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27 記憶封鎖

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「うーん」

何を見たのだろうか?
超短期睡眠学習を終えたのは、強制睡眠の1時間後だった。
しかし、何を見たのかの記憶が全く無い。
いや、何かを見たという漠然としたものが残っているだけで、理解しうるものが何もないのだ。

「これは、どういうことだ?」
「恐らく、今の状態では記憶に残さない方が良いと無意識のうちに記憶を封じているのかもしれません。いつか、状態が変化すれば自然と今回の睡眠学習のことを思い出すことができるでしょう。記憶がどうであれ、地上行き講習は修了していますから、地上へ行くことは可能となりました。許可証は既に取得済みですので、必要な情報をそちらへ書き込みました」
「許可証というと…これか?」
「はい。緑色のブレスレットが許可証です。これは、装着した本人以外は外せないものです。通信機能付きですので、緊急時も安心です。なお、ブレスレットは透明化することもできます。ほとんどの人が透明化して装着していますので、同じように今透明化しておいた方が良いと思います」
「やり方は」
「ブレスレットを触って、「透明化」と言うだけです。通信したい場合は思い浮かべるだけで、通信先と繋がります。基本的にハンズフリー通話のようなものです。声に出す必要はなく、思えば伝えられます。通信妨害は存在せず、故障もありませんので通話できない場合は相手があなたとの会話を拒否している可能性があります」

便利機能があったのか、さっそくともえさんに連絡してみよう。

「えーと、ともえさんに連絡…」
「思えば繋がります。ともえさんと通話したいと思うのです」

なるほど、声に出す必要はないのか。
意外と簡単?いや、注意は必要だな。
不用意に繋がると思った事が筒抜けになるかもしれないし。

『初通話おめでとう。何かしら?』
『地上に行くための研修が終わりました』
『…確認したわ。いつでも行って構わないけれど、当分の間は町の神の間経由になるわ。これは死んでしまった人を見ることが多くなるのとちょっと困ったことになるからよ』
『ありがとう。こっちも町以外に行こうとは思わないから大丈夫だと思います』
『了解だわ』

その言葉と共に通話が切れたと感じた。
なるほど、こういう風に使うのか。

そういえば、地上で死んだんだった。
生前?と同じ風に過ごしていたから忘れてた。
町なら大丈夫らしいから、今度行ってみよう。
自分のお墓があったりするのかな。
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