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十、ルディさんのダダ漏れる色気?

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 ライラさんは国外追放処分となり、ジャスミン様は彼女の生家に身柄の引き取りを要請した。

 けれど、彼女の家族はそれを拒否し、ライラさんは前科のある身寄りの無い女性が集う作業所に身を寄せることになった。
 母国でもかなりのトラブルメーカーだったらしく、義兄のアイザックさまは顔を見たくないと吐き捨てたそうだ。






「ロゼッタ、ごめん。僕……ライラに騙されてたんだ。ようやく目が醒めたよ!」

「そうですか……」

 フェルが会いに来て私に頭を下げるけれど、もう今更どうでもいい。

「もうすんだことですし、私は怒ってないので、気にしないでください」

 出来れば二度と顔も見たくない。
 背を向けて去ろうとした私の手を引っ張り、フェルは情けなく縋る。

「お願いだ、ロゼッタ。こ、婚約解消を無かったことにしてほしい。ぼ、僕……本当に困ってるんだ。」

 そんな事言われても……。自分で何とかしてほしい。
 前世の私ならここでビンタしてたかも。
 だけど、ここで強く手を振り払うことが出来ないのが、貴族。
 ここは王宮の中庭だし、こんな場所で目立つようなことはしたくない。

「手を離して」  

「いやだ。手を離したら、ロゼッタは行ってしまうんだろ?もう一度僕の婚約者になるって言ってくれるまで離さない。僕の事、まだ好きだろ?お願い、助けてよ」

「もう好きじゃ無いわっ!離してっ!」

 強く手を引かれ、思わず大きな声がでた。
 すると、フェルの顔色がサッと変わり、見たことの無いような険しい表情になった。
 あっ、こいつ、キレた。ヤバっ。

「ぼ、僕が下手に出てるのにっ、いい加減に分かれよっ。このおーーっっ」

 逆上したフェルが私に向かって手を上げた。
 あっ、
 殴られるーー

 すると、フェルの身体が突然浮いて、フッと空中で消えた。

「……えっ」

 突然訪れた静寂。
 周囲を見回すけれど、そばには誰も居ない。






 それからーー

 私がフェルの姿を見ることは二度と無かった。










 




 今日は「セイシュ」が飲めるいつもの居酒屋で飲んでいた。たまにはバーもいいけど、やっぱりおつまみメニューの豊富なこの店が一番落ち着く。

 私は両隣を釣り好き兄弟に囲まれ、釣り竿自慢を聞きながら飲んでいた。

「あっ、ルディさんっ!」

 店に入って来たルディさんに気が付いて、手を振る。相変わらず威圧感のある容姿。デカくて強面なのに、私には笑顔。
 最近、やけに格好良く見えて困る。
 
「おお、ローガン」

 ルディさんは眼力で、左隣に座っていた竿自慢兄さんをどかすと、私の隣に座った。
 すると空気を察してか、右隣にいた兄さんもそっと立ち上がる。

「何、食べてんだ?」

 私の目の前には、店主からのサービス品。前のお客さんが注文したけど、仕事の呼び出しがあってキャンセルされたやつがあった。

「……これ?んー」

 味も見た目もタコの唐揚げだけど……

「『タコカラ』です」

 私達のやり取りを聞いていた店主が、メニュー名を教えてくれた。

 なんだ、やっぱりタコの唐揚げじゃん。
 この世界って、他にも日本人の転生者いそうだよなー。ネーミングとか、色々……。

「何だコレ、ぐにゃぐにゃするな」

 ルディさんは、「タコカラ」を噛んだ瞬間、ちょっと顔を歪めた。

「あれ?ルディさん、『タコカラ』苦手ですか?」

「ああ、食感がちょっと……な」

 そうだ。日本でも、この食感苦手な人って結構いた。

「俺には「サシミ」をくれ」

 ルディさんは綺麗に盛り付けられた「サシミ」を食べながら旨そうに「セイシュ」を飲む。
 この人も、お酒好きだよなー。

 ルディさんは「サシミ」をあてに、私は「タコカラ」をあてにお酒は進む。このタコカラの下味、生姜らしき薬味が効いてて美味しいのよね!
 時々ルディさんに「サシミ」を貰ったり、「カラスミ」を齧ったり。

 ルディさんは冒険者のくせに、食べる仕草がとても綺麗で色気がある。時々、男同士と忘れて見惚れてしまうのだ。
 今もお猪口を傾ける仕草をじっと見ていたら、クスッと意味有りげに笑われた。

「何だ?俺に惚れたのか?」
「まさか!男同士っスよ!」

 見ていたことがバレて、恥ずかしくて誤魔化すように酒を飲んだ。
 顔が熱くて胸がドキドキするのは、熱燗のせいだと信じたい。

 うーん、これ以上、この人と一緒に過ごすのは、ヤバいんじゃなかろうか?

「今日はもう帰るよ。お会計!」

 私は程よく酔いが回ったところで、席を立った。



 
 
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