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第10章 大事な記憶と魔法のお話
96 護符と神力
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城壁内には、平民街。
その城壁の外側には、スラム街が広がっている。
当たり前だが、家を城壁に接触させてはいけないことになっている。それは、スラム街でも同じなのだが、平民街と違って巡回する訳にも行かず、平民街側の見回りで要件を満たすだろうと考えてしまったことで、自己満足してしまった巡視官が多かった。しかも、城壁の状態を確認するための巡視官は、城壁の大きさから目視だけでもうんざりするらしく、自らの仕事を下請けに出す始末。お金を与えて結果を持ち寄らせ、それを自らの仕事として上司へ報告、こういうものがまかり通っていた。
平民街でも、城壁と家屋は接していてはいけないことになっていた。しかし、その城壁の石材に注目したあるお店の人が、その壁面を利用する形でかまどを作り、パンを焼き始めた。
あるお店…パン屋では、大型のかまどを作り、毎日大量のパンを焼く必要がある。かまど も大きいければかまども石材も多くなるが、その1面を城壁で…なら、どうだろうか?もしかして、いけるかも?と思っただれかがやってしまいました。
ただ、当初は思ったよりも効率が悪かったので、利用はされなかった。
しかし、ここ最近、考えていた通りの効果が得られるようになってきたことから、城壁密着でパン焼きを始めた。もちろん、巡視官など来ないし、下請けが来たら、お金を渡して便宜を図ってもらうだけのことなのだが。
かまどの側面代わりの城壁を加熱すると、城壁の反対側、スラム街に接しているその場所も高温になる。高温化は、炎の護符によって行われていて、その護符には、設定温度・時間・範囲などが書き込まれていて、必要となる神力をセットすれば、書き込まれた通りに作動する。護符は、使用回数&時間に限度があるが、それまでは神力を追加していけば何度でも使えるのが利点だ。
これらの護符や神力は、そこそこの大きさの街なら、どこでも扱っている、いわゆる定番商品。主要都市にある神殿が製法などを独占していて、神殿が指定する商店でのみ扱えるものだ。
定番商品だけあって、品ぞろえも様々だが、護符には大きく分けて4種類、ある。
それが、火・風・木・水である。
売っているもので一番多いのが、火。着火などで使う護符は、その消費する神力も少ないため、わざと耐久性が低く作られていると言われている。神力自体もセットできる回数が少ないものが多い。回数が1とか2などは、ばら売りもあるため、スラム街でも重宝しているらしい。
次に売れているのは、風。ただし、店先にあってもすぐに売れてしまう。購入しているのは、商人が多いらしい。荷馬車の中で荷物を少し浮かべるために使用するとか。
木は、固定客にしか売れないという神殿からの通知があるという。入荷と同時に購入打診をする。順繰りに意向確認し、購入者がいない場合は神殿に戻すという。
水は、店先で売るには高価すぎるため、神殿から売却先が指定される。個人に売るというより街などの水が大量に必要なところに売る。
神力もその力の配分から何種類かある。瞬発・一般・遅延・持続・強化・万能の6種類。
値段もこの順番で高くなる。瞬発は着火専用。一般はセット数によっては、万能以外のどれにでも利用できる。この中で万能は、神殿が指定する顧客のみの販売。
神殿には、大神官、神官、聖人、聖女とこれらの世話を行う者…すなわち神従者がいる。護符や神力の製造方法を知っているのは、神官たちだけなので、護符の恩恵にあずかっている者は、神官たちの意向を無視できない。
神従者は、神官に逆らうことはできない。
また、神殿内だけで話すことができるようになっていて、神殿の外では声を出すことができないし、街の人も神従者に話しかけるのは、大問題だとされていた。
人々の暮らしは、神殿が護符などの製法を独占していることで、不公平不公正な売買がない。問題が起きない販売方法で、長年受け入れられてきた。
***
箱庭 結界結晶前
「本体…よし。」
「バックアップ…よし。」
最近、私の日課の中に組み込まれたのが、この作業。
この箱庭世界から旅に出てしまった…いやいや。旅に出させた、あの子の本体とそのバックアップ体の点検だ。
旅に出るとは言っても、今の身体をこの箱庭から外に出すと、周囲に与える影響がどれくらいになるか分からない。でも、旅に出させないと先に進めない。
考えた末に出した答えは、本体の完全複写。本体と全く同じものの製造。コピーとかクローンとか、そんな感じ。本体とバックアップ体から抽出した情報で新しい核を作り、これを魂の中核に沿える。魂と認識されないように、系統樹に載らない様に、細工を少し。魂と思われるところに、疑似記憶を入れて、カモフラージュ。見破られることはないと思うけれど、念のため、私が箱庭と障壁を経由して、相手を見れるようにしておいた。
