約束の続き

夜空のかけら

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第9章 理の使命2

84 恋人繋ぎ

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私自身は分からないまま、エリーさんに煙を巻かれて、更なる追及をしたかったけれど、孤児院での仕事の時間が迫ってきたので、仕方なく、孤児院に戻ってきた。内容が分からない上に、消化不良で戻された影響か、孤児に強く当たってしまい、シスターに叱られて謹慎処分。約2週間の外出が禁止となってしまった。
それでも、毎日の仕事や同僚たちとの話、シスターや孤児たちとする話は面白く、興味深い。今まで知らなかったことをたくさん知る機会が得られたことに関して”だけ”は、エリーさんに感謝している。
後は、お姉ちゃんとあいつの事。時期が来れば、目覚めて一緒にいることができるという話。1か月と聞いていたけれど、まだまだ遠いと思っていた。
しかし、謹慎処分から1週間が経った日。エリーさんが、孤児院を訪れていて私を呼びに来たという。シスターは、その話を知っていたのだろう。少し硬い顔で、謹慎処分を終了し、エリーさんの指示に従って行動することを約束させられてから、街の中心にある”セントラルタワー”に向かい始めた。歩いている時に、お姉ちゃんとあいつの事を聞きたかったけれど、エリーさんの硬い表情と”今は何も聞かないで”という雰囲気に抑えられるように、何も聞けなかった。
セントラルタワーにまで、やってきた。ここには、その塔を守る壁などは存在せず、誰でも塔内に入ることができる。また、タワーの最上部には、街全体を見渡すことのできる展望台が設置してあり、塔中心からの昇降機という上下に移動するもので手軽に行くことができる。
 エリーさんは、何故かその昇降機を貸し切り状態にするべく、塔内への立ち入りを禁止する処理を始めていた。数分かかるという話だったので、昇降機の順番待ちのためのベンチに腰を落としていたら、いつの間にかに、横にあの人が座っていた。声を掛けようと思ったけれど、こちらも少し硬い表情。
塔内には、私たち3人以外の姿はいない状態になったようだった。昇降機内に入り、板のような物が昇降機内壁から6枚。手の高さのところに出てきた。エリーさんが、その板。パネルというそうだが、それに手の平を乗せるように指示された。
パネルに手を乗せると、昇降機は動き始めた。ただし、上下に動く訳ではなく、その場所のまま別の場所に運ばれるという感じ。
気が付けば、どこかの部屋の中。そこには、お姉ちゃんとあいつが寝ていた。なぜか寄り添うような形で。言いようのない怒りっぽいのが出てきたが、そこで言われた言葉で一気に冷えた。
言ったのは、あの人…
「間に合わなかった。遠くない時に、消える。」
消える?何が?少しパニックが入り始めて、少し混乱して
「なにがですか?何が消えるの?」
あの人だけではなく、エリーさんもシスターも硬い表情だったのは、これが伝わっていたからだったのかもしれない。
あの人は、
「見てもらった方が早い。」
そう言って、2人の上に覆っていた布を取り払った。
そこには、2人の姿の一部、寄り添っていた場所の一部がくっついているのが分かった。物理的にくっついているようには見えなかったけれど、でも、離れるのは危険だと感じるくらいの存在感。以前にも増して、個々の存在感が薄くなっていた。
絶句すると同時に、どうしてこんなことになったのかが知りたかった。今度は、エリーさんが答えてくれた。
「この街であなた方を保護する前にいた世界には、あなた方と同じように創世神がいました。この方が、当然の権利として、無断侵入したあなた方を攻撃していました。ただ、この方(あの人)は高位の神に準ずるレベル。あなた(私)は、能力に発現していないため、一般人扱い。創世神は、高位の神に認められ、その能力を行使することが全てのことにも優先して行う傾向があります。この時、認められようと考えるあまり、目的があって同行していることに気が付かずに、この2人を攻撃したのです。」
そう言って、お姉ちゃんとあいつを見た。そして、私の方を見て、
「意識をしっかり持って聞きなさい。あなたのお姉ちゃんとこちらの人は、1年も経たないうちに、消滅する可能性が高い。いきなり消えることはないにしても、普通の方法では、存在できない。どこかで、なんらかの決着を付けるしかないの。あなたとお姉さん、こちらの3人で、どうするのかを模索して、結論を3か月以内に出しなさい。この方に関しては、この街の維持とあなたたち3人の補佐に回ってもらう。3か月間なら確実に存在を補強し、消えることはない…と確約したから。もちろん、これは私だけじゃない。王族…いいえ、家族みんなの総意でもある。理由は、まだ明かせないけれど、あなた方がこのままだと困るの。だから、頑張って。」
そう言ったあと、少しずつ意識が回復していく2人。寄り添い、くっついている場所は物理的には1か所を除き、無くなっていった。
お姉ちゃんとあいつが目を覚ました。
あいつが
「悪い。お姉ちゃん、取っちゃったな。」
と、あいつとお姉ちゃんが恋人繋ぎしている手を挙げて見せつけている。
私は、少し泣き笑いをしながら
「バカ。」
って言った。
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