私は番を探しに人間の国に来ました

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やり直し

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「うーん?イメージと違うけど、これで子供には見えないよねっ!」

 鏡の中の私は大人!ちょっと見慣れないけど、ルカ様の好みには近づいたはず!

 すっかり使い慣れたキッチンで今日は得意料理を作った。

「おかえりなさいませっ」

「えっ?……エラト?」

「はい。ルカ様の好みの女性に近づきたくて……似合いますか……」

「……に……似合……う……と……思う」

 ルカ様は顔を片手で覆い、少しくぐもった声で答えてくれた。

「じゃあ、ルカ様の恋人にしてください!」

「恋人……か……」

 ルカ様はそう小さく呟くと、綺麗なピンクの瓶をテーブルに置いた。

「これは何ですか?」

「ベリー酒だ。エラトが国で飲んでたヤツと同じ種類だと思う」

「わあ!ルカ様、ありがとうございます」

 瓶に入った綺麗なピンク色の飲み物は、開けるとフルーツみたいに甘い匂い。レネールで飲んでたお酒と同じ。

「今日の夜ご飯は張り切って作ったんです!得意料理ですよ」

 ジャジャーン、とテーブルを指差し、大きく胸を反らせた。

 今日のメニューはトマトのスープとミートパイ。我ながら上手く作れたと思う。
 こんがり焼けたミートパイを見て、ルカ様は「旨そうだな」って褒めてくれた。

 二人でテーブルに座ってお揃いのグラスにルカ様が買ってきてくれたピンクのお酒を注いだ。甘いけどすっきりしたお酒はミートパイとも合って、自然とお酒が進んじゃう。

「これなら飲みやすいし大丈夫ですー」

 私はグイグイとお酒を飲んで、ふわふわといい気持ち。酔った私はルカ様の匂いが尚更甘く感じて、ルカ様の腕に鼻を擦りつけた。

「番の匂いって本当に幸せな気持ちになりますー。あー、甘いなー」

「あー、ちょっと離れてくれ」

「どうしてですかぁ?」

「手ぇ出しちまうだろ?」

「出してくださいよー、番ですもん」

「初めてだろ?」

「ルカさんにとっておいたようなモンですよ」

 グッと親指を立ててニカリと笑った。

「……。」

 ルカ様は溜息と共に額に手を当てて考え込んでしまった。

 その時ーー

 リンリンリンーー
 玄関のベルの音が鳴り来客を告げた。

 ルカ様は少しホッとして私から離れると玄関の方へと向かった。


「ルカーーーっ!!ちょっと最近付き合い悪いじゃない?」
「ワリィ、ルカ。連れて来ちまった。カーラーがどうしてもって聞かねーんだ」

 玄関の方が騒がしくなり、女性と男性の声が聞こえる。ルカ様のお友達が訪ねてきたみたい。

 カーラーさんって……前会った人かな……。

 どうしても気になった私は、玄関の方からは見えないように隠れて、そっと覗いてみた。

 ルカ様は腕を組んでちょっと怒っているみたい。そんなルカ様の表情に気付かないのか、カーラーさんはルカ様の首に腕を回して顔を近づける。

「ねぇ、ルカ……二人でこの後どう?」

 息が掛かりそうなほど近い距離で、ルカ様に言い寄る。ルカ様の表情はカーラーさんの影に隠れてよく見えない……。

 ルカ様はどう返事するのだろう……。もしかして『いいよ』って言うかもしれない。だって綺麗で色っぽい人だもの。

 ルカ様は私の番なのに……近づかないで欲しいな。胸の奥がぎゅうっと苦しくなって両手を握り締めた。泣いちゃいそう……。

 ルカ様達の会話を聞いていられなくて……部屋の奥に戻って蹲った。

 
 暫くするとパタンと扉の閉まる音がして、急に玄関からの声が聞こえなくなった。

 ルカ様……カーラーさんたちと出掛けたんだ。

 カーラーさんって女の人、ものすごく色気がある。露出が多くて派手な服も、私とは違ってばっちりと着こなしていた。
 私が背伸びして大人みたいな服を着てるのとは全然違う。今着ている服はルカ様とお似合いになるように選んだのに、子供っぽい私にはこんな格好は似合ってない……。

「私じゃ、ルカ様の好みの女性にはなれないのかな……」

 涙が出ちゃう……。もっと大人っぽくなるにはどうしたらいいんだろう……。

「どうしたんだ?」

 ふわりと背後から抱きしめられた。甘くて大好きな匂い……。

「ルカ様……?カーラーさんたちは?」

「突然来たから追い返したよ。何……泣いてる?」

 私の涙に気づいたルカ様がそっと親指で涙をぬぐった。優しい手つきにますます涙が溢れた。

「ルカ様がカーラーさんたちと一緒に遊びに行っちゃうのかと思って……」

「行かないよ。今日はこっちに来てちょうど一ヶ月目の日だろ?」

 ルカ様も一ヶ月目だって覚えててくれたんだ……。だから今日は行かないでくれた……けどこれからは?

「ルカ様はやっぱりカーラーさんみたいな綺麗な大人の女性の方が良いんですか?」

「あ?いや……俺は……」

「私……こんな服、似合いませんね」

「……似合うよ」

「気を遣わなくていいです。分かっちゃいましたから」

 ルカ様は優しいから、私を傷付けないようにそう言ってくれるんだ。

「俺が似合うって言ってんだ。それでいいだろ?」

 いじけて縮こまった私を少し強引に振り向かせ、ルカ様は包み込むように抱きしめてくれた。番の匂いが濃く香る。

「俺のためにその服着てくれたんだろ?嬉しいよ」

 耳に声を吹き込むように囁かれて……。
 番の匂いは甘くて……触れられた所は気持ち良くて……まだお酒が残っているのか身体が熱い。

「エラトの初めて、貰っていいんだろ?今日貰うからな」

「えっ……」

「さっきの積極的な態度はどうしたんだ?怖じ気づいたのか?」

「いいえ!ルカ様なら大歓迎です」

 両手をルカ様に向かって広げると、ルカ様はすっと真剣な顔になって私を抱き上げた。







    
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