約束の続き

夜空のかけら

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第10章 大事な記憶と魔法のお話

95 記憶消滅

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ふと気が付いた。
 周囲は、真っ白、何もないところに私は浮かんでいるようだった。
 何があったのか、全く分からない。
 どうしてここにいるのかも分からない。
 そもそも、私がなんなのかも分からない。
 ないない尽くしなのに、それすらも分からない。
 どれだけの時間が過ぎたのかも分からない。
 なにかをする訳もなく、なにかをしなければならないのも分からず、ただその場所に何も考えずに浮かんでいる。

 真っ白だった場所は、気が付いたら、真っ暗な場所に変わっていた。
 周囲は、真っ白だった場所と違い、何も見えない。
 自分がどうなっているのかは、真っ白だった時と同じだけど、それ以外は、真っ白だった時と同じ。
 何も分からなかった。

 それから、何回か色が切り替わっていった。
 なぜか、色に関しては分かる。
 何か意味があるのかもしれないけれど、よく分からない。

 ふと、私の周りから何か大きい存在を感じた。

 その存在を知覚すると同時に、その存在からの思念が入ってきた。

 お前の記憶と力を封印した。
 これから、お前は俺の世界で生活する。
 せいぜい、笑わせてくれ。

 そんな言葉があったけれど、その時の私は何も分からなかった、侮蔑の言葉だったと知ったのは、一度死んでからだった。

 その侮蔑の言葉のあと、すぐに私はその世界に落とされたらしい。
”アーリー”と名付けられた女の子として出産され、この世に生を受けた。
分からなかったことが分かるようになる。そんな何気のないことを楽しむ、活発というより爆発的活発ばっかつ状態。体を動かすことも、本を読むことも、お家のお手伝いも、隣のお店のお留守番も、全部全部、楽しかった。

 私が生まれた所は、王城を持つ街の一角。平民街と言われていて、城壁に近い場所。
 城壁の外側にはスラム街があるけれど、平民街のどこかに城門を経ないで城内外を行き来できる場所があるらしい。商人街は、平民街のお隣で、それを利用して密輸を行っているとかのウワサも聞いたことがある。

 その日も、いつもと同じように爆発的活発状態のまんまで平民街を駆けまわっていた。
駆けっこ友達も何人もいた。その友達たちと走り終わってから気が付くと、一番足の遅い友達がいない。
最後尾を走っていたと思うけど、その友達よりも少し早い友達も気が付かなかったと。
駆けっこ友達は、男女半々で、今回いなくなったのは、女の子だ。
女の子…この友達の中で一番足の早いのは、私。
遅い子は、男女のうちでも女の子の人数が多い。でも、今日の駆けっこ友達は男の子が多かったので、最後尾の1人前は男の子だ。

 平民街の大人たちに相談。叱られながらも、いなくなった女の子の捜索が始まった。
 しかし、その日は見つからず、我が家で心労で倒れてしまった女の子の両親を介抱しつつ、翌日へ持ち越しとなった。
 夜中に、女の子の両親が家に帰っているかもしれないとして、帰宅していった。
 結果として、女の子は自宅に戻って来たそうだったけれど、しばらくは駆けっこできないと、その女の子の”お父さん”から説明があった。
 数日後、女の子の家族が平民街から商人街へ引っ越すこととなったと…
 大手の商人の下で働く事ができることになり、家族共々そこへ引っ越すとか。
 子供であっても、お手伝いをしながら、働く事になるから、今までと同じ通りのお友達付き合いは終わりと女の子の”お父さん”から言われた。
 女の子の家族は、この平民街からいなくなった。

 数日後、お隣のお店のお使いに同行して、お使い先のお店の何かをプレゼントしてあげようと太っ腹な店長から誘われた。お隣の店長って言っても、私のお父さんの弟…おじさんなんだけど。
 行った先は、あの女の子の家族が働いていると言われていた商人の経営する商店。
 もしかしたら会えるかも…と思いながら、お使いをしていたけれど、女の子もその家族とも会わなかった。
 おじさんとこのお店の店長さんは、同じ学校の卒業で、おじさんが先輩にあたるんだそうだ。そのおじさんも、気にしていたようで、その事を店長さんに聞いたら、信じられないことを言っていた。

 「先輩も知っている通り、このお店は世襲で引き継いだもの。世襲前に仕事に就いていたか、今でも健在な会長…俺の親父を説得した相手でない限り、この店で働くことはできない。こちらから、仕事に来てほしいと言うことは絶対にないんだ。」

 すると、あの女の子とその家族は、どこに行ってしまったの?

***
 エリーです。かなりイラついています。
 え?理由?
 決まっているじゃないですか、あの子の記憶を全部削除したことですよ。
 おかげで、開放状態だった3つの魔法も記憶削除で封印強化状態。使用不可になっているし、こちらから出た理由…目的や目標など、一切合切、消えてしまった。

 段取りと違う。
 
 とはいうが、こちらからの接触はできない。
 記憶が封印されるとか、マスキングされるとか、どこかに複写保存されるとかではない、完全削除…魂のリンクも切られてしまった。
 新しい魂に移し替えられた上に、記憶を移さない、記憶元は消滅させられてしまったけれど、なんとか記憶を取り戻してほしいと、無茶苦茶な願いをしつつ普段のお仕事をこなす毎日です。
 これからも、一挙手一投足、見させてもらい、応援だけ…させてください。
いつか、あなたのお手伝いをすることを望みながら。
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