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実家
しおりを挟む「おかえりリズっ!!」
オルフェ伯爵家に戻ると、両親と兄が私を出迎えてくれた。
あまりに慌ただしく神殿を追い出されたから、実家に連絡してあるのか心配だったけれど、ちゃんと家族は私を出迎えてくれた。
久しぶり戻った実家の屋敷は記憶より少し小さくて、出迎えてくれた使用人たちも幾分年をとっていた。
それだけ長い間離れていたのだろう。
「ごめんなさい。突然戻ってくることになって……」
「何を言ってるんだ。謝ることなど無いさ。娘が家に戻って来れるようになったんだ。これ以上嬉しいことは無い。リズリーネ、君は聖女としての役目を立派に果たして来たんだ。胸を張って戻ってくれば良い」
私が頭を下げるとお父様はポンっと優しく肩を叩いた。慈しみに溢れた視線と言葉は、じんわりと胸の中を温かくしてくれた。
「そうよ。リズ。貴女は良くやったわ」
そう言うと、母の柔らかな胸に抱きしめられた。
家族ってやっぱり良いな。
18歳になった今でも母の匂いはホッとする。
神殿で私は大切に扱われてきたし、付き人たちもとても親切だった。だけど、親の愛情は全然別物。
包み込むような優しさを感じるのは、やはり両親からだけだ。
10年以上過ごした神殿は、出ていく時には見送りも無くてとても寂しかった。
まあ、神官長に神託があり救世主が現れるなんて出来事は歴史書でも読んだことが無い。舞い上がってしまうのも当然だと思うけど。
その夜は家族揃っての久しぶりの晩餐。
「リズ、好物は変わって無いかい?今日は料理長がリズの好物をたくさん準備してくれたよ」
「ありがとう、兄さま。神殿ではお野菜と果物ばかりだったから……正直何が好きだったか、忘れてしまったの」
「そうか……。俺は小さなリズが鴨肉のローストにマンゴーソースを掛けたものが好きだった記憶があるが……」
「うーん、覚えてないわ」
「そうかい?いつも俺の分も分けてあげてたのに?」
「ごめんなさい。ふふっ、でもお肉なんて久しぶりだわ。神殿ではお肉もお魚も禁止されていたから……鴨肉なんて楽しみっ」
神殿でも料理はたくさん並んでいたけど、味付けも薄いし、お肉もお魚も無くて……
「美味しいっっ」
舌に感じる油や塩気が美味しくてたまらない。マンゴーのソースは甘じょっぱくて鴨肉に油を口の中でさっぱりと包んでくれた。
「ああ、美味しい。幸せ~」
「思い出した?」
「ううん、覚えてないわ。だけど、美味しい!好きな味だわ」
「そうか、良かった。料理長も喜ぶよ」
「ええ!後でお礼を言わなくちゃ!」
家族4人揃った晩餐は、私が一人で喋っていた。
離れて暮らしていた10年分、たくさん話したいことが溜まっていたのかもしれない。
両親もお兄様もずーっと聞き役。神殿では物静かなんて言われていたけど、家族相手だと話をするのが楽しかった。
「そうだ、リズ、明日からしばらくお妃教育は中止すると連絡があった」
「何かあったのかしら?」
「突然救世主が現れたものだから、救世主をどう扱うか、王宮でも大騒ぎになっているようだ」
「そうなんですね。でも、国が平和になるのなら良かったです」
「ああ、そうだな。私も愛する娘が戻ってきたし、嬉しいことばかりだ」
お妃教育もお祈りの儀式もないなんて嬉しい。
朝早く起きなくていいから、私はお母様と一緒に夜更かししながら、久しぶりにのんびりと過ごした。
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