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ずっと好きだった
しおりを挟むアルフレード殿下視点
俺がリズリーネに初めて会ったのは9歳の時。
その時俺はまだ第1王子としての自覚がなくて、授業をサボっては家庭教師たちを困らせていた。
だけど、リズリーネはその時既に聖女として、神殿で自らの勤めを果たしていた。
神官たちを従えて神殿を歩くリズリーネは、俺には眩しいほど大人っぽくて、凛として見えた。
俺と同じ年。幼い頃から両親と引き離され、重圧を背負わされた少女は、愚痴も言わず淡々と聖女として国に尽くしてくれていた。
俺は急に自分が恥ずかしくなって……。
王宮に戻った俺は、父上にリズリーネと婚約したいと申し出た。相手は聖女。両親も反対はせず、すんなりとリズリーネは俺の婚約者になった。
子供だった俺はあまりにも浅はかだった。
俺の我儘で結ばれた婚約は、結果的に彼女に大きな負担を強いた。
リズリーネは聖女として務めを果たしながら、お妃教育も受けなければならない。
楽しい少女時代を奪ったような気がしていた。
聖女として地位も、王太子の婚約者という立場も、全て彼女の望んだことではない。けれどリズリーネは一度も俺に不満をぶつけることは無かった。
俺は後ろめたくて……。
いつか、堂々とリズリーネの隣に立てる男になろう。
そう思って、王太子として任された執務を懸命にこなしていたが……。
神殿で歩く彼女の疲れた様子を見ると、どうしょうもなく不安になり、罪悪感が募っていく。
だけどーー
それでもーー
俺はリズリーネが好きだった。
婚約してからは、時々二人だけのお茶会でリズリーネとの交流を深めていた。本来なら二人の距離を縮める時間。だけど、聖女である彼女に対して色恋の話など不浄な気がして、俺は顰めっ面をしながらまるで家庭教師の構述のような話ばかりをしていた。
それでもリズリーネは退屈そうな素振りをすることは無かった。
王国の歴史について話をしながらこっそり彼女の横顔を見る。クセのない銀髪がさらりと肩に落ちて揺れる。風が運ぶ彼女の匂いは、百合の花のように清らかで……。手を伸ばして触りたくなる気持ちを必死に抑えていた。
☆
神官長に神託があり、救世主が現れた。そしてその救世主ルナは、俺との婚約を望んだ。
王国を守るために、俺に選択肢は無かった。
これでリズリーネは、聖女や王太子の婚約者としての責務から開放される。
その方が彼女はのんびりと幸せに暮らせるだろう。
正直、そう思った。
救世主るなは自分の立場を最大限に利用し、神殿に仕える人々や私に我儘を言った。
俺達が拒否出来ないことを知っているのだ。
だがこれは、俺が今までリズリーネにしてきたことと同じ。報いだとも思った。
自分の気持ちに蓋をして、俺は生涯王族として救世主ルナに従わなければならないのだろう。
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