異界審査官の巻き込まれ人生記

夜空のかけら

文字の大きさ
37 / 99

37 失踪してもらいましょう

しおりを挟む
グリーンも少し寝袋で横になるとのことだったから、こちらはベッドを使わせてもらった。
着替えるのかと思ったけれど、何かあると大変だからという理由で宿屋に泊まる時はよほどのことがない限りいつもの服装なのだそうだ。
何かって何だろうか。

時刻はまだ24時だ。
いや、明日になった。
朝食は、6時くらいから食べられるらしい。
クエストを前日のうちに取っておいて、翌日朝早く町を出る人がいるそうなのだ。

眠れない。
まぁ、向こうでぐっすり眠ってしまったからな。
でも、目を閉じてじっとしていようか。

バタン。
隣の部屋のドアが閉まった音が響く。

カチャカチャ。

…この部屋のカギを解錠しようとしている?
盗人か?

カチン。
開いた?

ギー…

「デライト」

次の瞬間、部屋に満ちる白い光。

「きゃあ」

悲鳴が上がる。
女性の声だ。

「パラライズ」
「ぐっぎぎぎああ」

容赦なく飛んでいく魔法か?

バタバタバタ。
聞いた感じだと2,3人倒れたか?

「夜中にカギを開けて泥棒かと思いきや、ここの宿主と常連客っぽいわね」

2人の女性と1人の男性は、体中が痺れるのか声も上げられず身体も動かせられず、呻いている。

「どうしようかしら。衛兵に突き出すのは簡単なのだけれど」

グリーンは何か考えている。

「エリア遮断」

外の声や音が聞えなくなった。

「今、外へ声や音が伝わらないようになる魔法を掛けたの」
「それで、これをどうする?」

ベッドから出て、目の前で倒れている3人組を見る。

「衛兵に目を付けられるのは面倒くさいし、説明も大変そうだし、今周囲の音を集めているからそれ次第かな」
「周囲の音?」
「まぁまぁ、そういう感じのことよ」

そう言うとグリーンは、3人を見ながら黙ってしまった。
時刻は、そろそろ午前3時だ。

「タイムリミットは、午前4時半。集まった音を聞くに、この宿は宿泊客が朝早く出て行くことが多いみたい。突然いなくなることもあるみたいだけれど、それはこういう訳だったのね」
「というと?」
「つまり、宿泊客を襲って金目の物を奪って、客は奴隷か何かにするか、ここで殺してしまって処分するってことね。オススメしてくれたギルド職員もグルかもしれないわね。油断も隙もないわね」
「ギルドを敵に回すことにならないか」
「そうね。それなら、この人たちには失踪してもらいましょう」
「どうやって?」

バックパックの中をごそごそしていて、取り出したのはビン。
ビンのフタはコルクで出来ていて、何かが書いてある。
ビンのラベルには、日本語で『圧縮瓶』と書かれて、シールが貼ってある。

シールを剥がして、盗人に貼り付けるを3回繰り返し、

「回収」

そう言うと盗人は小さくなりながら瓶の中に入った。

「これは?」
「これは圧縮瓶。町の外とかで犯罪者を拘束、運搬するときに使う必需品よ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~

小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ) そこは、剣と魔法の世界だった。 2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。 新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・ 気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

黄金の魔族姫

風和ふわ
恋愛
「エレナ・フィンスターニス! お前との婚約を今ここで破棄する! そして今から僕の婚約者はこの現聖女のレイナ・リュミエミルだ!」 「エレナ様、婚約者と神の寵愛をもらっちゃってごめんね? 譲ってくれて本当にありがとう!」  とある出来事をきっかけに聖女の恩恵を受けれなくなったエレナは「罪人の元聖女」として婚約者の王太子にも婚約破棄され、処刑された──はずだった!  ──え!? どうして魔王が私を助けてくれるの!? しかも娘になれだって!?  これは、婚約破棄された元聖女が人外魔王(※実はとっても優しい)の娘になって、チートな治癒魔法を極めたり、地味で落ちこぼれと馬鹿にされていたはずの王太子(※実は超絶美形)と恋に落ちたりして、周りに愛されながら幸せになっていくお話です。  ──え? 婚約破棄を取り消したい? もう一度やり直そう? もう想い人がいるので無理です!   ※拙作「皆さん、紹介します。こちら私を溺愛するパパの“魔王”です!」のリメイク版。 ※表紙は自作ではありません。

夫に捨てられた私は冷酷公爵と再婚しました

香木陽灯
恋愛
 伯爵夫人のマリアーヌは「夜を共に過ごす気にならない」と突然夫に告げられ、わずか五ヶ月で離縁することとなる。  これまで女癖の悪い夫に何度も不倫されても、役立たずと貶されても、文句ひとつ言わず彼を支えてきた。だがその苦労は報われることはなかった。  実家に帰っても父から不当な扱いを受けるマリアーヌ。気分転換に繰り出した街で倒れていた貴族の男性と出会い、彼を助ける。 「離縁したばかり? それは相手の見る目がなかっただけだ。良かったじゃないか。君はもう自由だ」 「自由……」  もう自由なのだとマリアーヌが気づいた矢先、両親と元夫の策略によって再婚を強いられる。相手は婚約者が逃げ出すことで有名な冷酷公爵だった。  ところが冷酷公爵と会ってみると、以前助けた男性だったのだ。  再婚を受け入れたマリアーヌは、公爵と少しずつ仲良くなっていく。  ところが公爵は王命を受け内密に仕事をしているようで……。  一方の元夫は、財政難に陥っていた。 「頼む、助けてくれ! お前は俺に恩があるだろう?」  元夫の悲痛な叫びに、マリアーヌはにっこりと微笑んだ。 「なぜかしら? 貴方を助ける気になりませんの」 ※ふんわり設定です

【完結】魔王を殺された黒竜は勇者を許さない

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
ファンタジー
幼い竜は何もかも奪われた。勇者を名乗る人族に、ただ一人の肉親である父を殺される。慈しみ大切にしてくれた魔王も……すべてを奪われた黒竜は次の魔王となった。神の名づけにより力を得た彼は、魔族を従えて人間への復讐を始める。奪われた痛みを乗り越えるために。 だが、人族にも魔族を攻撃した理由があった。滅ぼされた村や町、殺された家族、奪われる数多の命。復讐は連鎖する。 互いの譲れない正義と復讐がぶつかり合う世界で、神は何を望み、幼竜に力と名を与えたのか。復讐を終えるとき、ガブリエルは何を思うだろうか。 ハッピーエンド 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/03/02……完結 2023/12/21……エブリスタ、トレンド#ファンタジー 1位 2023/12/20……アルファポリス、男性向けHOT 20位 2023/12/19……連載開始

アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~

ma-no
ファンタジー
 神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。  その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。  世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。  そして何故かハンターになって、王様に即位!?  この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。 注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。   R指定は念の為です。   登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。   「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。   一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

処理中です...