殿下、私も恋というものを知りました。だから追いかけないでくださいませ。

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クラーラ視点


6年後

ピカリーノ公爵邸
(ディアーク殿下が臣籍降下しピカリーノ公爵になりました。)



「ジーク、今、なんて、言ったの?」

「ぼくぅーぷふぁーフェクトっ!!おそもだし(お友達)がいってた!」

 4歳の息子、ジークアルトが鏡を見て自分をぷふぁーフェクトだと言い出した。

「はぁーー、なんてことっ!!」

 私は頭を抱えた。もちろん口元に微笑みは忘れない!

 ジークアルトはディに似て、とても美しい顔立ち。確かに鏡に映る彼は天使のようだ。けれど、鏡に映る自分を見てぷふぁーフェクトと呟く所まで似てしまうなんて!
 
 ジークをディのようにするわけにはいかない。幼いうちに矯正しなければ!

 私はジークアルトを連れて、実家のツリメーノ公爵家に駆け込んだ。

「お義母様、大変!ジークがディに似てしまって、ナルシストになってしまうかもしれないの!」

「まあ!クラーラ、どうしたの?そんなに慌てて、淑女たるものいつも落ち着いてなければいけないわ!」

「これを見て!」

 お義母様の目の前でジークを姿見の前に連れていく。

「おばーしゃま、ぼくぅーぷふぁーフェクトでしゅ!み(び)のめがみに、愛しゃれてましゅっ!」

 ジークは嬉しそう。なんだかポージングもしようとしているみたい。

「ああ、ジーク!もちろんよ。貴方は美の女神の申し子に違いないわ!」

 え?お義母様?
 お義母様はジークを抱きかかえて、腕の中で誉めちぎる。

 お義母様も孫には弱いのかしら?
 私はツリメーノ公爵家の執事に話し掛けた。

「ツリメーノ公爵家の使用人さんたちにジークの心を鍛える訓練、お願い出来ないかしら?」

 すると、メイド長が出て来て私に頭を下げてきた。

「クラーラ様、どうかご勘弁を!このように愛らしいジーク坊っちゃまを罵るなど、私どもに出来るはずもありません!」

「そんな……。」

 帰り道の馬車の中、無邪気に「ぷふぁーフェクト、ぷふぁーフェクト!!」と繰り返す我が子を抱いて家に帰った。



 帰ってきたディに、ジークが鏡に映る自分を見て『ぷふぁーフェクト』と呟くようになったことを伝えた。
 彼に相談しても
『俺の息子はぷふぁーフェクトだからな。』
 そんな答えしか返ってこないかと思っていた。

 なのに

「そうか……分かった。ジークが身の程に合った振る舞いを身に付けられるように、これから二人で協力していこう。ぷふぁーフェクトは直らなくても、要は一人の女性を愛し続ける素晴らしさをジークに伝えればいいんだろ?」

 ディはこう言って私の手を握ってくれた。
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