21 / 25
ビビアン様の反撃
しおりを挟むあー、いい天気ね。
雲がゆっくりと流れていくわー
「フラヴィア様、聞いてます?」
「……え?ああ、もちろん聞いてるわよ」
「酷いですよね、それでアンドレア様ったらその女性に貰ったブレスレットを着けて私と一緒に夜会に参加してたんですよ」
私は今、ビビアン様の愚痴を聞いていた。
公爵夫人教育はお休みだし、今日はゆっくりとしようと思っていたのに……。
ビビアン様の突撃からお話を聞き始めて1時間が経っていた。
アンドレア様が他の令嬢と続けてダンスを踊ったとか、女性からのプレゼントを受け取って自分も贈り返したとか……。アンドレア様は誰と婚約してても、その八方美人ぶりは変わらないのだろう。
「でも、婚約解消は出来ないんでしょ?我慢するしか無いわよ」
アンドレア様は決定的な浮気はしていないらしい。ただ、女性みんなに優しいだけだから、婚約破棄する事由にはならないと思う。
「そんなぁ~」
「ビビアン様はアンドレア様に自分のお気持ちを伝えたのですか?」
「何回もいいましたぁー、でも、、勇気を出して俺に声を掛けてくれた女性を無下には出来ないって言うんですよ!!」
「うーん」
何故……。
私がこんな相談に乗らなきゃいけないのかしら?
そう思う反面、ビビアン様は狩猟会で私の代わりに襲われそうになった事もあって、そんなに冷たくあしらう事も出来なかった。
ゆっくり休みたい……。どうやったらビビアン様に帰ってもらえるのかしら……。
そんな事を考えていたら、突然背後から抱きしめられた。ふわりと優しい感触に、振り向かなくてもそれが誰だか分かってしまう。
「……シリル?どうしたの?」
「今日は仕事が早く終わったから、ヴィアに一目でも会いたくて来たんだ」
自分の気持ちを自覚してから、彼と目が合うのも恥ずかしい。今振り向いたら絶対に顔が近いって分かるから振り向かないまま、言葉を繋いだ。
「ごめんね。今、ビビアン様の相談に乗っていたの」
「フラヴィア様、いいなー。シリル様ってフラヴィア様だけに優しいですものね。女の子の理想ですよ」
可愛らしい唇を小さく尖らせて、ビビアン様は頬づえを付いた。彼女は今アンドレア様の八方美人に悩んでいるから尚更そう思うのだろう。
「あーあ、アンドレア様も他の令嬢にあんまり優しくしないで欲しいなー」
はぁーっ深く溜息を吐くビビアン様にシリルは容赦しなかった。
「ビビアン嬢、早く帰ってください。僕とヴィアの時間を邪魔しないでいただきたい」
シリルってばハッキリ言い過ぎ。『帰って』とか『邪魔』とか、普通はなかなか使わない言葉だ。
「シリル、ビビアン様も悩んでいるのよ?」
私も早く帰って欲しいけど、お客様だから一応ビビアン様を庇った。
帰ってもらうには、何か良いアドバイスが出来るといいけど……。
「あっ!そうだ!ビビアン様も他の男性と仲が良いふりをして、ヤキモチ妬かせちゃえば?」
そうよ!
アンドレア様にも婚約者に蔑ろにされる苦痛を味わってもらえばいいのよ!
するとーー
「では、僕の友人たちにしばらくビビアン嬢をちやほやしてもらいましょうか?」
シリルがこんな幼稚な作戦に付き合ってくれるなんて意外だった。
「シリル、いいの?そんな事お願い出来るのかしら?お友達にもご迷惑なんじゃ?」
「いいんだ。ビビアン嬢にはアンドレアを掴まえておいてもらわないといけないからね」
この作戦が気に入ったのか、ビビアン様は急に元気を取り戻した。
「シリル様、私のためにありがとうございます」
ビビアン様がお礼を言うと、シリルは私に向けるのとはまるで違う冷たい視線をビビアン様に向けた。
「別に貴女のためじゃありません」
「え?」
まるでブリザードのような冷たさ。凍えてしまいそうだ。
「アンドレアを貴女がしっかりと掴まえておいてくださらないと、彼がヴィアの魅力に気が付いて再び婚約だなんて言い出したら大変ですから……」
何言ってるの?
