殿下、私も恋というものを知りました。だから追いかけないでくださいませ。

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新年(R18)

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※後半がR18です。
 
 ルフォンス領では年末年始の三日間、盛大なお祭りが催される。
 各地でステージが設けられ、そこではプロから素人まで様々な人が歌やダンスを披露する。そのステージは新年を告げる鐘の音が聞こえるまで続き、年が明けると同時に人々は寒中水泳や花火を見るために海外沿いに向かって移動する。

 独身の男性は松明を持って海岸沿いを練り歩くという伝統行事もある。
 夜の闇に光が溢れるその夢幻的な夜景は観光客に人気があって、年末年始はルフォンス領にとっての稼ぎ時。

 もちろんクロヴィス様もずっと準備で忙しかった。観光地の警備の強化や火事に備えての消火魔導具の設置。寒中水泳の行われる海岸には医療隊の派遣。
 
 年末忙しかったのは私も同じ。
 ルフォンス領で伝統的に食べられているアーモンドクリームの入ったパイを焼いて使用人たちに配った。

 新年が明けると同時にそのパイを食べ、中に陶器の人形が入っているとその年は幸運だと伝えられている。オーブンに入れて焼く時に、人形の入ったパイはバラバラになってしまうから、私にもどれが幸運のパイかは分からない。

 その年最後の日の夕方に使用人たちにパイを配り、一年の働きを労う。

 全員にパイを配り、その後、三歳になる息子のロニーを寝かしつけてから漸く一息ついた。

「ロニーは?」

「私と一緒にパイを配る時はしゃいでいたから疲れたんだと思うわ、直ぐに寝ちゃった。今日はお昼寝も出来なかったから……」

「そうか……」

「レイ、お疲れさま。忙しかったろ?」

「クロヴィス様こそ、お疲れ様です」

 彼も年越しの準備を終えてようやく時間が出来たみたい。ここ2~3日は忙しくてゆっくり会話する時間も無かった。

 ここからはやっと二人の時間。

 湯浴みを終えて寝室でくつろいでいると、クロヴィス様が珍しいボトルを持って入って来た。

「レイも少し飲むか?」

 クロヴィス様は綺麗な赤い飲み物の入ったグラスを私に見せながら僅かに首を傾けた。

「お酒……ですか?」
「ああ、これならレイでも飲めるかと思って……」

 私はワインが苦手でいつもほとんど飲まない。
 あの渋みや独特の匂いが苦手だった。
 でも、そのグラス飲み物はワインとは違うみたい。ガーネットを思わせる透き通るような赤で、ちょっと美味しそうにも見える。

「はい。飲んでみます」

 グラスに注いでもらうと、ベリーのような甘酸っぱい香りが鼻腔を擽る。

「甘い匂い……」 
「ザクロのリキュールだ。飲みやすいが弱くは無いぞ」

 口に含んでもアルコールのツンとした刺激はほとんど感じない。

「……おいし……い」

「そうか、良かった」
 
 クロヴィス様を見ると、彼は安心したように優しく微笑んでくれた。

「これからは一緒に飲めますね」
「ああ」

 私はブランデーやワインが飲めないからクロヴィス様はいつも一人でお酒を飲んでいた。けれど、これからは一緒に飲めそうで嬉しくなる。 

 クロヴィス様はわざわざ私のために用意してくれたのかな?
 そう思うと、頑張りたくなって……。私はグラスのお酒を一気に飲み干した。

「ん?レイ?」

 一気に飲むとちょっとクラっとする。でもそれすら心地よく感じた。

「ふわふわしますー、きもちいー」

「レイ……もう止めた方がいいかな?」

 彼は困ったように微笑んで私のグラスを取り上げてしまった。
 え?どうして?

