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庭園での約束
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サーフィス様に庭園を案内して貰った。
彼は花のこととなると嬉々として説明してくれる。
私はそんな彼を懐かしい気持ちで眺めていた。
私も色々な事を喋った。
主に、サーフィス様が数年後私に教えてくれる内容だ。
「サーフィス様、遠く離れた北東の地にネリング王国という国があるのをご存知ですか?」
「名前は聞いた事があるけど………。」
「ネリング王国という国は芸術の国って言われているんです。いつか一緒に行ってみたいですね。」
前世で彼が新婚旅行に行こうと提案してくれた。
「ネリング王国ではオペラという歌劇が盛んなのだとか。」
「オペラ?」
僅かに首を傾げる。サーフィス様のプラチナブロンドの髪がさらりと肩から落ちた。
「歌手が楽器の演奏で歌を歌いながら進行する演劇のようですよ?舞台の意匠も素晴らしいのだとか。違うジャンルの芸術家達が、台本に沿って造り上げるなんて、きっとサーフィス様は好きそうだと思って。」
「オペラか………。見てみたいな。」
「それから、ネリング王国には沢山の荘厳な建造物があるそうですわ。何百年にもわたり平和な時代が続いていて、昔造られた美しい様式の建築物が未だに残っていて、観光地になっているそうです。」
「へー、平和な国なんだね。……うん!僕調べてみるよ。いつか、一緒に行こう。」
少し幼さの残る笑顔を見つめる。
「ミアさんは年下なのに、しっかりしてて凄いな。」
「いいえ、そんなこと………。」
全てサーフィス様に教えて貰ったことばかりです。
「僕は好きなことばかりしてて……。もっと見聞を広げないと……。いつか、ミアさんに頼って貰えるように頑張るよ。」
そう言って私の顔を見てくれるサーフィス様はいつになく力強い目をしていた。
彼は兄と自分を比べて、人付き合いの苦手な自分を恥じていた。けれど、一旦目標を持つと、桁外れの集中力と粘り強さを持っていることを知っている。
何かが違っていたらきっと彼は凄い政務官になれると思っていた。
ネリング王国の事を初めて教えてくれた時、彼が悔しそうに呟いたのが聞こえた。
「もっと早くネリング王国の事を知りたかったな。」
彼のそんな表情は珍しいので印象に残っていた。
サーフィス様はネリング王国の事を話す時、いつも生き生きしていた。
いつもの憂いのある諦めたような笑顔じゃなく、それは心からの笑顔。
だから、私は彼にネリング王国の事を早く教えてあげたかった。
彼が少しでも希望を持って毎日を過ごしてくれればと思って伝えたのだが、それがあんなにも彼を変えるとはその時は想像もしていなかった。
庭園の案内も終わった頃には、彼はすっかり打ち解けて別れを惜しんでくれた。
「僕、ミアさんと婚約出来て良かった。嬉しいよ。」
「はい。ありがとうございます。」
彼の笑顔はふんわりしていて、優しさが滲み出ている。
「僕ね、庭園の案内をしててこんなに一生懸命聞いてくれる人は初めてだったよ。」
それは………サーフィス様が楽しそうにお花の説明をするのが嬉しかったから。
「ありがとう。ミアさん。」
「私も、サーフィス様との婚約は嬉しいです。」
サーフィス様の顔をみてニッコリ笑うと彼は目を丸くして驚いていた。
何をそんなに驚くのだろうと、その顔をじっと見ていたら、みるみる涙が目に溜まるのが見えた。
「僕、…そんな風に言ってくれるなんて思ってなくて……嬉しくて………。本当は少し怖かったんだ。また婚約者に嫌われたらどうしようって……。」
涙ぐんで、私の肩口に顔を埋めてしまった。
恥ずかしくて、離れて欲しくて彼の肩をそっと押すけど、彼はふるふると首を振って顔を上げようとはしなかった。
それでも、暫くして顔を上げた彼は、
