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1,卒業パーティーでの婚約破棄
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「リリアベール・グリフィール。そなたとの婚約を破棄する!ロリィに対する嫌がらせの数々は私の耳にも入っている。しかし、ロリィがそなたを庇う優しき心に免じて罪には問わないでおこう。私の運命の糸は、このロリィと繋がれていたようだ。」
婚約者である第1王子のフェルナンド・コリンザは卒業パーティーの会場で、自身の婚約者であるリリアベールに冷たい視線を向けていた。
後ろからは可愛らしい少女がピョコンと顔を覗かせている。
「婚約の首飾りを返してもらおう。そなたには相応しくない。」
リリアベールは真っ直ぐにフェルナンド王子の目を見ている。
何も後ろ暗い事はないとでもいうような、堂々とした佇まい。
教会関係者はこのフェルナンドの暴挙を当然の事のように眺めていた。
教師達は驚いているものの、第1王子であるフェルナンドに意見を言う者は居ない。
リリアベールは小さな溜め息を吐いた。
「承知いたしました。フェルナンド殿下、私はもうお暇いたしますわ。」
もうこの茶番に付き合う必要はない。
私は着けていた首飾りを取ると台座の石を外す。
今はまだ自分の瞳の色の宝石が嵌まっていた。婚姻後は殿下の瞳の色の宝石と交換する予定だったのだが……。
王家から預かっていた婚約の首飾りを殿下の側近に渡して踵を返した。
「待て、申し開きは無いのか?」
どうして、私が言い返すと思ったのだろう?
私は殿下の声に答えない。
会場にいた他の学生達の喧騒の中、私はベルラインドレスのスカートに重ねられたオーガンジーを揺らしながら、ゆったりと出口に向かって歩いていった。
ドレスの布が私の動きに合わせて優雅に動く様子を見るのは好きだった。
こんなドレスを着ることはもうない。
真っ赤なベルラインのドレス。真紅の生地に銀の刺繍が美しい。フェルナンド殿下の隣に相応しいようにと、デザイナーが一生懸命考えてくれたデザイン。
殿下に少しでも褒めて欲しかった。
だから、最後は私がしっかりと見ておこう。シャンデリアの光に反射して煌めくビーズや宝石を。
私は舞踏会の会場を出ると、待っていてくれた馬車で家に戻った。
家に帰ると、父親であるグリフィール公爵が怒りの形相で待ち構えていた。
「このぉー恥さらしがーーー!!二度とこの家に入ることは許さん!!」
「お父様!」
「もうお前の父ではない!」
既に怒りは沸点に達していたのだろう。私の反論を聞くことも無く、一方的に怒鳴られた。
父には必ずフェルナンド殿下を繋ぎ止めておくよう厳命されていたが、婚約が解消されてしまった。
光の乙女であるロリィに嫌がらせをしたという噂も聞いているのだろう。
既にトランクには荷物が詰め込まれており、家を出された。
予言されていた事とはいえ、本当に娘を追い出した事に驚く。
貴族令嬢が家を追い出されたら襲われてしまうのは必然だろう。
私は予め、庭の片隅に準備しておいた荷物を持って、公爵家の敷地を出る。
ザッ
足音に振り向くとがっしりした体型の男性が立っていた。
「セイン?」
近づいて顔を確かめる。
「ああ。」
確かにセインだ。
本当に迎えに来てくれた!!
