異界からの救世主が来て、聖女の私はお役御免です。

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婚約解消になりました

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「リズ、今度ティーパーティーをするからドレスを仕立てましょう。私はいつも同じ店の物を選ぶのだけれど、リズは自分の好みを見つけるといいわ。明日一緒に買い物に行きましょうね。他にも服を揃えてしまわないと……」

「はい。お母様と一緒にお買い物なんて嬉しいっ」

 神殿では、予め用意された物しか着ることが出来なかったから、自分で選ぶこと自体が嬉しい。
 お母様と王都の大通りを歩いてショーウィンドウに並んでいるお洒落な服を見ていると、気分が明るくなる。
 可愛いリボンに花柄のワンピース、お花のついたカラフルな帽子、シフォンのストール。

 神殿ではいつも足首までのシンプルな白のワンピースにローブを羽織っていたから、こんなに色々自分で選べるなんて嬉しかった。

 色んなお店に入って服を試着して、お母様が当面必要な服を揃えてくれた。

「お母様、ありがとう。すごく楽しかったわ」
 
「私もよ。男は着るものも地味だからね。いつも、流行りのデザインを見るたびに、『リズに着せてあげたいな』って思っていたのよ。こんな良い日は久しぶりよ」

 人気のカフェに行って焼き菓子とケーキを食べてから家に帰ると、お父様が待っていたみたいで、エントランスで私達を出迎えてくれた。

「おかえり、二人とも。ちょっと話があるんだ」

 お父様はちょっと困惑した表情。私とお母様は顔を見合わせてから、お父様の書斎へと向かった。

「今日陛下に呼び出されてな。言い難いんだが……リズとアルフレード殿下との婚約が解消されることになる」

「婚約を……解消ですか?」

「ああ、アルフレード殿下は救世主様と婚約するらしい。示談金は払うそうだ」

「私、何かまずいことでも?」

 婚約解消なんて、そう頻繁にあることでは無い。
 私は何か殿下に嫌われることをしただろうか?

「いや、リズに瑕疵は無い。ただ、アルフレード殿下は救世主様と婚約することになった。リズ、すまないな。早急に次の婚約者を探すことにしよう」

「いえ、お父様。急がなくても構いません。少しゆっくりしたいので……」

「そうか?リズならいい縁談がいくらでもあるとおもうんだがなぁー」

 お父様は少し残念そう。
 けれど最近は貴族令嬢でも20歳前後に婚約を結ぶことだって珍しくは無い。それに……私もすぐに気持ちを切り替えられそうに無かった。






 私は聖女になってからずっと神殿に住んでいて、普通の令嬢のように夜会やお茶会に出席することは無かった。祈りの時間は朝が早いし、お妃教育もある。
 
 どこにも行けないから、空いた時間は趣味の読書をして過ごしていた。そして、年頃になってからは、恋愛小説のような恋に憧れていた。

 現実にも胸躍るような恋ってあるのかしら?
 小説の世界は作り話だから大袈裟?
 それとも、本当に小説に出てくるヒーローみたいな素敵な人がいるのかも。
 ……なんて、
 いつか出会う恋の相手に期待していた。

 婚約が決まって、初めて殿下と顔を合わせた日

 仏頂面で現れた殿下は、愛想笑いすらすることは無かった。

 初めて二人きりでお茶を飲みながら話した日のことをはっきりと覚えている。
 婚約して初めての二人きりでの会話。
 ほんの少しだけ、甘い口説き文句を期待していた。
 
 だけど、アルフレード殿下はほとんど喋らないし、笑わない。
「女性を楽しませるような話は苦手なんだ」そう言っていた。

 殿下とのお茶会はまるでお妃教育の続きだった。
 各地域の特産品や、風土、歴史……。恋人同士のような甘い会話なんて皆無。
 少し不安になって
「私との時間は退屈じゃありませんか?」

 そう聞いたら、殿下は顔を上げることもなく

「いや、そんなことは無い」

 そう言っただけだった。
 その言い方も表情も本当に無愛想で。私は嫌われているのかと思ったほどだった。

 そのうち殿下が王国の歴史に興味があることが分かって……。婚約者同士のお茶会だというのに、彼は歴史書を開いて私に王国の歴史を説明してくれる。

 小説の中の恋人同士の甘い会話なんて無かったけど、話が途切れた瞬間、ふと視線を感じて殿下の方を見ると、目が合って……。
 何故か殿下は急いで目を逸らせるから。
 彼のぶっきらぼうに見える表情は照れ隠しなのかも、なんて期待するようになった。

 低くて艶のある彼の声を聞くのは好きだった。
 私とは違う、腕の筋肉のラインを見て、ちょっとドキドキしていた。

 いつか、本当に思いを通わせる日がくるといいなと思っていたのに。



 
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