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ベレッグ侯爵夫人
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今日は新年を祝う王宮舞踏会。この日のために着飾った令嬢達がダンスホールで華やかに舞う。
舞踏会も中盤に差し掛かる頃、きらびやかで優雅な雰囲気を壊すような事件が起きた。
「セレナがいない!!」
王宮舞踏会でアーヴァイン殿下の声が響く。舞踏会の最中、緊迫感のある声は皆の注目を集めた。
「セレナを探せ!」
殿下が衛兵達に命じると、衛兵と共に自分も大広間を走って出ていった。
ピリピリとした緊張感が走る。
残された招待客は、黙って様子をみている者、ヒソヒソと噂話をしている者、皆が様々な反応を示しながら事態を見守っていた。
軈て、アーヴァイン殿下はセレナ様を抱き抱えて会場に戻ってきた。
セレナ様は見たところ服装の乱れも無く元気そうだ。
「どうしてあんな部屋に閉じ込められていたんだ?」
アーヴァイン殿下は貴族が見守る中、セレナ様に居なくなった理由を尋ねた。
「手紙が……。」
アーヴァイン殿下はセレナ様から手紙を受けとる。
「この中にセレナを呼び出した者はいないか?」
殿下は手紙を掲げて大きな声でその場にいる者に問いかけるが返事が無い。
「セレナ、この字に見覚えは?」
セレナ様は可愛らしく首を傾げた。
「うーん……妹のミアの字に似ているような?」
「君の妹か!」
「あっ、でも舞踏会には来ていないのできっと勘違いですわ。」
セレナ様は否定するが、既に遅い。
舞踏会の参加者はこの騒ぎの犯人がこの場には居ないミア様ではないかと疑ってしまっていた。
「ちょっとお待ちください。」
私はこの騒ぎに飛び入り参加する事にした。
「わたくし丁度ミア様の手紙を持っているんですのよ。」
わたくしは手紙を取り出しセレナ様に見せつけるように翳した。
「まあ!」
「おお、ベレッグ侯爵夫人ありがとう。」
アーヴァイン殿下は手紙の筆跡がミア様のものにそっくりだと信じているようだ。
渡りに舟とばかりに手紙を受け取った。
「え?」
アーヴァイン殿下は手紙を見比べて顔色を変えた。
私は護衛騎士に制止されるより早くアーヴァイン殿下の隣に移動し、手紙を覗き込む。
「まあーーっ!!」
貴族達の注目が集まる。
「ミア様の筆跡とはまるで違いますわあ!」
殊更に大きな声で驚いた振りをする。
「全然似ていませんのにどうしてセレナ様はミア様からの手紙だと?」
意地悪く聞くと、セレナ様は顔を青ざめさせ、答えられない。
「まあ!丁度ここにサーフィスとの婚約の時にミアちゃんが書いた誓約書がありますわ!」
レーモント公爵夫人も参戦してきた。
「あー、やはり私宛の手紙と筆跡は一緒ですね。」
私とレーモント公爵夫人はお互いの手元を覗き込み合い、セレナ様を呼び出した手紙の筆跡とは違う事を周囲に印象付けた。
「そ、そうか。セレナの勘違いだったようだな。」
アーヴァイン殿下はこれ以上は不利だと悟ったのか、セレナ様を再び抱き抱えて会場を去っていった。
「皆の者、騒がしくしてすまなかった。続きを楽しんでくれ。」
陛下が騒ぎを終わらせようと、舞踏会の再開を告げた。
その声に答えるように、楽団が音楽を奏で始める。
★★★
今日の王宮主宰の舞踏会で、アーヴァイン殿下とセレナ様が何か企んでいるらしいことは既に分かっていた。
主人は表向き王宮の閑職に就いているが、実際は諜報部を取り仕切っている。
「アーヴァイン殿下の思想は危険だ。戦争は勝てば良いが負けた時の事を想定していない。敗戦時の被害の試算を殿下に示しても、俺が負けると想定するのは不敬だと言って取り合わない。」
夫は苦々しい表情だ。
実際、王宮の中にはアーヴァイン殿下を担ぎ上げる者が少なくない。
主人達王宮に働く者たちはアーヴァイン殿下を危険視しているが、今の権力構造の変化を求める野心のある貴族はアーヴァイン殿下に傅いている。
「アーヴァイン殿下とセレナ嬢はレーモント公子を利用しようとしている。婚約者のミア嬢も悪い噂がたっていて、二人が何か罪を犯したとしても誰も不思議には思わない。冤罪を被せる下地を作ってあるように見えるな。今レーモント公爵に失脚して貰うのは困る。」