「今度ミアさんに会う時は、もう少し男らしくなってるように頑張るよ。」
そう爽やかに宣言してみせた。
彼は花のこととなると嬉々として説明してくれる。
私はそんな彼を懐かしい気持ちで眺めていた。
私も色々な事を喋った。
主に、サーフィス様が数年後私に教えてくれる内容だ。
「サーフィス様、遠く離れた北東の地にネリング王国という国があるのをご存知ですか?」
「名前は聞いた事があるけど………。」
「ネリング王国という国は芸術の国って言われているんです。いつか一緒に行ってみたいですね。」
前世で彼が新婚旅行に行こうと提案してくれた。
「ネリング王国ではオペラという歌劇が盛んなのだとか。」
「オペラ?」
僅かに首を傾げる。サーフィス様のプラチナブロンドの髪がさらりと肩から落ちた。
「歌手が楽器の演奏で歌を歌いながら進行する演劇のようですよ?舞台の意匠も素晴らしいのだとか。違うジャンルの芸術家達が、台本に沿って造り上げるなんて、きっとサーフィス様は好きそうだと思って。」
「オペラか………。見てみたいな。」
「それから、ネリング王国には沢山の荘厳な建造物があるそうですわ。何百年にもわたり平和な時代が続いていて、昔造られた美しい様式の建築物が未だに残っていて、観光地になっているそうです。」
「へー、平和な国なんだね。……うん!僕調べてみるよ。いつか、一緒に行こう。」
少し幼さの残る笑顔を見つめる。
「ミアさんは年下なのに、しっかりしてて凄いな。」
「いいえ、そんなこと………。」
全てサーフィス様に教えて貰ったことばかりです。
「僕は好きなことばかりしてて……。もっと見聞を広げないと……。いつか、ミアさんに頼って貰えるように頑張るよ。」
そう言って私の顔を見てくれるサーフィス様はいつになく力強い目をしていた。
彼は兄と自分を比べて、人付き合いの苦手な自分を恥じていた。けれど、一旦目標を持つと、桁外れの集中力と粘り強さを持っていることを知っている。
何かが違っていたらきっと彼は凄い政務官になれると思っていた。
ネリング王国の事を初めて教えてくれた時、彼が悔しそうに呟いたのが聞こえた。
「もっと早くネリング王国の事を知りたかったな。」
彼のそんな表情は珍しいので印象に残っていた。
サーフィス様はネリング王国の事を話す時、いつも生き生きしていた。
いつもの憂いのある諦めたような笑顔じゃなく、それは心からの笑顔。
だから、私は彼にネリング王国の事を早く教えてあげたかった。
彼が少しでも希望を持って毎日を過ごしてくれればと思って伝えたのだが、それがあんなにも彼を変えるとはその時は想像もしていなかった。
庭園の案内も終わった頃には、彼はすっかり打ち解けて別れを惜しんでくれた。
「僕、ミアさんと婚約出来て良かった。嬉しいよ。」
「はい。ありがとうございます。」
彼の笑顔はふんわりしていて、優しさが滲み出ている。
「僕ね、庭園の案内をしててこんなに一生懸命聞いてくれる人は初めてだったよ。」
それは………サーフィス様が楽しそうにお花の説明をするのが嬉しかったから。
「ありがとう。ミアさん。」
「私も、サーフィス様との婚約は嬉しいです。」
サーフィス様の顔をみてニッコリ笑うと彼は目を丸くして驚いていた。
何をそんなに驚くのだろうと、その顔をじっと見ていたら、みるみる涙が目に溜まるのが見えた。
「僕、…そんな風に言ってくれるなんて思ってなくて……嬉しくて………。本当は少し怖かったんだ。また婚約者に嫌われたらどうしようって……。」
涙ぐんで、私の肩口に顔を埋めてしまった。
恥ずかしくて、離れて欲しくて彼の肩をそっと押すけど、彼はふるふると首を振って顔を上げようとはしなかった。
それでも、暫くして顔を上げた彼は、
「今度ミアさんに会う時は、もう少し男らしくなってるように頑張るよ。」
そう爽やかに宣言してみせた。
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