2 / 29
冒険者になります
私は国境を越えると宿を探し、偽名で一晩宿泊した。
そして海沿いの街まで移動すると、ギルドに向かった。
この街のギルドはそこそこ大きいようだ。中に入り受付嬢に話しかける。
「冒険者登録をしたいんだけど。どうすればいいの?」
この紙に必要事項を記入してください。その後ここに手を翳すと登録になります。各地のギルドで使えるギルドカードが発行されます。身分証明にもなりますので、国によっては入国するときに必要となりますよ。
無くしたり、盗まれたり、他人が使えないよう保護と紛失防止、偽造予防の魔法が付与されています。
私は冒険者名をルマと登録した。
「ルマさんはまずE級冒険者となりますので、エントリー出来るのはEランクとDランクの依頼です。これが依頼の一覧ですよ。ここの掲示板に貼ってあります。定期的に来て依頼を確認すると良いですよ。」
説明が丁寧で分かりやすい。
私は受付嬢に言われた通り依頼の一覧を確認する。
何だか簡単そうな依頼ばかりだ。ランクを上げる必要があるのだろう。
「この依頼にエントリーしたいです。」
海沿いの貝を集める依頼を指差し受付嬢に告げる。
「はい。テイ貝の貝殻集めですね。30個で依頼達成です。これがテイ貝です。素材集めの依頼は素材が集まった時点でギルドに来ていただいて、その場で素材を確認することも出来ますよ。」
なるほど。テイ貝の形状を確認する。サザエみたいだ。
「分かりました。これを30個ですね?」
「そうです。似たものには気を付けてくださいね。ご検討をお祈りします。」
「ありがとうございます。」
私はギルドを出て海に向かう。
海岸沿いでなるべく砂地になっている場所を探す。
いい砂浜を見つけた。
「30個なんて楽勝!」
私は風の魔法で周囲の砂を吹き上げる。
「けほっ、けほっ、けほっ。」
砂が喉に入って噎せた。おまけに貝はアサリみたいな形状のものばかりだ。
「あーあ。」
がっかりしているとすぐ近くでクスクス笑う声が聞こえた。
誰よ!失礼な。そう思って振り返ると、綺麗な金髪の美少年がこっちを見て気まずそうにしている。
「失礼しました。ちょっと面白かったので。魔法が豪快なので目についてしまって。冒険者の方ですか?お詫びにお手伝いしますよ。」
馬鹿にして!私は不愉快な表情を隠しもせず、「結構です。」といい放つ。
ふんだっ!私は凄い魔法が使えるんだから。
私は自分の周りにバリアを張り済ました顔で海を歩いて潜ろうと歩き出した。けど、空気が入っているバリアを張ったので潜れない。おまけに波で足元が不安定になって転んだ。
ふと後ろを振り返ると、いよいよ我慢しきれず、少年が大爆笑していた。
ミチミチと音を立てて頭に血が昇ってきた。
自分で起き上がり砂地に戻ると海に大きな渦を起こして海水を巻き上げる。これで軽い貝は遠心力で飛んで来るだろう。
そう思って空を見上げたら大きな大王イカが私に向かって飛んで来た。
「っつ。」
咄嗟に防御の魔法を展開する。
あーあ。びっくりした。周囲を見回すと小さな貝や魚が砂地一面に落ちていた。私はテイ貝を探す。たった10個。後3回この魔法を使う必要がある。私が再び構えをとると、
「海の生き物を目的も無いのに殺傷するのは感心しないですよ。」
と、さっきの少年に話掛けられた。
腹が立って無視していると
「その大王イカは死体に毒があるんだ。俺は処理が出来るから良かったら引き取るよ。」
後ろからおじさんに声を掛けられる。この世界でも大王イカはそのままの名前なのか。
「ありがとうございます。」
そう言って大王イカを渡そうとすると
「嘘ですよ。この方の言ってること。調べたら直ぐに分かりますから。」
さっきの少年がそう言って割って入って来た。
おじさんは急に態度を変えて、「うるせぇ。渡せよ。」とイカを奪い取ろうとした。
すると、少年が流れるような動作でおじさんを取り押さえる。
「ありがとうございます?騙されそう?だったんですか?」
私は状況がよく飲み込めず、取り敢えずお礼を言った。
少年は、はぁーと大きな溜め息をつくと、
「そうですよ。貴方は見たところ下位ランクの冒険者でしょう?よく知らないと思って騙されたんですよ。そのイカを持っていけばきっとランクが上がります。大王イカの墨は貴重な薬なので常に依頼があるんです。」
そう教えてくれた。
おー、良い子じゃん。誤解してたわ。
「ありがとう。早速ギルドに持っていくわ。」
「そのままじゃ駄目ですよ。ちゃんと処理しないと。」
