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或る医者の証言②
しおりを挟む狩猟会の日の行動を伺っても?
「指示された救護テントで待機していました」
救護テントに人は来ましたか?
「はい。貴族のご令嬢が気分が悪いと運ばれてきました。確か、カリテス伯爵家のフラヴィア様です」
診察はしたのですか?
「しました。呼吸も安定していましたし、顔色も脈も問題ありませんでした。眠いということでベッドを貸しましたね」
毒の可能性は?
「一般的に使用されるような毒物の所見はありませんでした。それに付き添っていた侍女が『お嬢様は昨日眠っていないので休ませてあげてください』と言ってましたしね。薬?……飲まされたとしても睡眠薬ですかね。安全な場所で休ませれば問題ないと判断しました」
その後は?
「その侍女がまた駆け込んできましてね。『戻ろうとしたら病人が倒れているのを発見したので診察して欲しい』と言うので、病人の所まで案内してもらいました」
その病人は誰だか分かりますか?
「名前は分からないですね。言える状態じゃありませんでしたから。お腹を押さえて、もがき苦しんでいましたよ。貴族だとは思いますね。高そうな服を着ていましたから。貴族ですよね?」
本当に病人だと思いましたか?
「それが、痛いという割には吐いた後も無いし顔色も良くて……。でもお腹が痛いって本人が苦しんでいる以上、後で症状が出る可能性もありますしね」
それでどうしましたか?
「男性をきちんと診察するためには便や嘔吐物を見る必要があります。その日は怪我人の救護のために来ていましたから、骨折や怪我の手当のための道具しかありませんでした。そのまま放置するわけにもいかずに困っていたら、病人がいると教えてくれた侍女が戻ってきましてね。『代わりのお医者様を手配したので、この方に付き添ってください』と言われました」
代わりの医者が来るのは見ましたか?
「いいえ。見てませんよ。それどころじゃありませんでしたから。きちんと訓練された侍女のようだったので、私も看護師もその侍女を信用してしまいました」
それで、その男を自分の治療院に連れて帰ったのですか?
「はい。貴族も多く参加していましたからね。万が一感染する病気だったことも考えて、治療院の方が良いだろうと考えて、治療する場所を移動しました」
ありがとうございました。
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