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8.お茶会
しおりを挟む「キャロラインにデュロイ公爵夫人から、お茶会の案内が届いているわ。」
お母様から差し出された招待状の差出人は確かにデュロイ公爵夫人。確か……ローザンナ侯爵家とも近しい関係だから招待されてもおかしくは無いけど……、噂好きで有名な元王女様。
「エーデルワイス様にお伺いしてからお返事しますわ」
デュロイ公爵夫人のお茶会への参加……。これは嫁ぎ先であるローザンナ侯爵家の意向を確認する必要がありそう。
私が相談すると、エーデルワイス様にあっさりと参加するよう言われた。
エーデルワイス様と隣国の元王女様であるデュロイ公爵夫人は旧知の仲だそうだ。
「きっと『氷の貴公子』と結婚する令嬢が気になって仕方ないのね。昔から他人の恋愛話に首を突っ込むのが好きなのよ」
そして、厄介な令嬢ことマウントトール伯爵令嬢も招待されているみたい。
「マウントトール様も……参加されるのですか」
あー、嫌だ。
あの幼馴染トークまた聞かなきゃいけないのかしら?
「彼女、噂話が大好きだから、気を付けてね。まずは、アルフォンソの溺愛を周知するためにも、新しくドレスを仕立てましょう」
そして、いよいよお茶会当日。
挨拶もそこそこに、デュロイ公爵夫人は素早く私の全身をチェックすると、まずは胸元に輝くペンダントに目を付けた。
「キャロライナ様のペンダント、お洒落なデザイン。それに、まあ!ローザンナ卿の瞳の色の石ではありませんか?」
「ええ。これ……アルフォンソ様からいただいたんです」
「まあっ!!『氷の貴公子』がそんなロマンチックな事をなさるなんて……。とても大きな石……、愛されてますのね。しかもドレスもローザンナ卿の色。」
「うふふ。ドレスもアルフォンソ様が選んでくださって」
今日着ているドレスはアルフォンソ様の贈り物。薄いブルーの生地にキラキラ光る銀糸の刺繍は、彼の髪の色を思わせる。
お茶会に参加されている令嬢たちが私の胸元で輝いているペンダントに注目する中、私の斜め前の席に座っているエヴァリン様が口を開いた。
「アルってプレゼント贈るのが好きですものね。私も今までに随分と貴重なプレゼントを頂いてきましたわ」
「まあ!エヴァリン様もローザンナ卿からプレゼントを贈られたことがあるのですか?」
その時、デュロイ公爵夫人の目の奥がきらりんと光った。
噂好きのデュロイ公爵夫人はエヴァリン様の話に食いついて話を掘り下げる。まるで私たちの三角関係を楽しんでいるみたいに。
「ええ、幼馴染ですし、彼は何かある度に頻繁にプレゼントを贈ってくれますの」
その話を聞いて一気に気分が沈み込む。
アルフォンソ様からいただいたペンダント……彼の色……嬉しかったのに……。
エヴァリン様にも同じように贈り物をしていたと聞いて、急にペンダントの深い蒼が色褪せて見えた。
「頻繁に……エヴァリン様は一体何を頂いたのですか?」
「えっ……まぁ……アルの名誉のために、ここでは秘密にさせていただきますね。」
その質問を受けて、急に困ったようにたじろぐエヴァリン様。
噂好きのデュロイ公爵夫人は私とエヴァリン様を見比べながら面白そうに話を振ってきた。
「そうそう、キャロライン様。先日王都のカフェでローザンナ卿と二人でデートなさったんですって?お互いにスイーツを食べさせ合っていたと噂になっていますわ」
おー!あの羞恥プレイもデュロイ公爵夫人の耳に?
「ええ。私は恥ずかしかったんですけど……」
「アルって甘い物嫌いだったのに……。我慢して食べたのかしら?お肉を食べさせてあげたほうが喜ぶのに……」
はあ?
マウントトール様って最早喧嘩を売っているとしか思えない。
そんな私たちを見てデュロイ公爵夫人はますます楽しそう。
私がデュロイ公爵夫人の質問に答えるように二人の仲良しエピソードを披露するとマウントトール様は必ず幼馴染の思い出エピソードを被せてくる。
お茶会に参加している令嬢たちは興味深げに話を聞いている。
どうやらエヴァリン様は『幼馴染の恋仲の二人が政略結婚で引き裂かれた』感じを演出しているみたい。
アルフォンソ様が高い場所が苦手な事とか、食べ物の好き嫌いだとか。私はアルフォンソ様から直接聞きたいのに、親切に教えてくれるみたいにして話してくるのが本当に嫌だった。
そろそろ作り笑いも限界なんて思ってたらデュロイ公爵夫人の所に執事が来てコソッと耳打ちしていった。
そしてーー
「アルっ!?」
「アルフォンソ様……」
執事に案内されてアルフォンソ様がお茶会の会場に姿を表した。
話題の『氷の貴公子』の登場に、他の参加者たちは驚いている。
「デュロイ夫人、今日は僕の婚約者を招待してくださってありがとうございます」
「ふふふ。貴方たちの幸せをお裾分けして貰いたくてね」
「キャロラインに政略結婚だと割り切られてしまわないように、まだ僕がキャロラインを口説いてる途中なのです」
「まあ!貴方がまだ口説き落とせていないの?」
「ええ。ですから今日のところは、キャロラインを僕に返して欲しいです」
「ふふふ。若いっていいわね。結構よ、連れて帰ってちょうだい」
「流石デュロイ様。懐が広い」
アルフォンソ様は気取ったように一礼すると此方の方に歩いて来て、私をさっと抱き上げた。
「あ、アルフォンソ様……歩けます」
お茶会の途中で迎えに来て抱っこして退席なんてどういう状況??
私は恥ずかしいのにアルフォンソ様は全く気にしてないみたい。
アルフォンソ様の艶やかな笑顔にその場に居た令嬢たちは皆頬を染めて呆然としている。そんな中、マウントトール様がアルフォンソ様に声を掛けた。
「アル!この間借りた本、ありがとう。今度返しに行くわね」
ああ、あの時の養蜂場の資料……。
エヴァリン様はそんなにもアルフォンソ様の事が好きなんだろうか?
そういえば……
「アルフォンソ様、マウントトール様に今まで沢山の貴重なプレゼントを贈ったとお伺いしましたわ。一体何をプレゼントなさったの?」
「ん?プレゼント?」
彼は思い当たることが無かったのか一瞬考える仕草を見せた。
「……ああ。『タマムシ』かな?エヴァリン嬢は虫好きだからな。マニア仲間として珍しい『タマムシ』が見つかるとプレゼントしていたな」
なるほど。アルフォンソ様にとってマウントトール様は『マニア仲間』なのか……。
そういえば、アルフォンソ様はジャレット様にも『ヘラクレス』を贈ろうとしていた……。
(マウントトール様への贈り物って虫ですって。)
(まあ!あんなに自慢なさってたのに?)
クスクスと令嬢たちの嘲笑が聞こえる。
マウントトール様は顔を真っ赤にして俯いていてちょっと可哀想なぐらいだった。
一方、そんなマウントトール様のことは目に入ってないアルフォンソ様は、私の額に唇をくっ付けた。
「な、なんですか?」
びっくりしてアルフォンソ様を見上げる。
「うん?顔が赤いから熱があるのかと思って」
「は、恥ずかしいんですっ!!こんな人前で……こ、こんなこと……」
こうして私は生温かい視線に見送られながらお茶会を途中退席することになった。
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