そう言うと少年は大王イカの墨袋を取りだし保存の魔法を掛ける。
少年の手際の良さに感心しながら眺めていると、私一人では冒険者としての知識が足りないのではという気がしてきた。
「ねぇ。私を弟子にしてくれない?そこそこ魔法は使えるわよ。」
油ギッシュなおじさんとかよりは、この少年の方が危険が少ないだろう。主に貞操の。そう思ってお願いしてみた。
あなたにおすすめの小説
《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?
桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。
だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。
「もう!どうしてなのよ!!」
クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!?
天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています
六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。
しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。
「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!
【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした
犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。
思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。
何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…
異世界に逃げたシングルマザー経理は、定時退勤だけは譲れない
木風
恋愛
DV夫から一歳の娘を抱えて逃げた鈴木優子は、光に飲まれて異世界の王宮へ転移してしまう。
生きるために差し出した武器は簿記と経理経験――崩壊寸前の王宮会計を『複式簿記』で立て直すことに。
ただし譲れない条件はひとつ、「午後五時の定時退勤」。娘の迎えが最優先だからだ。
その姿勢に、なぜか若き国王ヴィクトルが毎日経理室へ通い始めて――仕事と子育ての先に、家族の形が芽吹いていく。
モブ令嬢、当て馬の恋を応援する
みるくコーヒー
恋愛
侯爵令嬢であるレアルチアは、7歳のある日母に連れられたお茶会で前世の記憶を取り戻し、この世界が概要だけ見た少女マンガの世界であることに気づく。元々、当て馬キャラが大好きな彼女の野望はその瞬間から始まった。必ずや私が当て馬な彼の恋を応援し成就させてみせます!!!と、彼女が暴走する裏側で当て馬キャラのジゼルはレアルチアを囲っていく。ただしアプローチには微塵も気づかれない。噛み合わない2人のすれ違いな恋物語。
良くある事でしょう。
r_1373
恋愛
テンプレートの様に良くある悪役令嬢に生まれ変っていた。
若い頃に死んだ記憶があれば早々に次の道を探したのか流行りのざまぁをしたのかもしれない。
けれど酸いも甘いも苦いも経験して産まれ変わっていた私に出来る事は・・。
転生したので前世の大切な人に会いに行きます!
本見りん
恋愛
魔法大国と呼ばれるレーベン王国。
家族の中でただ一人弱い治療魔法しか使えなかったセリーナ。ある出来事によりセリーナが王都から離れた領地で暮らす事が決まったその夜、国を揺るがす未曾有の大事件が起きた。
……その時、眠っていた魔法が覚醒し更に自分の前世を思い出し死んですぐに生まれ変わったと気付いたセリーナ。
自分は今の家族に必要とされていない。……それなら、前世の自分の大切な人達に会いに行こう。そうして『少年セリ』として旅に出た。そこで出会った、大切な仲間たち。
……しかし一年後祖国レーベン王国では、セリーナの生死についての議論がされる事態になっていたのである。
『小説家になろう』様にも投稿しています。
『誰もが秘密を持っている 〜『治療魔法』使いセリの事情 転生したので前世の大切な人に会いに行きます!〜』
でしたが、今回は大幅にお直しした改稿版となります。楽しんでいただければ幸いです。