異界からの救世主が来て、聖女の私はお役御免です。

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聖女としての日々

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「聖女様、お祈りの時間でございます」

「ええ、ありがとう。今行くわ」

 私の名前はリズリーネ・オルフェ。ここラハール王国の聖女。
 この国の結界を維持するために、守護水晶に魔力を納める祈りの儀式を行うのが毎日の務めだ。

 

 大陸の南に位置するこのラハール王国は、比較的温暖な気候で自然豊かな国。けれど、瘴気に覆われた魔の森が近くて魔獣被害が多く、昔は人が住めないと言われるほどの場所だった。

 建国時に初代国王に仕えていた大聖女様が、巨大な結界でラハール王国全体を包み込み、瘴気と魔獣の侵入を防いだそうだ。
 その結界は守護水晶に聖魔力を注ぎ続けることで今でも維持されている。
 その役目を担ってきたのが歴代の聖女。

 ここはラハール王国内の首都にある、もっとも古い建造物の一つ、アルゴス神殿の最奥の部屋。

 私は8歳の魔力測定で聖女と認定されてからずっとここに住んでいる。年端のいかない少女には勿体無いほどにだっだ広いこの部屋で一人、家族とは離されて暮らしていた。

 始めは寂しくて泣いてばかりいたけどもう慣れた。

 孤独に耐えながら、毎日祈りの儀式を行っていた。

 飾り気の無い真っ直ぐな廊下を進むと祈りの部屋がある。そこには、光の祭壇と呼ばれる場所があり守護水晶球が宙に浮かんでいた。
 何度見ても不思議な光景。
 建国時に大聖女様が残した不思議な石は、水晶というには何だか色んな色が混じっていて、奇妙な色合い。見ていると吸い込まれそうでちょっと怖い。
 
 


 

 
「リズリーネ様が聖女になられてからは、魔獣被害は少なくなっており、辺縁の土地の民たちが喜んでおります」

「そうね。時々辛い日もあるけれど、頑張らなくては。辺縁に住む人たちにとっては死活問題だものね」

 前聖女様は魔力が少し弱かったらしい。結界に綻びが出来ていたために、小さな魔獣たちが時々結界の穴から侵入してきていた。小さくても魔獣。農産物への被害は甚大だった。
 魔獣が出ると、王宮から兵士が派遣されて討伐はするが、その後の農地は荒れ果ててしまう。

 
 10年前は、辺縁の地に住む人々はとても貧しい生活をしていた。けれど、私が聖女になった後から少しずつその結界の綻びは修復されていて、ここ数年間魔獣被害はほとんど無い。

 私が祈りの儀式を終え、部屋を出ると、今度は王宮侍女が迎えに来ていた。

「お祈りの後のお妃教育は大変でしょうが、今日もお願いいたします」

「ええ。分かっているわ」

 私は聖女であると同時に、アルフレード王太子殿下の婚約者でもある。

 祈りの儀式が終わるとすぐに隣接する王宮に行ってお妃教育を受けていた。

 アルフレード殿下とはそれほど交流があったわけでは無い。ただ、殿下本人が私との婚約を強く望んだとお父様から聞いていた。   

 私の出自は伯爵家。王家の意向に逆らえるはずも無く、私はアルフレード殿下の婚約者になった。
 殿下はとても無口な人。
 私は彼に愛を囁かれたことも無いし、婚約者らしくデートをしたことも無い。

 10年間、神殿で時々お茶を飲む程度の交流をずっと続けていた。

 私は、聖女にだって、王太子殿下の婚約者にだって、望んでなった訳では無い。この生活に疲れていたし、自由を求める気持ちもある。

 そしてーー

 19歳を迎えた三日後、私は突然、聖女の役目からもお妃教育からも開放されることになった。
 
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