浮気した婚約者を許して政略結婚いたします。

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14.お似合いって言われたいっ!!

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ウィルフレッド殿下視点

(一人称僕です)


 社交シーズンの始まりを告げる王宮舞踏会。僕は自分の瞳の色のドレスを着て欲しいってレイラーニにお願いしたけど断られた。

「殿下の瞳の色は毎年同じなんですから、同じ色のドレスばかり着ることになってしまいます。他の色が着れないじゃありませんか?」
 だって。

 母上は既に亡くなっているから父上は踊らない。
 僕たちがダンスを一番に踊って、その後に他の貴族たちが続く。

 毎年レイラーニは大人気で、男性たちが申し込むためにお互いに牽制し合いながら行列を作る。

 僕?
 僕にだって申し込みはある。
 そこそこに……ね。

 だけどレイラーニの愛人の座を狙う男の方が多いから僕は警戒してるんだ。


~~~~


「殿下、お待たせしました。」
「ああ。」

 王宮舞踏会の当日、僕の前に現れたレイラーニは薄い紫のドレスを着ていた。
 その色……エミリオ叔父さんじゃないの!?
 おまけに胸元が開き過ぎてる。
 ダンスの時に覗かれちゃうよ!!
 僕は思わず眉をひそめた。

「エミリオ叔父さんの色……ではないか?」
「ふふっ。今年の流行色ですのよ。」
「そうか……。レイラーニ、寒いだろう?」
「いえ?全然。」
「夜になると気温も下がるはずだ。冷やしては身体に障る。ラン、レイラーニにストールか何か羽織るものを。」

 レイラーニの専属侍女のランは有能。
 ちゃんと胸元が隠れるタイプの大振りなシフォン生地のストールを持ってきてくれた。
 僕の意図をしっかりと感じ取ったらしい。
 さすがはレイラーニのお気に入りだ。


~~~~


 僕とレイラーニはファーストダンスを踊る。貴族達がみんな注目してるから、この瞬間は今でも緊張する。

 レイラーニはダンスの名手。軽やかなステップと華やかな笑顔で男性たちを魅了する。
 あー駄目だ。
 そんなに笑っちゃ。
 申し込みが増えてしまうだろう?

 僕たちのダンスが終わり、レイラーニの次の相手を申し込んで来たのはエミリオ叔父さん。

「妃殿下、私とも踊って頂けませんか?」
「まあ!光栄ですわ。」
 
 晴れやかな笑顔を見せて、レイラーニは差し出された手に自分の手を重ねた。
 レイラーニがすごく嬉そうに見える。
 エミリオ叔父さんみたいな大人の男の方が好きなのかなって不安になった。

 僕の方にはデビュタントを終えたばかりの令嬢が来てダンスを申し込まれた。

 僕たちは2~3曲は他の貴族たちを相手にダンスを踊るのが慣例になってる。だから僕もその令嬢とダンスを踊ることにした。

 もちろん愛想よく笑って紳士的にダンスに誘うことにしている。
 だって僕王太子だから!

 レイラーニとエミリオ叔父さんのダンスは気になるけど、今は自分のダンスに集中。
 うーん、この子あんまりダンスが上手くないなあ。
 デビュタントだし、しょうがない。年上としてフォローしなくては……。

 曲も中盤に差し掛かった頃、会場からわぁー!っと歓声が上がった。

「ん?何だ?」

 チラリと目をやるとエミリオ叔父さんに持ち上げられているレイラーニが!

 エミリオ叔父さんもダンスの名手でやることが派手だ。
 会場の視線を二人が独占してる。





「ヴァンシュタイン公と妃殿下はお似合いですわね。」

 んん?
 聞き捨てならないぞ?
 ダンスを踊り終わって友人たちと談笑していると、女性たちの噂話が聞こえてきた。

「ええ、あのダンス、素敵でしたわ!!」
「本当に。ヴァンシュタイン公は逞しいですから妃殿下を軽々と持ち上げて……。」
「わたくしも、あれを見て感動いたしました。まるで妃殿下を羽のように軽々と……。やはり殿方はああでないと……。お二人ともにダンスの名手ですから、どのポーズもまるで絵画のように美しくて。」

 話し声が僕に聞こえていることにも気がつかないらしい。女性たちは興奮気味に話している。

 エミリオ叔父さんは独身を貫くらしいけど、女性人気は絶大。どうしてわざわざレイラーニを誘うんだ?