「シリル?そんな事、あるはずないわ」
「ヴィア、君は殿下ですら一目で虜にしたじゃないか……あの男が間抜けで君の価値に気づかなかっただけだよ」
いやいや、殿下は虜になんてなってないからね?シリルの私への評価が高すぎて重い。
「さあ、協力を約束するからビビアン嬢にはとっとと帰っていただきたいですね」
「そんな言い方……」
「僕に言わせれば、横恋慕してヴィアの婚約者を奪った貴女が相談に来ることも非常識ですね」
「だ、だって……アンドレア様が……」
「まあ、僕としては貴女がアンドレアを誘惑してくれたお蔭で、ヴィアの婚約者になれたのですから良しとしましょう。僕の友人に貴女をチヤホヤするように頼んでおきますよ。ただし、本気にはならないでくださいね。貴女には、アンドレアをしっかりと掴まえておくという命題があることを忘れないでください」
シリルは畳み掛けるように早口でそう言うと、手際よくビビアン様を追い出してしまった。
「はあ、やっと二人きりだ」
想いを伝え合ってからの彼は更に容赦が無い。
その麗しいお顔は凶器だと思う。整い過ぎて冷たく見えるのに、目が釘付けになってしまう。だけどそんな芸術とさえ思える美麗な顔が、私にだけは柔らかく崩れる。その瞬間を見るのが大好きだ。
「今日はどうしたの?」
「今度の夜会ではお揃いの服を仕立てませんか?」
「いいの?嬉しい!楽しみだわ!」
アンドレア様とは長く婚約していたけれど、そんな仲良しアピールみたいな事した事なんて無かった。政略結婚だからと割り切ってはいたけれど、心のどこかでお揃いの服やアクセサリーには幼稚な憧れがあった。
シリルは私に似合いそうなデザインのドレスを何枚か選んでくれた。
本当に仲良しの恋人同士みたい。
私は珍しくウキウキした気分で夜会の日を待った。
107
あなたにおすすめの小説
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
悪女と呼ばれた令嬢は、親友の幸せのために婚約者を捨てた
由香
恋愛
婚約者である王太子を、親友のために手放した令嬢リュシエンヌ。
彼女はすべての非難を一身に受け、「悪女」と呼ばれる道を選ぶ。
真実を語らぬまま、親友である騎士カイルとも距離を置き、
ただ一人、守るべきものを守り抜いた。
それは、愛する人の未来のための選択。
誤解と孤独の果てで、彼女が手にした本当の結末とは――。
悪女と呼ばれた令嬢が、自ら選び取る静かな幸福の物語。
平凡令嬢の婚活事情〜あの人だけは、絶対ナイから!〜
本見りん
恋愛
「……だから、ミランダは無理だって!!」
王立学園に通う、ミランダ シュミット伯爵令嬢17歳。
偶然通りかかった学園の裏庭でミランダ本人がここにいるとも知らず噂しているのはこの学園の貴族令息たち。
……彼らは、決して『高嶺の花ミランダ』として噂している訳ではない。
それは、ミランダが『平凡令嬢』だから。
いつからか『平凡令嬢』と噂されるようになっていたミランダ。『絶賛婚約者募集中』の彼女にはかなり不利な状況。
チラリと向こうを見てみれば、1人の女子生徒に3人の男子学生が。あちらも良くない噂の方々。
……ミランダは、『あの人達だけはナイ!』と思っていだのだが……。
3万字少しの短編です。『完結保証』『ハッピーエンド』です!
【完結】捨てられた皇子の探し人 ~偽物公女は「大嫌い」と言われても殿下の幸せを願います~
ゆきのひ
恋愛
二度目の人生は、前世で慕われていた皇子から、憎悪される運命でした…。
騎士の家系に生まれたリュシー。実家の没落により、生きるために皇宮のメイドとなる。そんなリュシーが命じられたのは、廃屋同然の離宮でひっそりと暮らすセレスティアン皇子の世話係。
母を亡くして後ろ盾もなく、皇帝に冷遇されている幼い皇子に心を寄せたリュシーは、皇子が少しでも快適に暮らしていけるよう奮闘し、その姿に皇子はしだいに心開いていく。
そんな皇子との穏やかな日々に幸せを感じていたリュシーだが、ある日、毒を盛られて命を落とした……はずが、目を開けると、公爵令嬢として公爵家のベッドに横たわっていた。けれどその令嬢は、リュシーの死に因縁のある公爵の一人娘……。
望まぬ形で二度目の生を享けたリュシーと、その死に復讐を誓った皇子が、本当に望んでいた幸せを手に入れるまでのお話。
※本作は「小説家になろう」さん、「カクヨム」さんにも投稿しています。
※表紙画像はAIで作成したものです
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
【完結】王太子と宰相の一人息子は、とある令嬢に恋をする
冬馬亮
恋愛
出会いは、ブライトン公爵邸で行われたガーデンパーティ。それまで婚約者候補の顔合わせのパーティに、一度も顔を出さなかったエレアーナが出席したのが始まりで。
彼女のあまりの美しさに、王太子レオンハルトと宰相の一人息子ケインバッハが声をかけるも、恋愛に興味がないエレアーナの対応はとてもあっさりしていて。
優しくて清廉潔白でちょっと意地悪なところもあるレオンハルトと、真面目で正義感に溢れるロマンチストのケインバッハは、彼女の心を射止めるべく、正々堂々と頑張っていくのだが・・・。
王太子妃の座を狙う政敵が、エレアーナを狙って罠を仕掛ける。
忍びよる魔の手から、エレアーナを無事、守ることは出来るのか?
彼女の心を射止めるのは、レオンハルトか、それともケインバッハか?
お話は、のんびりゆったりペースで進みます。
婚約者が聖女を選ぶことくらい分かっていたので、先に婚約破棄します。
黒蜜きな粉
恋愛
魔王討伐を終え、王都に凱旋した英雄たち。
その中心には、異世界から来た聖女と、彼女に寄り添う王太子の姿があった。
王太子の婚約者として壇上に立ちながらも、私は自分が選ばれない側だと理解していた。
だから、泣かない。縋らない。
私は自分から婚約破棄を願い出る。
選ばれなかった人生を終わらせるために。
そして、私自身の人生を始めるために。
短いお話です。
※第19回恋愛小説大賞にエントリーしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる