夫の初恋の君が家へ訪ねて来ました

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「私……離縁されちゃうのかしら?」

アシュレッド様は本当にキャサリーン様と再婚を考えているのだろうか?

身分差があるけれど、アシュレッド様には何か策があるのかもしれない。
養子縁組とか………。

「やっぱり私が公爵夫人なんて相応しくないのかなぁ。」

学園を卒業すると、キルケー公爵家からの縁談が来たことに随分驚いた。
彼の家と私の家が婚姻関係を必要とする要素は特に見当たらなかったから。

縁談があってから初めての顔合わせの日、彼が学園で見掛ける表情とは違う事に驚いた。


私の知る学園での彼はいつもふんわり笑って周囲の人に気を遣っていたのに、……なんというか普通の表情だった。

婚約者としても、夫としても、彼は私を大切にしてくれた。
彼はいつでも優しくて、私は彼の事がどんどん好きになっていった。

好きになっていく度辛かった……。

心のどこかで彼の愛を信じられずにいた。
アシュレッド様が私に冷たい態度を取ることなんて一度も無かったにも関わらず………。

それはきっと私が自分に自信が無いから……。
私は少しふくよかな体型だし、美しくも無い。
そもそも、アシュレッド様に見初められる要素がないのだ。

「よし、少しでも痩せよう!」

自分に自信が欲しかった。
ウジウジ悩むのが嫌だった。

「ミミリ、私痩せたいの。今日から食事を減らすわ。料理長に伝えておいて。」

そんな私の指示にミミリは真っ向から反対した。

「奥様、私は絶対に奥様はそのままの方が魅力的だと思います!」

ミミリには恋する女の気持ちが分からないのかしら?

「私、アシュレッド様にがっかりされたく無いのよ。キャサリーン様に会った後に家に帰って私を見てガッカリされたら…と思うと悲しくて。」

「絶対に大丈夫です。」

「本当?キャサリーン様ってウエストラインもとってもほっそりしているのよ。」

アシュレッド様の理想と私の姿はあまりにもかけ離れているではないか。

「奥様が思っているよりも旦那様は相当奥様の事が大好きですから。」

ミミリの自信満々な口調に呆れてしまう。

「そうかしら?」

「そうですよ。帰宅が深夜になった時でも奥様の部屋にそっと忍び込んで寝顔だけ見て行かれますし、奥様のお食事も部屋の内装もドレスも、全部ぜーんぶ好みに合うよう細かく調べていましたよ。」

そんな事………していたのだろうか?
寝顔?…………幻滅される要素しか思い浮かばない。

「寝顔は不味いわ。」
「大丈夫ですって。奥様が思う以上に旦那様は愛妻家ですって。」

それは充分過ぎるほど分かっている。
今までぞんざいに扱われたことなど無い。

「アシュレッド様は私を大切にしてくださっているの……それは…多分妻だから………。でもね、責任感からじゃ無くて少しでも私を好きになって欲しいの。」

この鈍い侍女に女心を理解して欲しい。

「無理かしら?」 

「だから、大丈夫です。」

「努力もしない女だと、呆れないかしら?」

「せめて、旦那様が帰ってきてから相談なさってください。旦那様だって、こんなに自分の気持ちが伝わって無いなんて知らないと思いますよ?」

ミミリの言うことも尤もだと思い、今日からのダイエットは諦めた。
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