夫に頼まれ動いているが、正直楽しくって仕方がない。
ミア様もサーフィス様もまだ幼い。
何より社交界デビューする前の子供をこんな風に貶める人間に膝を折ることは私の矜持が許さない。
舞踏会も中盤に差し掛かる頃、きらびやかで優雅な雰囲気を壊すような事件が起きた。
「セレナがいない!!」
王宮舞踏会でアーヴァイン殿下の声が響く。舞踏会の最中、緊迫感のある声は皆の注目を集めた。
「セレナを探せ!」
殿下が衛兵達に命じると、衛兵と共に自分も大広間を走って出ていった。
ピリピリとした緊張感が走る。
残された招待客は、黙って様子をみている者、ヒソヒソと噂話をしている者、皆が様々な反応を示しながら事態を見守っていた。
軈て、アーヴァイン殿下はセレナ様を抱き抱えて会場に戻ってきた。
セレナ様は見たところ服装の乱れも無く元気そうだ。
「どうしてあんな部屋に閉じ込められていたんだ?」
アーヴァイン殿下は貴族が見守る中、セレナ様に居なくなった理由を尋ねた。
「手紙が……。」
アーヴァイン殿下はセレナ様から手紙を受けとる。
「この中にセレナを呼び出した者はいないか?」
殿下は手紙を掲げて大きな声でその場にいる者に問いかけるが返事が無い。
「セレナ、この字に見覚えは?」
セレナ様は可愛らしく首を傾げた。
「うーん……妹のミアの字に似ているような?」
「君の妹か!」
「あっ、でも舞踏会には来ていないのできっと勘違いですわ。」
セレナ様は否定するが、既に遅い。
舞踏会の参加者はこの騒ぎの犯人がこの場には居ないミア様ではないかと疑ってしまっていた。
「ちょっとお待ちください。」
私はこの騒ぎに飛び入り参加する事にした。
「わたくし丁度ミア様の手紙を持っているんですのよ。」
わたくしは手紙を取り出しセレナ様に見せつけるように翳した。
「まあ!」
「おお、ベレッグ侯爵夫人ありがとう。」
アーヴァイン殿下は手紙の筆跡がミア様のものにそっくりだと信じているようだ。
渡りに舟とばかりに手紙を受け取った。
「え?」
アーヴァイン殿下は手紙を見比べて顔色を変えた。
私は護衛騎士に制止されるより早くアーヴァイン殿下の隣に移動し、手紙を覗き込む。
「まあーーっ!!」
貴族達の注目が集まる。
「ミア様の筆跡とはまるで違いますわあ!」
殊更に大きな声で驚いた振りをする。
「全然似ていませんのにどうしてセレナ様はミア様からの手紙だと?」
意地悪く聞くと、セレナ様は顔を青ざめさせ、答えられない。
「まあ!丁度ここにサーフィスとの婚約の時にミアちゃんが書いた誓約書がありますわ!」
レーモント公爵夫人も参戦してきた。
「あー、やはり私宛の手紙と筆跡は一緒ですね。」
私とレーモント公爵夫人はお互いの手元を覗き込み合い、セレナ様を呼び出した手紙の筆跡とは違う事を周囲に印象付けた。
「そ、そうか。セレナの勘違いだったようだな。」
アーヴァイン殿下はこれ以上は不利だと悟ったのか、セレナ様を再び抱き抱えて会場を去っていった。
「皆の者、騒がしくしてすまなかった。続きを楽しんでくれ。」
陛下が騒ぎを終わらせようと、舞踏会の再開を告げた。
その声に答えるように、楽団が音楽を奏で始める。
★★★
今日の王宮主宰の舞踏会で、アーヴァイン殿下とセレナ様が何か企んでいるらしいことは既に分かっていた。
主人は表向き王宮の閑職に就いているが、実際は諜報部を取り仕切っている。
「アーヴァイン殿下の思想は危険だ。戦争は勝てば良いが負けた時の事を想定していない。敗戦時の被害の試算を殿下に示しても、俺が負けると想定するのは不敬だと言って取り合わない。」
夫は苦々しい表情だ。
実際、王宮の中にはアーヴァイン殿下を担ぎ上げる者が少なくない。
主人達王宮に働く者たちはアーヴァイン殿下を危険視しているが、今の権力構造の変化を求める野心のある貴族はアーヴァイン殿下に傅いている。
「アーヴァイン殿下とセレナ嬢はレーモント公子を利用しようとしている。婚約者のミア嬢も悪い噂がたっていて、二人が何か罪を犯したとしても誰も不思議には思わない。冤罪を被せる下地を作ってあるように見えるな。今レーモント公爵に失脚して貰うのは困る。」
夫に頼まれ動いているが、正直楽しくって仕方がない。
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