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ご婦人達のアドバイス

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今日も母とレーモント公爵婦人のお茶会に参加していた。

ベレッグ侯爵夫人は情報通でいつも私達母子にアドバイスをしてくれている。
特に社交界でのセレナの動きに注視しているようだ。

「セレナ様が随分と継母と義妹に虐められていると、噂になっていますわ。」
「え?」
「メルリア様、失礼ですがドレスはセレナ様に買っていらっしゃいます?」
「え、ええ、今シーズンも何着かは購入している筈ですが………。」
「着ているものをチェックした方が宜しくてよ。流行遅れの物や同じドレスばかりを着ていましてよ。」 
「え?」
「そうやって同情を集めているのです。殿下の婚約者が虐げられていれば、貴族の皆様の良い話の種ですわ。」
「まぁ、知りませんでしたわ。ご忠告ありがとうございます。」
「いえ、セレナ様はハイント侯爵家と益々お近づきになっているようですし、かなり計画的かと……。」

母は神妙な顔で聞いていた。姉にそこまでされる事がショックなのだろう。

「あとミア様に関しても。メルリア様とミア様が共謀してセレナ様を虐待なさっているとか、元々セレナ様の婚約者だったレーモント公子に横恋慕したミア様が我が儘を言って婚約者を奪ったとか言われております。」

「まあっ!!」
母は初めて知ったようで驚いていた。益々顔が青ざめ考え込んでしまった。
私にまで悪評が及んでいることを深刻に受け止めたようだ。

母の様子を見て頷くと、ベレッグ侯爵夫人は今度は私に話し掛けてきた。

「ねぇ、ミア様、わたくしにお手紙書いていただけない?」
「え?」
「セレナ様を中傷する手紙。犯人はミア様でないかとの噂が真しやかに囁かれています。」
「そうなんですね。」

この事は既に予想していた。
逆行前の裁判で自分の書いたとされる手紙が次々証拠として提出されていたのだ。
私が手紙で姉を呼び出して誘拐し、彼女を人質にしてサーフィス様がアーヴァイン殿下の暗殺を狙った事になっていた。

姉を中傷する手紙や姉を呼び出した手紙、それらの筆跡は本当にそっくりで……。

「カーリン女史に出した課題は全て利き手とは逆の手で書きました。」

私は予めカーリン女史に私の書いた物を渡さないようにミレーゼ様に指示されていた。

利き手とは逆の手で文字を書くのは難しくて、随分時間が掛かった。けれど、カーリン女史は他の家庭教師に比べて異常に課題の量が多くて、最近は左手で書くのにも慣れてしまっていた。

「ふふふ、アーヴァイン殿下とセレナ様が何か企んでるようですわ。こちらで対処するので、ミア様は安心してくださいませ。」

社交界デビューがまだの私には反論の機会はない。
ミレーゼ様やベレッグ侯爵夫人のような味方がいることは心強かった。

ベレッグ侯爵夫人の真っ赤な唇が弧を描く。妖艶なその微笑みは宛ら魔女のようだった。
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