本人が気が付かないように。
そして、点検がてらに見ていたことに憤りを感じたのだった。
その城壁の外側には、スラム街が広がっている。
当たり前だが、家を城壁に接触させてはいけないことになっている。それは、スラム街でも同じなのだが、平民街と違って巡回する訳にも行かず、平民街側の見回りで要件を満たすだろうと考えてしまったことで、自己満足してしまった巡視官が多かった。しかも、城壁の状態を確認するための巡視官は、城壁の大きさから目視だけでもうんざりするらしく、自らの仕事を下請けに出す始末。お金を与えて結果を持ち寄らせ、それを自らの仕事として上司へ報告、こういうものがまかり通っていた。
平民街でも、城壁と家屋は接していてはいけないことになっていた。しかし、その城壁の石材に注目したあるお店の人が、その壁面を利用する形でかまどを作り、パンを焼き始めた。
あるお店…パン屋では、大型のかまどを作り、毎日大量のパンを焼く必要がある。かまど も大きいければかまども石材も多くなるが、その1面を城壁で…なら、どうだろうか?もしかして、いけるかも?と思っただれかがやってしまいました。
ただ、当初は思ったよりも効率が悪かったので、利用はされなかった。
しかし、ここ最近、考えていた通りの効果が得られるようになってきたことから、城壁密着でパン焼きを始めた。もちろん、巡視官など来ないし、下請けが来たら、お金を渡して便宜を図ってもらうだけのことなのだが。
かまどの側面代わりの城壁を加熱すると、城壁の反対側、スラム街に接しているその場所も高温になる。高温化は、炎の護符によって行われていて、その護符には、設定温度・時間・範囲などが書き込まれていて、必要となる神力をセットすれば、書き込まれた通りに作動する。護符は、使用回数&時間に限度があるが、それまでは神力を追加していけば何度でも使えるのが利点だ。
これらの護符や神力は、そこそこの大きさの街なら、どこでも扱っている、いわゆる定番商品。主要都市にある神殿が製法などを独占していて、神殿が指定する商店でのみ扱えるものだ。
定番商品だけあって、品ぞろえも様々だが、護符には大きく分けて4種類、ある。
それが、火・風・木・水である。
売っているもので一番多いのが、火。着火などで使う護符は、その消費する神力も少ないため、わざと耐久性が低く作られていると言われている。神力自体もセットできる回数が少ないものが多い。回数が1とか2などは、ばら売りもあるため、スラム街でも重宝しているらしい。
次に売れているのは、風。ただし、店先にあってもすぐに売れてしまう。購入しているのは、商人が多いらしい。荷馬車の中で荷物を少し浮かべるために使用するとか。
木は、固定客にしか売れないという神殿からの通知があるという。入荷と同時に購入打診をする。順繰りに意向確認し、購入者がいない場合は神殿に戻すという。
水は、店先で売るには高価すぎるため、神殿から売却先が指定される。個人に売るというより街などの水が大量に必要なところに売る。
神力もその力の配分から何種類かある。瞬発・一般・遅延・持続・強化・万能の6種類。
値段もこの順番で高くなる。瞬発は着火専用。一般はセット数によっては、万能以外のどれにでも利用できる。この中で万能は、神殿が指定する顧客のみの販売。
神殿には、大神官、神官、聖人、聖女とこれらの世話を行う者…すなわち神従者がいる。護符や神力の製造方法を知っているのは、神官たちだけなので、護符の恩恵にあずかっている者は、神官たちの意向を無視できない。
神従者は、神官に逆らうことはできない。
また、神殿内だけで話すことができるようになっていて、神殿の外では声を出すことができないし、街の人も神従者に話しかけるのは、大問題だとされていた。
人々の暮らしは、神殿が護符などの製法を独占していることで、不公平不公正な売買がない。問題が起きない販売方法で、長年受け入れられてきた。
***
箱庭 結界結晶前
「本体…よし。」
「バックアップ…よし。」
最近、私の日課の中に組み込まれたのが、この作業。
この箱庭世界から旅に出てしまった…いやいや。旅に出させた、あの子の本体とそのバックアップ体の点検だ。
旅に出るとは言っても、今の身体をこの箱庭から外に出すと、周囲に与える影響がどれくらいになるか分からない。でも、旅に出させないと先に進めない。
考えた末に出した答えは、本体の完全複写。本体と全く同じものの製造。コピーとかクローンとか、そんな感じ。本体とバックアップ体から抽出した情報で新しい核を作り、これを魂の中核に沿える。魂と認識されないように、系統樹に載らない様に、細工を少し。魂と思われるところに、疑似記憶を入れて、カモフラージュ。見破られることはないと思うけれど、念のため、私が箱庭と障壁を経由して、相手を見れるようにしておいた。
本人が気が付かないように。
そして、点検がてらに見ていたことに憤りを感じたのだった。
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