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48 堕落クッション

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起きたらきちんとベッドに寝ていた。
ベッド横にあった治癒ポッドは無くなっていたが、体調はもの凄く元気な状態になっていた。

「んーよく寝た。身体の不調はないな」

今日は、お休みな日だ。
でも何かすることもないな。
明日のことを考えると憂鬱になるところだけれど、明日は明日。
今日は考えないようにしたいな。

「みどりさんは町に一時的に戻ったようです。おそらく両親親戚などと会ってくるのでしょう。朝日さんも帰省するというのもアリですよ」
「この年で帰省言われてもな」

失踪したことになって…あれ、死んだことにはどうなったんだ。

「失踪期間が短いので、法的にはまだ生きていることになっています。表向きは、死んだことになってもいます」
「結局、今の俺は生きているのか」

実感としては生きているのだけれど。
じゃあ、あの世界の時は生きているのかと、こっちは違うとか…あ~あ、ややこしい。

「生きていますよ。まぁ、人間ではなく天使ですが」
「そ、そうか。なら良かった。んん、良かったのか」
「混乱しているようですが、生き死には大した問題ではありません」
「そんなことないだろう」
「自分で思っていれば良いんですよ。自分で感じていることが大事。でないと自分を見失ってしまいますよ」

そうかも。
まぁ、生きているということで。
で、何しようか今日は。
結局、そこに戻ってきてしまうのだな。

「帰省か」
「行きますか、朝ご飯用意しますよ」
「とりあえず食べる」
「できました」
「早いな、和食か」
「そんな気分でしょう」
「そういう気分なんだが…」

先を越された。
とりあえず、顔を洗いヒゲは…伸びていないな、なら食卓に座っていただきます。

「ふぁ~、今日もとってもおいしかったよ」
「お粗末さまでした」

その言葉と同時に食器が全部消える。
洗い場に行ったのか、物理的に消えたのか分からないが、片付けをしないで済むのは助かる。
ただし、そういうことをしなくなってしまうのも問題かもしれない。
一人暮らしはもうできないな。
今の状態は一人暮らしとは違うと思う。

「帰省…、うーん」

やっぱり乗り気じゃ無い。
今さら…という感じもするし、次回の審査も気に掛かっていて、とても両親などに会う気持ちになれない。

「のんびりだらだらでも良いのではないでしょうか。こちらにダメになるクッションを用意しました」

堕落クッションに登り、そこでだらだら過ごすことにした。

「あ~あ~」

たまにはこんなのもいい?
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