異界からの救世主が来て、聖女の私はお役御免です。

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異変

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※少し時間が遡り、アルフレード殿下がルナに刺された後からです。





 殿下は王宮の医務室へ運ばれて直ぐに傷の手当てを施された。

 話によると、王族の剣は特殊で、その刀傷は治癒魔法が効かない上に、暗殺者がその場から動けなくなるように刃先には麻痺を起こす毒物が塗られているそうだ。

 殿下の意識はまだ戻らない。

 大きな傷だった。血がいっぱい流れていた。
 
 王族で……しかも、次期国王。
 殿下は、自分の命を一番に守らなくてはいけない立場なのに。
 私なんて庇うから……

 どうか、無事でーー

 祈るような気持ちで医務室の前に佇んでいたら、神殿からの使者がやってきた。

「リズリーネ様、申し訳ございません。至急、神殿にお越しください」

 そう言われて、馬車で神殿に向かった。
 呼ばれた理由に見当はついていた。きっと、救世主様が壊した守護水晶のことだ。

 彼女はどうなったのだろうか?救世主とはいえ、王族を害したのだ。ただではすまないだろう。

「外が騒がしいわ」

 馬車に乗っていても、街の喧騒が聞こえてくる。それも怒号に近いような、殺気立った声。

「救世主が守護水晶を破壊したことは、国民に知れ渡ってしまいました。空の色が変化して、民たちは不安になっております。神殿の方にも、結界はどうなるんだ、と詰めかけた人々が……」

 馬車の窓から空を見ると、薄い暗赤色の雲が広がっていた。夕焼けとは違う、暗くて、不吉な色。
 こんな空……今まで見たことが無い。

「救世主様は?」

「救世主は身柄を拘束し、地下牢に」

「それで魔物の被害は?」

「まだ、結界の残渣があり瘴気はそれほど流れ込んでおりません。ですがこのままでは我が国が瘴気に覆われるのも時間の問題」

「そんな……」

 まさかこんな事になるなんて思わなかった。守護水晶が無いと、この国の人々の生活全てが変わってしまう。


 神殿に入ると神官長が頭を下げて私を出迎えてくれた。

「リズリーネ様、今までの不義理、誠に申し訳ありませんでした。救世主の言いなりになった事は私の愚かさが招いた事。あとでどんな罰でも受けます。ですから再び力を貸していただけないでしょうか?」

 救世主の我儘に振り回されたのは私も殿下も神殿の人たちも同じ。
 彼女がこの国を救ってくれると信じていたから……。

「私は何をすれば良いですか?」

「リズリーネ様には及びませんが、聖魔力の高い者たちを集めました。皆でどうにか、結界を張れないか文献を調べております」

「私も調べます」

 神殿にある古い書庫。そこには建国時からの古い文献が納められていた。

「私は以前から結界はいつか崩壊すると、考えておりました。ですから、神殿にある書物は調べ尽くしたつもりです。ですが、国を覆うほどの巨大な結界を作る方法について記してある文献はありませんでした。しかし、必ず何らかの方法があるはず。私は神殿に戻ってもう一度書物を調べます」

 神官長が長年調べても発見出来なかったのに、そんな急に見つかるかしら?

 知りたいのは初代聖女が結界を張った、その詳細な方法について……。

 もしかして……?

「神官長、私は王宮を調べてきます。神官長は神殿をもう一度探してみてください」

 私達は手分けして結界魔法について調べることにした。







「リズリーネ様、分かりましたか?」
 
 一晩中調べたあと、私は神殿に戻ってきた。
 神官長たちも徹夜で調べていたらしい。その表情は疲れきっていた。

「ええ。初代聖女様が結界を張った方法が分かりました」

 それが見つかったのは、初代国王陛下の日記から。

 王宮に王族のみ入れる書庫がある。お妃教育を受けていた私はたまたまその書庫の存在を知っていた。
 ほとんどの人は知らない、王宮の奥にあるひっそりとした部屋。私は陛下に頼んで、その書庫を調べさせてもらったのだ。

 そこに古びた日記があった。  

 初代国王の日記は私的な記録として保管されていた。けれど、そこには当時の聖女が命を懸けて結界を張った方法が詳細に書かれていたのだ。

「おお!なんとっ、そんな場所に。そうですか。皆で協力して同じようにいたしましょう。してその方法とは?」

「魂を……」

「え?」

「初代聖女様はこの国の子供たちが平和に暮らせるように自身の魂を結晶化し、それを媒介として巨大な結界を張ったそうです」

「何と……では水晶だと考えていたものは、初代聖女様の魂」

 そう。
 初代聖女様は、自分の命と引き換えにして巨大な結界を完成させた。

「考えている暇はありません。今はこの方法しか無いのですから。私は文献に書いてあった手法を使って水晶を作ります。そして……後のことはお願いします」

「で、ですが……」

「よいのです。余計な事を考えたり、両親に話したりすれば、私に未練が残ります。このまま、祈りの部屋へ行きましょう」


 
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