「クロヴィス様?」
「……ぁ……っ」

 グラスを取り戻そうと手を伸ばしてクロヴィス様を見上げると柔らかく唇が重なった。

「んッ……」

 舌を奥まで差し込まれ、口蓋を舌先でなぞられる。淫らに粘膜を擦り合わされて腰が自然と揺れてしまう。
 苦しくて涙目になりながらクロヴィス様を見ると、彼はちゅぷっと微かな水音を鳴らして唇を離した。

「目が潤んでる」
「え?」

 クロヴィス様は私の身体を抱き上げてベッドに横たえると、私の腰の辺りに跨って上着を脱いだ。

「俺も我慢してたからな……」

 そのまま私の夜着を脱がせると、彼は舌なめずりしながら飢えた獣のような瞳で私を見下ろす。いつもより強引な彼を見て、ちょっと酔っているのかな、なんて思う。

「ン……っ」 

 まるで食べるように唇を食まれる。大きな舌で私の口の中はいっぱいいっぱい。逃げようもない強引な口づけなのに、その動きは丁寧で優しい。口腔粘膜を味わうように舐め尽くし、同時に彼の手は私を宥めるように肌の上を滑る。擽ったくて、焦れったくて……
 私は息も絶え絶えになって、縋るように彼を見た。

「何?その目。レイ、誘ってる?」

 目の前にある大好きな人の瞳には情欲の炎が揺らめいていた。
 これは危険かも……。  
 朝まで寝られないパターンだ。

「やッ……誘って……ない……けど」

 そんなことは嘘だ。

 お酒でふわふわした頭はクロヴィスの肌の感触を求めている。今、もっとくっつきたくて仕方がなくて、彼の身体にギュッとしがみついた。

「けど……なに?」

 ぴったりと重なった肌から低い声が響く。表情は見えない。けれど、優しくてちょっと意地悪なあの顔で笑っているのだろう。
 
「ギュッとしてて」

 フッと短く息を吐き、クロヴィス様が私を強く抱きしめる。すっかり慣れた彼の匂い、その体温。
 この身体の中に溶けちゃいたいって、いつも思う。そうしたら離れなくてすむのに!

「クロヴィスさま……すき。だーい好きっ!」

 分厚い胸に顔を埋めたままそう言うと、彼が息を呑むのが分かった。
 そして直後に強く唇を吸われた。今度は貪るような容赦のない口づけ。

 背中に回された手が不埒に肌を這い、背筋がゾクゾクと粟立つ。口腔内をたっぷりと掻き回され、頭の中はもうグズグズだった。
 早く欲しいなんて淫らな想像をしながら、クロヴィス様に腰を擦りつける。
 そんな私のあさましい気持ちなんて、彼はお見通しで、クスリと笑う気配がした。
 舌で胸の頂きを嬲りながら、手は下半身に伸びていく。下着の薄い布の上からその合わさを指でなぞられ腰が動いてしまう。
 布の上からでもはっきりと濡れているのが分かるぐらい、もうそこはぐちゃぐちゃだった。
 クロヴィス様は指先で敏感な粒をくるくると擽ると、トントンと弱い力でその先端を刺激する。

「ぁ……ぁ……ン……」

 背筋に愉悦が走り、モゾモゾと足を擦り合わせた。正直言って、もっと強い刺激が欲しい。
 だけど、クロヴィス様は私がどうして欲しいのかなんてきっととっくに分かってる。
 彼は決定的な刺激をくれないまま、焦らすような動きを繰り返した。
 
「もう、とろとろだな」

 もう限界……。クロヴィス様は私の下着を足から抜き取り、かばりと足を開いた。恥ずかしい部分を観察され、彼の落ち着いた冷静な声がなおさら羞恥を煽る。

 秘所に指を挿れて掻き回されると、淫靡な水音が静かな寝室に響いた。

 もう、恥ずかしくて目を開けられない。
 両手で顔を隠しながらも、身体はクロヴィス様の愛撫に素直に応じる。
 彼はもう私の身体を隅々まで知り尽くしていると思う。
 
 膣襞を擦りながら、淫豆を舐め転がされ否応なく身体が昂っていく。逃げたくても、しっかりと太腿を固定されればその淫らな快楽を甘受するしか無くて……。絶頂が近くなってお腹の奥がキュンキュンと収縮を繰り返しーー

「あッ……あッ……っ……アアアッ!!」 

 ジュッと淫豆を吸われ、腰が大きく跳ねた。クロヴィス様に散々教えこまれた絶頂の波。頭の中に光がぱちぱちと弾けて視界が白み、自分の意志とは関係無く大きく痙攣するように身体が跳ねた。
 

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