殿下、私も恋というものを知りました。だから追いかけないでくださいませ。

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2.ディアーク殿下視点

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※コメディですが突っ込みがいません。脳内での補完をお願いいたします。
 


 俺がこの世界に生を享けた日ーー
 天上の女神が俺の誕生を祝福するように、王宮に光のシャワーが降り注いだそうだ。(注:ただの晴天)

 
 世界に祝福されし俺の1日は、窓から差し込む朝日で目覚めるところから始まる。
 毎朝支度をしてくれている王宮侍女たちも、陽の光を浴びる俺に見惚れているに違いない。反射して輝く透き通るような金髪は、自分でさえうっとりとしてしまう。

 俺はこの国の第1王子だ。
 王族という地位に加えとても美しい顔立ちをしている。毎日鏡の中の自分を見るたびに己の美しさに驚愕し、うっかり気を失いそうになる。

「サニー、俺の美しさは罪では無いか?」

「はいはい、罪ではありませんよ。王族ですからね。」

 流石はサニー。ベテランである彼女はテキパキと俺の支度を整えてくれる。
 今日も隙のない髪型、足が長くてスラリとしたスタイル。美丈夫の俺の甘い笑顔は、毎日俺を一目見ようと待ち構えている令嬢たちの心を鷲掴みにするだろう。

「また、俺のために女子生徒が騒いでしまうな。」

「えーえー、そうですね。お美しい上に王族ですからね。」

 支度が完了し姿見を見ると、いつも通りに神々しい 俺!

「ぷふぁーフェクトだ。」

「はいはい、いつも通り完璧でございますよ。」

 貴族令嬢が俺に羨望の眼差しを向けるのが堪らない。
 この高揚感が、責任ある立場を生きる俺のエネルギーになる。






 
 俺には美しい婚約者がいる。
 その女性はレイチェル・フォンゼル侯爵令嬢。

 王族である俺と、我が国の名門貴族フォンゼル侯爵家の令嬢であるレイチェルが揃うと、学園の令嬢が取り囲んで感嘆の声を漏らす。

「はぁ~~、殿下とレイチェル様、お美しい~~。」

 ふふっ、そうだろ。
 気絶するなよ?俺も今朝、あまりのぷふぁーフェクトな自分に酔いしれ、意識が飛んだんだ。
 君たち女性も気を付けるといい。
 俺は見学に来た女子生徒に甘く微笑んだ。

「きゃ~~。殿下がこちらを見て笑ってくださったわ!!」
 
 そんな歓声に気分を良くしていると、レイチェルは冷めた声で話し掛けてきた。

「生徒の風紀が乱れていますわね。令嬢としてあまり大きな声は慎むべきでは?」

 俺と同様に美しい彼女だが、彼女は驚くほど冷静で情緒を理解しない。このぷふぁーフェクトな俺を見て、感動しないなんてあり得ないだろう?

「仕方が無いだろう。美しさに対する憧れは人類共通のものだ。」

「はあ、そうですか。」

 美に対する尊敬が薄い!!
 彼女から『美しい』とか『格好いい』とか、俺の容姿を褒める言葉を聞いた事がない。 
 この美しさに感動出来ないなんて、なんて残念なことだ!

 レイチェルはただ淡々と日々を過ごし俺の隣に当然のように立つ、そんな女性。

 しかしその美しさ、教養、全ての面において王妃の器ではある。そう思っていた。
 クラーラに出逢うまでは……。







 学園に入学して半年後、小さくて可愛らしい女子生徒が編入してきた。
 その少女を初めて見たのは学園の中庭。急に小鳥たちが祝うように囀ずりだしたんだ。

 ちゅんちゅんちゅんーー
  
 俺の視線の先にはピンクの妖精がいた。

「なんて可愛いんだ。」

 豊かに波打つピンク髪の少女は、愛らしく首を傾げて俺を見つめていた。小さくて柔らかそうで庇護欲をそそるその外見。ぷにぷにしてて触りたくなる上気した頬。何より俺を見つめるキラキラした瞳はなんとも言えない幸福感を俺に与えてくれた。

 頭の中でファンファーレが鳴り響く!

ぱっぱぱーぱっぱーぱっぱーぱっぱっぱあーー

 見てくれ小鳥たち、俺の運命は動き出したんだ!

「ほ、本物の王子様~!格好いい!素敵!足ながーい!」

 そうだろう、そうだろう。
 俺を見た時の反応は彼女が正しい!
 胸の中にあった大きな空洞。それがクラーラによって埋められていった。
 まるで運命!!

 長年俺に憧れていた彼女は、毎日顔を合わせる度に俺を誉め称えてくれる。

「今日も殿下は格好良くて後光が差して見えます!」
「殿下の金髪きれー、サラサラ、すごーい!」

 俺はクラーラに夢中になった。彼女と一緒に居ると、気分が高揚し自信が溢れてくる。
 そしてその小さい背も、髪の色も、俺の隣に立つのに相応しい。

 正直、レイチェルは俺の隣に立つには少々背が高い。髪も俺と同じハニーゴールド。つまり俺が引き立たない。

 クラーラの方が俺には相応しいのでは?
 いつしかそう思うようになっていた。
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