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逆上
しおりを挟む「誰だ!?」
「殿下っ!!」
走って来たのは王宮騎士。相当急いで来たのか、汗だくで呼吸も荒い。
「た、大変ですっ!!き、救世主様が、守護水晶を破壊しました」
「なにっ!!それで、救世主は?」
「それが、行方不明でして……」
「結界は?」
「その……神官長の話では、聖魔力を供給するための媒介となる水晶が無いと、結界は3日間ほどしかもたないと……」
「分かった。すぐに王宮に戻るっ」
アルフレード殿下が、騎士と共に王宮へと戻ろうとした、その時ーー
「何よっ!どうしてアルがここに居るの?やっぱり元婚約者に未練があるのねっ!」
「救世主……」
救世主様はキッと私の方を睨んだ。
噂通り小柄な女性。手には小さなナイフが握られていた。
「ザック、救世主を捕縛しろっ!」
「はっ!」
「えっ……?アルは私の婚約者でしょ?浮気した挙句に、私を捕まえるって?」
ザックと呼ばれた騎士が救世主様に近づいて、ナイフを持った腕を取り押さえようとすると、救世主様はナイフを振り回した。
「触らないでっ!!そのリズリーネって女の力では、結界を守るのが精一杯だったんでしょ?守護水晶が壊れた今、私の力が無いと、この国は困るんじゃないの?私の力を全部使えばもう一度結界を張る事が出来るかもしれないわ。それでも私を捕まえるつもり……?」
救世主様はザックにナイフを向けると、そう脅した。
脅されたザックは、殿下を見て視線でどうするかを確認し、殿下が首を小さく振ったのを見て頷いた。
そこへ今度は何人もの神官を引き連れて神官長が駆け付けてきた。
「救世主様!やはりここに……。お願いです。どうか、今一度結界をっ」
「ふふっ。じゃあ、ここにいるリズリーネって女を斬ってよ」
どうして救世主様は私をこんなに憎んでいるのだろう?
訳が分からない……。私は噂とは随分違う救世主様に驚いていた。こんな横暴な人が、救世主なんて。
「き、救世主様!それは出来ませんっリズリーネ様はこの国のために尽してくださった功労者。そのような不義理は出来ませぬ」
「何よ。みんなしてリズリーネを庇ってっ。みんな大ッキライ!」
救世主様が自分から視線を外した隙をついて、ザックがナイフを奪い取り、身体を押さえようとした。
「触らないでっ!!嫌よ。無理やり押さえても絶対に結界は張らないからねっ!」
そう言われ、ザックが怯むと、救世主様はものすごい勢いで彼を突き飛ばした。
「うわっ」
ザックはバランスを崩して殿下の方に倒れ、殿下は咄嗟に、ザックの大きな身体を受け止めた。
ドンっーー
「うっ」
「何をする?」
救世主様が勢いをつけて走ってきてザックに体当たりすると、殿下はそのままザックの下敷きになって倒れた。そして救世主は殿下が腰に帯同していた剣を鞘から抜き取って、私の方に向けた。
「元婚約者ってこの女キライ。美人だものね。その顔に傷でも付けばいいわっ」
殺されるっ!
私を睨んでいる救世主様の表情には明らかな敵意が見て取れた。話を聞いてくれる状態じゃ無いっ。
救世主様は持っていた剣を両手で持って大きく振り上げた。
殺されるっ、そう思って目を閉じるとーー。
「ぐあっっ」
「きゃあ!」
ドンっと突き飛ばされ、地面に倒れて目を開くと……。
「殿下っ!!」
殿下が私の方に向かって倒れるのが見えた。
崩れ落ちる彼の向こうには驚いた顔の救世主様が。
「殿下ーーっ!!」
騒ぎを聞きつけた、うちの使用人や門番たちも此方に向かって走ってくる。
「わ、私は悪く無い、私のせいじゃ無いわっ!!こ、こんな深く斬るつもりなんて無かったもの。ア、アルが急に飛び出してくるから……」
力なくうつ伏せに倒れた殿下の背中は大きく斜めに引き裂かれていて血が溢れていた。
傷が深いっ
「い、いやーーっ!!殿下っ!」
私はしゃがんで殿下の傷口に手を当てて聖魔法を掛けた。でも、いくら魔法を掛けようとしてもフワリと魔力が消えてしまう。
その間にも傷口からは血が溢れてくる。このままじゃ、殿下が死んでしまう
「直ぐに王宮の侍医を呼んでください。この剣の傷には聖魔法は効かない」
「殿下、殿下、!!いやっ!死なないで!」
「で、殿下っ!!なんてこと……。早く、医師を呼べっ!!殿下っ!しっかりなさってくださいっ」
呆然としていた救世主を騎士たちが取り押さえた。自分のしたことがショックだったのか、彼女はもう抵抗しなかった。
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