異界からの救世主が来て、聖女の私はお役御免です。

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救世主は情緒不安定?

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 ヤール(神官)視点

 救世主として祭壇に現れたのは、身体の小さな少女だった。年齢を聞くと24歳だと言うが随分子供っぽく見える。

 跪く俺達を見てニコッと笑うと、救世主様は
「私が神様にもらった力でこの国を助けてあげる」そう言った。

  救世主様の聖魔力は強く、結界の綻びをたった1回の祈りの儀式で修復してしまった。これで、瘴気による農作物の発育不全も無くなるだろう。辺縁の土地に住む民たちの生活も楽になる。
 
 神様の神託通り、救世主様がこの国を救ってくれたことに、神官長も大喜びだった。

 よく笑いよく喋る、そんな明るい性格の救世主様が来てくれて、その時は、俺達神官も神に感謝した。

 けれど、救世主様は神殿での生活に慣れると少しずつ我儘になっていった。

 機嫌の良い日には、祈りの儀式も滞りなく終わらせてくれるが、気分が良くない日には勝手に儀式を中断することがある。
 気に入らない神官が居ると、儀式に集中出来ないなどと言うので、俺達神官は彼女の機嫌を見ながら常に動くようになった。だから、神殿内は常にピリピリした雰囲気。

 こんな事は今まで無かった。

 そして救世主様はアルフレード殿下に目を付けた。
 何と、前聖女であるリズリーネ様との婚約を無理やり解消させたのだ。

 その場に居た神官たちは『まるで王国を盾に取った脅迫だ』と言っていた。

 急に神殿を追い出された事といい、いつも穏やかなリズリーネ様も今度ばかりは神殿に苦言を仰るだろうと思っていた。
 前聖女をこのように蔑ろにして良いわけは無い。
 しかし、予想に反して、オルフェ伯爵家はその事に関して何の反応も見せなかった。







「スマホも無いし、インスタも見れないし、もうこんな場所嫌だわ」

 神殿に来てから1ヶ月も経つと、救世主様はこの生活が限界のようだった。
 救世主様が元々住んでいた世界とは違って、この世界では娯楽が少ないことに不満があるのだろう。

「救世主様、『スマホ』や『インスタ』はありませぬが、どうでしょう?街に出て散策を楽しんでみては?」

 神官長がそう提案するが、救世主様はそれでは納得せず、友人が欲しいと言い出した。

 神官長は神殿のスタッフとも話し合い、同じ年頃で話の合いそうな令嬢たちを招集してお茶会を開いた。

「可愛いお菓子!まるで上流階級のお茶会みたいねっ。素敵」

 始めてのお茶会でははしゃいでいた救世主様だったが、招待した令嬢たちとの会話が噛み合わないと途端に不機嫌になった。

「何よっ!全然話が合わないしっ。私、あんな澄ました人たち嫌いっ。自慢話ばっかりして、頭おかしいんじゃない?あそこの貴族かどうのって、そんな話つまんないわ」

 どうやら救世主様は自分の知らない話題を出されることをひどく嫌うらしい。社交界の話題が気に入らなかったようだ。

 彼女の話相手など、神殿の職員に務まりそうなものだが、話を頷きながら聞くだけの人間が相手だとつまらないと言う。

 救世主様が欲しいのは、お互いに打ち解けて、悩みを聞いたり励ましたり、気軽な会話で笑い合うことが出来る友達だと言うのだ。

 俺達神官は救世主様の機嫌を損ねてはいけないから、打ち解けた話など出来ない。

 それでも、お茶会でただ一人辛抱強く救世主様の話を聞いてくれたカッシーニ伯爵令嬢の事は気に入ったようで、今度一緒に買い物に行くことを約束していた。

「良かった!貴女は優しいし仲良くなれそうだわ。今度からは貴女だけをお茶会に誘うわね」

 決して機嫌を損ねてはいけない相手と長く話をするのは疲れるものだ。カッシーニ伯爵令嬢は神殿を出るとき、げっそりした様子で、自分の連れてきた侍女と何やら深刻な表情で話し込んでいた。


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