異界審査官の巻き込まれ人生記

夜空のかけら

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49 魂魄分割転生

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昨日は堕落してしまった。
今日が重いからいいことにしよう。
そして、今は朝。
これから出勤になる。
部屋のドアを開けずに審査室へ転送してもらい、目を閉じてその時を待つ。
こっちが審査する側なのに緊張してしまうのはどういうことか。

「準備はよろしいでしょうか?」

コア・ブレインの声が響く。

「問題なし、始めて下さい」

その言葉とともに部屋の中央に治癒ポッドみたいな縦型円筒形な機械が出現した。
これは?

「今回の転生該当者は、危害を加える可能性があります。円筒形内部で無力化されていますが念のため二重拘束となっています」
「転生した際には何も持っていないと思うけれど」
「所有物がなくても、精神的に強いと魔法と似た念動力などを発する者が存在します。今回はこの力を持つ危険人物が審査対象となります」
「転送…、完了しました」
完了したという言葉と共に、縦型円筒形の中に男性が出現した。
そして、いきなり暴れている。
身体全身で円筒形の筒にぶつかっているのだ。

どがんどがん、がんがん。

すごい音だ。
でも、円筒形は変化しない。

そして、モニターと脳裏に情報が流れ始める。

2000年1月1日生まれ、没年は2020年12月31日。死亡事由は、絞首刑だった。
16歳の時に、近くに住む女子生徒のストーカーとなる。
行動がエスカレートして、警察から接近禁止などの処分を受けるが逆恨みして、家に乗り込み女子生徒だけでなく両親弟の4人を殺害。家に火を付けて全焼させた放火殺人の罪で逮捕。
裁判で残虐性や常習、計画的犯行が問題となる。
裁判中も反省の色もなく、裁判関係者を出所後に殺害予告するなど問題が多かった。
裁判は逆送で成人と同じ裁判になり、放火殺人で死刑となった。

思ったよりも自分の中では軽かった。
もっともの凄い内容なのかと思ったからだ。

「これが、転生1回目でした」

んん?1回目?
「以降、ここに来るまでに世界で転生を10回行っています。殺害された人数は60人で、放火殺人だけでなく、完全犯罪を狙ったのか強酸に溶かしたり、コンクリート詰めにしたり、人体をバラバラにしたり、説明困難な方法で殺害したりしている殺人常習者です。現在の魂魄汚染度は82%で、次回転生で85%を越える可能性があり、今回魂魄分割転生とするか否かの決定をお伺いします」
「魂魄分割転生?」
「簡単に言えば、自分を2つに分けるということです。計算上の汚染率は多少下がって65%となりますが、魂そのものを分割する関係上、寿命がとても短くなります。最大で12歳までです」
「まさか…いや、そんなはずはない」
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