF』異世界からの侵略者

平川班長

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2章 市街戦

8話「正体不明(アンノウン)」VS「無垢なる戦姫」

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「正体不明(アンノウン)?」

どういうことだろう。
ただ分かるのはあれは「人間ではない」
ただ黒い靄が人型に形を作っているだけだ。

『……魔獣?ナンバーズは魔獣を雇わないといけないほど人手不足なのかな?』

葵さんが結界の中から声を出す。
確かに、人間ではない。葵さんの言うように「魔獣」なのだろうか?

「いえ、彼は正式に我々の仲間に加わる条件……元ナンバーズ10を葬っています。まあ、薦めたのは私ですが………ですがこれだけは言っておきましょう、彼は……おそらく、私以外のナンバーズよりは強いでしょうね」

「なっ!?」

一度戦ったことのあるバージェスよりも強いと言うのか?
でも……

『だから何?ソフィーより弱くて私に勝てるとでも?』

そうだ。葵さんは強い。
守護者の最高戦力でもあるし、何より彼女には「拒絶」の魔術がある。どんなに得たいの知れない相手でも触れることさえ…………
得たいの知れない……?

『傑、待っててすぐ終わらせるから』

葵さんは相手に構わず突撃する。
「拒絶」の力を使った高速移動!

「□□□□□□ーー!!」

化物が雄叫びを挙げながら、黒い霧を触手のようにして何本も葵さん向けて発射する!

葵さんは意に介さない。
当たらないと確信しているからだ!


「葵さん!!避けるんだ!!」

『!?』

葵さんは俺の言葉を信じてくれたのか、急激にコースを無理矢理変える!!

しかし、あまりにも高速移動だったので完璧には躱せず……

ブシュ!!

腕に「触手が当たり出血する」!

『……ッ!!!』

まさかのダメージに困惑しながらも、続けざまに放たれる触手の連続攻撃を、葵さんは自身の直感と戦闘技術で躱していく!

葵さんに攻撃が当たった!?
やはりあいつは………

「どうやら当たりのようですね。アナタの魔術についてはこちらも調べていました。全ての攻撃を弾く万能の魔術……そんなものは存在しない。おそらく何らかの条件があると私達は考えていました」

確かに葵さんは自分で言っていた

『私の『拒絶』はね。不完全な万能なんだよ』


「アナタが過去に傷を負ったのは2回。カミシロ・ジュンとのラスカ山での決戦。もう1つは元ナンバーズ2と「大戦」での戦い。カミシロ・ジュンに関しては彼の力とも関係あるので断定は出来ませんでしたが、大戦での2との戦いは決定的、おそらくアナタの魔術は「未経験、もしくは何らかの条件のみは防げない」のではないかと推測したのです」

くそ!完璧ではないかもしれないが、だいたい合ってる!

だから、正体不明の攻撃が当たったんだ。
奴の使う攻撃は「葵さんが経験したことのない」ものだから………

「さて、魔女はあちらに任せて……おや?女は逃げましたか……」

そう、今の会話の間に

『ミユさん、今のうちに大樹さん達のところへ』

『でも、傑……貴方は』

『俺は大丈夫です。それよりも、カナさんが治療とか出来るんですよね?大樹さん達の所のほうが安全ですし、向こうのナンバーズを倒したら仁さんの救出に向かってください』

コク
と頷き、ミユさんは離脱していった。


「アナタ1人で私の相手をするのですか?」

「……………」

信じるんだ!葵さんを!
彼女ならきっとあの化物も倒してくれる!
俺はそれまで耐えればいい。
この人はナンバーズの隊長。俺では遠く及ばないだろう。
ただし、今までの戦闘スタイルを視る感じ、この人は剣以外の攻撃はない。

フッ
とソフィーの姿が消える。

(……右!!)

ガキィイイン!!
反応して受ける。

半歩距離を取ったソフィーは今度は眼にも止まらぬ速さの連続突き!!

だが、これを俺は悉く躱す!

「………」

ソフィーもこれには何かタネがあると踏んでいるようで、あらゆるバリエーションで攻め立ててくるが……

(視える!!)

全て捌ききる!

距離を取るソフィー。

(能力か……?いや、単純に眼がいいのか…)

「アナタも躱すのが上手いですね。攻撃はまだまだ素人の域を超えませんが、これだけの私の攻撃を躱すのは称賛に値します……もう少し本気を出しましょうか………」

ゴッ!! とさらに闘気が上がる。

しかし、その時だった。


ピンポンパンポーン


『ただ今、遮絶の基礎が破壊されました。繰り返します、遮絶の基礎が破壊されました。この遮絶はあと、3時間で自動的に消滅します。ナンバーズの皆様は時間内に帰還してください』


(!!遮絶の基礎が…!?たしか、仁さんの話では遮絶の基礎は外側にあるって)


すると、スッと無線機のような物を取り出すソフィー。

「……どういうことですか?ネロ。基礎の場所には、かなり強力なアナタの分身体がいたはずですが……」

『いやーー、面目御座いません隊長。何せ私を倒しにきたのが「零の剣聖」…とても私の分身では勝てませんでした』 

「…!!やはり生きているのですね!!」


何だ?急にソフィーに激情のオーラが……
それよりも「零の剣聖」?
ジュンさんのことだろうか?

あと、もう1つわかったことがある。
こいつらは「遮絶の時間内でしかこちらの世界にいられないんだ」!

