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殿下がキャサリーン様を引き摺って帰ると、嵐が過ぎ去った後のように屋敷内はなんともいえない虚無感に包まれた。
そんな雰囲気に構うこと無く、アシュレッド様は私をぎゅうぎゅう抱き締めてくれる。
「お帰りなさい。アシュレッド様。」
「ん。ただいま。」
アシュレッド様の胸に頬を当てて、久しぶりの彼の匂いに包まれる。
「ごめん。不安だっただろう?」
「はい。離縁されると思いました。」
嘘をついても仕方がないので正直に答えるとアシュレッド様は表情を曇らせた。
「何を言われたの?俺の気持ちは分かっているでしょう?」
「だって、キャサリーン様って綺麗だし。初恋だって聞いた事があります。」
「記憶にない程小さな頃、何か言ったらしいけど覚えて無いよ。それにキャサリーンの顔は俺には醜く見えるよ。小さな頃からの性格を知ってるから。」
彼がそんな事を言うなんて意外だった。
ずっと一緒にいたから………。
「性格って?だって侍女の不敬を謝ってくださったわ。」
「ああ。彼女は学園時代から取り巻きに悪事をさせていて、自らは同情しているように装う。そうやってフローラ様に嫌がらせを続けてきたんだ。」
「あんなに儚げで美しいのに………。」
「テティスは、キャサリーンの学園での噂は知らないの?」
「キャサリーン様の噂?ご免なさい。私あまり噂話には興味無くて……。」
「うん。そうだったね。いつも図書館にいたしね。」
「……ごめんなさい。」
「卒業パーティーで殿下が、キャサリーン達の悪事を暴いてから広がった噂は悪いものばかりだ。」
「そうなの?入学した当初はお似合いの二人だと……。アシュレッド様の初恋の噂も聞いた事があったけど……。ごめんなさい。直接聞けば良かった。」
「俺が殿下の命令でキャサリーンの取り巻きみたいに振る舞ってたのは事実だし。ゴメン。」
「いいの。」
「本当にごめん。キャサリーンの見張り役のやつから連絡が来た時だけ、金を渡しに行ってた。金は王家から出てた。」
アシュレッド様は私の髪を梳くように触りながら話す。私の表情の変化を見逃さないよう、目は私を捉えていた。
「もう分かりました。大丈夫です。アシュレッド様はとても大切にしてくださいますもの。」
「分かってない。」
私の中でアシュレッド様は物静かなイメージだ。彼がこんなに喋るのは珍しい。
「俺はテティスが好きだよ。分かってる?テティスだけが好きなんだよ?一生一緒に過ごしたいと思うのはテティスだけ。テティスだけを大切にしたいんだよ。」
私の肩に手を置くと、彼は少し屈んで私と真っ直ぐ視線を合わせる。
「この瞳には、俺はどう映ってる?ちゃんとテティスに恋する男に見えてる?どうやって伝えたらいい?もう二度と疑われたく無いんだ。」
アシュレッド様は余裕が無くて、苦しそうで………。
顔を歪めたその表情は必死に縋っているように見えた。
いつも物静かで余裕たっぷりのこの人に、こんな表情をさせているのは自分なのだと気づく。
その瞳に真っ直ぐ私を映してくれる。
でも、負けないぐらい、私だって彼が大好きだ。
「アシュレッド様、大、大、大好きっ!!」
私はアシュレッド様に抱きついて、ーーそして顔を見上げる。
そこには、学園にいる時から、こっそり見ていた大好きな彼の顔がある。
「アシュレッド様が私の事が好きじゃ無くても、追いかけます。それくらい私だって大好き!」
私の腕の中の彼が、ほーっと息を吐き、身体の力が抜けるのが分かった。
そんな雰囲気に構うこと無く、アシュレッド様は私をぎゅうぎゅう抱き締めてくれる。
「お帰りなさい。アシュレッド様。」
「ん。ただいま。」
アシュレッド様の胸に頬を当てて、久しぶりの彼の匂いに包まれる。
「ごめん。不安だっただろう?」
「はい。離縁されると思いました。」
嘘をついても仕方がないので正直に答えるとアシュレッド様は表情を曇らせた。
「何を言われたの?俺の気持ちは分かっているでしょう?」
「だって、キャサリーン様って綺麗だし。初恋だって聞いた事があります。」
「記憶にない程小さな頃、何か言ったらしいけど覚えて無いよ。それにキャサリーンの顔は俺には醜く見えるよ。小さな頃からの性格を知ってるから。」
彼がそんな事を言うなんて意外だった。
ずっと一緒にいたから………。
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「ああ。彼女は学園時代から取り巻きに悪事をさせていて、自らは同情しているように装う。そうやってフローラ様に嫌がらせを続けてきたんだ。」
「あんなに儚げで美しいのに………。」
「テティスは、キャサリーンの学園での噂は知らないの?」
「キャサリーン様の噂?ご免なさい。私あまり噂話には興味無くて……。」
「うん。そうだったね。いつも図書館にいたしね。」
「……ごめんなさい。」
「卒業パーティーで殿下が、キャサリーン達の悪事を暴いてから広がった噂は悪いものばかりだ。」
「そうなの?入学した当初はお似合いの二人だと……。アシュレッド様の初恋の噂も聞いた事があったけど……。ごめんなさい。直接聞けば良かった。」
「俺が殿下の命令でキャサリーンの取り巻きみたいに振る舞ってたのは事実だし。ゴメン。」
「いいの。」
「本当にごめん。キャサリーンの見張り役のやつから連絡が来た時だけ、金を渡しに行ってた。金は王家から出てた。」
アシュレッド様は私の髪を梳くように触りながら話す。私の表情の変化を見逃さないよう、目は私を捉えていた。
「もう分かりました。大丈夫です。アシュレッド様はとても大切にしてくださいますもの。」
「分かってない。」
私の中でアシュレッド様は物静かなイメージだ。彼がこんなに喋るのは珍しい。
「俺はテティスが好きだよ。分かってる?テティスだけが好きなんだよ?一生一緒に過ごしたいと思うのはテティスだけ。テティスだけを大切にしたいんだよ。」
私の肩に手を置くと、彼は少し屈んで私と真っ直ぐ視線を合わせる。
「この瞳には、俺はどう映ってる?ちゃんとテティスに恋する男に見えてる?どうやって伝えたらいい?もう二度と疑われたく無いんだ。」
アシュレッド様は余裕が無くて、苦しそうで………。
顔を歪めたその表情は必死に縋っているように見えた。
いつも物静かで余裕たっぷりのこの人に、こんな表情をさせているのは自分なのだと気づく。
その瞳に真っ直ぐ私を映してくれる。
でも、負けないぐらい、私だって彼が大好きだ。
「アシュレッド様、大、大、大好きっ!!」
私はアシュレッド様に抱きついて、ーーそして顔を見上げる。
そこには、学園にいる時から、こっそり見ていた大好きな彼の顔がある。
「アシュレッド様が私の事が好きじゃ無くても、追いかけます。それくらい私だって大好き!」
私の腕の中の彼が、ほーっと息を吐き、身体の力が抜けるのが分かった。
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