 僕は会場にいるはずのエミリオ叔父さんを探した。
 あっ、いた!
 レイラーニと話してるっ!!

 僕は急用が出来たと言って友人たちから離れて、エミリオ叔父さんの所に急行した。
 エミリオ叔父さんはちょうどレイラーニから離れて一人になったところだった。

「エミリオ叔父さんっ!」
「おっ!ウィル。血相をかえてどうした?」
「どうして毎回レイラーニをダンスに誘うんですか?」

 エミリオ叔父さんは僕をみて揶揄うようにニヤリと笑った。

「魅力的だからさ。」
「っ!!」
「ははっ、あんまり怒るなよ!」

 ムッとして思わず睨むと、エミリオ叔父さんはニヤニヤしたまま両手を挙げた。彼はこうやって昔から僕を揶揄うんだ。
 揶揄われているんだと分かっていても、やっぱり気分は良くないっ!

「実際、レイラーニはダンスの名手だし、踊ってて楽しいんだ。」

 僕が抗議したってエミリオ叔父さんはレイラーニを誘うことを止めないだろう。自由人だから。

 要は僕がエミリオ叔父さんよりレイラーニにお似合いの男になればいい。僕の努力次第なんだから。

 僕はその日から鍛練とダンスレッスンの日を増やした。

 レイラーニを一番綺麗に見せるダンスを踊れるようになってみせる!











その後ーー






オーロラ王国第11代目国王ウィルフレッド・シーサス・アシュトフは4人の子供に恵まれ、子煩悩な国王として有名になった。
 彼の子供好きは自分の子供だけに留まらず、政策面にも強く影響した。

 孤児院の整備、教材の無料配布、子供の遊ぶ場所を増やして治安の向上にも尽力。

 愛妻家としても有名な彼は、美しい王妃にぞっこんで、そのエピソードには事欠かない。
 そして、二人の息の合ったダンスは有名で、王宮舞踏会で二人の踊る姿は貴族令嬢たちの憧れだったという。


ーー(完)ーー
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感想 289

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みんなの感想(289件)

たまこ
2025.01.20 たまこ

大好きなお話です!
何回も繰り返し読んでます!

2025.01.21

感想ありがとうございます!
何度も読んでいただけるなんて嬉しい
⁽⁠⁽⁠ଘ⁠(⁠ ⁠ˊ⁠ᵕ⁠ˋ⁠ ⁠)⁠ଓ⁠⁾⁠⁾

解除
せち
2022.01.13 せち

叔父様とのハピエンでも良かったなぁ🥰と1人想像してしまいました✨

2022.01.13

せち様〜🌟
感想ありがとうございます
|*´꒳`*)ノ…感謝♫

叔父さまはスパダリ💖
情けないヒーローが書きたくて(๑′ᴗ'๑)エヘヘღ

解除
ゆまーま
2021.12.07 ゆまーま

今からバイトです。バイトの前に車の中で読んでしまいました。
僕王太子!
やめて〜ばいと中にニヤニヤしちゃう
なんちゅう刺繍をするのですか、、、マスクしててよかったー。
この思いを伝えたくて
バイト前に投稿してます。
帰ってから続き読みます。

2021.12.07

ゆまーま様🌟
感想ありがとうございます
ᵗʱᵃᵑᵏᵧₒᵤও٩(❛ัᴗ❛ั⁎)ೄ

お気持ち嬉しいです💖
バイト頑張ってください!
(○p>ω<)尸" フレーフレー☆

解除

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