ならば、あと3時間……粘れるか。

「となると、余計にアナタ達を早く排除して彼に出てきてもらわねば……」

さらに闘気が上がる。
葵さん…!葵さんが来るまで耐えるんだ! 



結界内

「………ッ」

先程の攻撃を喰らったところ……右腕の感覚が悪くなってくる。

(毒……?……解毒の魔術を……)

ダメだ。作用していない。「拒絶」も反応しないということは、この毒も未知の物。

(進行スピードを考えると、あと30分も動けば、右腕は使えなくなる)

そんなことを考えてる間に、アンノウンは動く。
また触手を伸ばしたかと思うと、
さっき私が殺したゲオルの遺体を捕まえ

(…食べてる…!)

自身の身体の中に取り込んでしまった。

「□□□□□□ーーー!!!」

!!さっきより力が増してる?

フッ!
とその巨体が消えたかと思うといつの間にか背後に

(速い……!!)

ゲオルの力を取り込んだのか?敏捷性が飛躍的に上がっている!

「□□□□ーーー!!!」

私は距離を取りながら、

「星よ(アステル)」

私の持つ最速の魔弾を打ち込む!

五つの指から放たれた5色の星が相手を貫くが……

(手応えがない……当たっていない?)

まるで実体が無いかのようにすり抜けてしまった。

ビュッ!!
と触手が5本伸びてくる。

「……!!」

(やっぱりさっきより速くなってる)

躱していくがこれ以上続くと厄介だ

「空よ(シエル)」

転移の魔術で距離を稼ぐ………移動しない!?


(魔術が奴を認識していない?……なら)

「水よ(オー)」

水の牢獄に閉じ込め………ダメだ発動しない。
さっき攻撃を喰らったから、触れていると思っていたけど、「触れたことになっていない」

その間にも触手の攻撃は激しさを増す。
5本だったのも今では10本まで増えている。


(ダメだこのままじゃ……どんどん右腕の感覚も悪くなってる。いずれ捕まってしまう)

何かないのか?相手の正体を見破る方法は。

しょうがない。結構魔力を消耗するけど

「炎よ「フラム」」

相手の頭上に魔方陣が敷かれそこから

ゴォオオオオ!!!!

と炎の柱が降り注ぐ!


しかし、正体不明は意に介さず歩いて炎の柱から出てくる。

「氷よ(グラス)」


今度は左右の魔方陣から相手を一瞬で凍らせる氷の魔術!

たが…………


(効いていない………)

凍らずにそのまま歩いてくる正体不明。


「○○○○○○○○ー!」

まるで抗う私を嘲笑うかのような声を出す。


(いや、当たっていないのか……?)

いくら耐性を持っているにしても何らかの反応はあってもいい。だが、奴は全く意に介さず、それどころか攻撃を喰らったふうでもない。

『無駄ですよー。この方、アンノウンは物理攻撃も魔術での攻撃も全て当たりません。「拒絶」なき今、貴女では倒すのは難しいのでは?』

結界を張っているネロの分身体が言う。

「なるほど…ソフィーじゃないと勝てないってのも納得ね」

逆に言えばソフィーなら勝てるということ…
何かタネがあるのは間違いない。

考えてるうちに、アンノウンが動く!

今度は黒い球体を6つ空中に放り投げたかと思うと、その球体から無数の黒い棘が伸びてくる!

「……っと!!」

躱せないわけではないが試してみるか。

「星よ(アステル)」

黒い棘の1つに魔弾を撃ち込むが……

(…!!…やはりすり抜ける!)

魔弾は何にも触れずに虚空に消えた。

(!?……奴はどこ?)

棘を避けている間に本体が消えていることに気づく。

(……ッ!……後ろ!!)

背後に影!棘が奴にも刺さっているが意に介さずこちらに近づいてくる!

「○△□ーー」

ニヤリとその影の、顔の部分が笑ったように感じた瞬間

バァーーン!!

と奴の体が破裂した。

「………ッ!」

近距離からの爆発で飛び散った肉片が私の身体のあちこちを削る!!

(くそ……!!負傷した部分がさっきの右腕同様感覚が悪くなってる!)

本体は?そう考えた時に元の位置の地面からニョキっと本体が生えてくる。

「○○○ー」

笑っている?いや、嘲笑っているのか?

『んーー!やはりこの方は恐ろしいですな。都市1つを丸々破壊した時もそうでしたが、あの時も数々のうちのナンバーズの下っ端が返り討ちに遭いましてね?隊長がいくまでは手も足も出なかったのですよ。文字通りこちらからの攻撃は効かず、あちらの攻撃だけ一方的に当たるのですから』

たしかにコイツは脅威だ。攻撃は当たらない。しかし、コイツの攻撃は当たるから避けるしか方法がない。当たった箇所には原因不明の毒のような効果。
まさに正体不明。
このままでは私はなす術なくなぶり殺されるだろう。

いつぶりだろう?
自分の命に相手の手がかかるのは……

「ふぅ……」

一つ息を吐く。そしてネロの分身体に

「ねぇ?1つ聞いていいかな?」

『何ですかな?遺言でも考えましたか?』

嫌味たっぷりに聞いてくるネロに、とびきりの「笑みを浮かべて」

「この結界……丈夫に出来てる?」

『…はい?』

「久々に楽しいから、本気を出すけど……結界が壊れたら台無しでしょ?せっかく私を殺せるかもしれない奴との一騎討ちなんだから」


    
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