記憶の中の彼より、ほんの少し年をとり、浅黒く日焼けした肌。
「リリアベール様……。」
「私、勘当されちゃった。もう公爵令嬢じゃないわ。」
精一杯強がって笑顔を作ってみる。けれど上手く笑えない。
「辛かったな。約束通り迎えに来た。」
「セイン。……私頑張ったよ。……でも…、駄目だったぁーーー。」
「ああ、学園の様子は知ってる。頑張ってたな。」
優しい言葉を掛けられると涙腺が一気に崩壊して涙が止まらない。セインは私を優しく慰めてくれる。
「うぅぅ、…ひっぐ、…うっ、」
「取り敢えず馬車に乗せるよ。」
泣きじゃくる私を抱えて、セインは馬車に乗った。
馬車が走り出しても、私の涙は止まらない。
「わ、わだじ……ずきだ……った…の…ぅ…えっぐ……。」
「ああ。」
「でも……でも……振り向いてもらえなかっだーー。」
「大丈夫。それでもリリアベールはいい女だ。好きに泣いていいから。」
「ひっぐ、ひっぐ、わらじ、さいごまで、じゃんと、すきだったのに…………」
泣き過ぎて、しゃくりあげ過ぎて、上手く歯も噛み合わない。
「ろーじて、どれすもみれくれないのー、ろーじて。」
何を言っているのか分からない私の話を黙ってセインは聞いていてくれた。
ロリィが現れるまでは確かに心を通わせていたと思っていた。
こんなに簡単に殿下の気持ちが変わってしまうなんて。
私がどんなに想っていても、彼の心は離れていった。今日はドレスさえも見てくれなかった。
悲しくて悲しくて…胸が潰れてしまいそう。
セインが背中を擦ってくれる。大きな手から温かい体温が伝わって、私の心を徐々に鎮めてくれていった。
私は今日の出来事を、彼の右腕となった従者によって6年前に予言されていた。
彼の従者はユウといって、本人は異世界から来たと話していた。
ユウによると、ここは異世界の小説の世界で、私は悪役令嬢らしい。
光の乙女であるヒロインに嫌がらせをして、婚約破棄されるのは運命だったのだ。
婚約者である第1王子のフェルナンド・コリンザは卒業パーティーの会場で、自身の婚約者であるリリアベールに冷たい視線を向けていた。
後ろからは可愛らしい少女がピョコンと顔を覗かせている。
「婚約の首飾りを返してもらおう。そなたには相応しくない。」
リリアベールは真っ直ぐにフェルナンド王子の目を見ている。
何も後ろ暗い事はないとでもいうような、堂々とした佇まい。
教会関係者はこのフェルナンドの暴挙を当然の事のように眺めていた。
教師達は驚いているものの、第1王子であるフェルナンドに意見を言う者は居ない。
リリアベールは小さな溜め息を吐いた。
「承知いたしました。フェルナンド殿下、私はもうお暇いたしますわ。」
もうこの茶番に付き合う必要はない。
私は着けていた首飾りを取ると台座の石を外す。
今はまだ自分の瞳の色の宝石が嵌まっていた。婚姻後は殿下の瞳の色の宝石と交換する予定だったのだが……。
王家から預かっていた婚約の首飾りを殿下の側近に渡して踵を返した。
「待て、申し開きは無いのか?」
どうして、私が言い返すと思ったのだろう?
私は殿下の声に答えない。
会場にいた他の学生達の喧騒の中、私はベルラインドレスのスカートに重ねられたオーガンジーを揺らしながら、ゆったりと出口に向かって歩いていった。
ドレスの布が私の動きに合わせて優雅に動く様子を見るのは好きだった。
こんなドレスを着ることはもうない。
真っ赤なベルラインのドレス。真紅の生地に銀の刺繍が美しい。フェルナンド殿下の隣に相応しいようにと、デザイナーが一生懸命考えてくれたデザイン。
殿下に少しでも褒めて欲しかった。
だから、最後は私がしっかりと見ておこう。シャンデリアの光に反射して煌めくビーズや宝石を。
私は舞踏会の会場を出ると、待っていてくれた馬車で家に戻った。
家に帰ると、父親であるグリフィール公爵が怒りの形相で待ち構えていた。
「このぉー恥さらしがーーー!!二度とこの家に入ることは許さん!!」
「お父様!」
「もうお前の父ではない!」
既に怒りは沸点に達していたのだろう。私の反論を聞くことも無く、一方的に怒鳴られた。
父には必ずフェルナンド殿下を繋ぎ止めておくよう厳命されていたが、婚約が解消されてしまった。
光の乙女であるロリィに嫌がらせをしたという噂も聞いているのだろう。
既にトランクには荷物が詰め込まれており、家を出された。
予言されていた事とはいえ、本当に娘を追い出した事に驚く。
貴族令嬢が家を追い出されたら襲われてしまうのは必然だろう。
私は予め、庭の片隅に準備しておいた荷物を持って、公爵家の敷地を出る。
ザッ
足音に振り向くとがっしりした体型の男性が立っていた。
「セイン?」
近づいて顔を確かめる。
「ああ。」
確かにセインだ。
本当に迎えに来てくれた!!
記憶の中の彼より、ほんの少し年をとり、浅黒く日焼けした肌。
「リリアベール様……。」
「私、勘当されちゃった。もう公爵令嬢じゃないわ。」
精一杯強がって笑顔を作ってみる。けれど上手く笑えない。
「辛かったな。約束通り迎えに来た。」
「セイン。……私頑張ったよ。……でも…、駄目だったぁーーー。」
「ああ、学園の様子は知ってる。頑張ってたな。」
優しい言葉を掛けられると涙腺が一気に崩壊して涙が止まらない。セインは私を優しく慰めてくれる。
「うぅぅ、…ひっぐ、…うっ、」
「取り敢えず馬車に乗せるよ。」
泣きじゃくる私を抱えて、セインは馬車に乗った。
馬車が走り出しても、私の涙は止まらない。
「わ、わだじ……ずきだ……った…の…ぅ…えっぐ……。」
「ああ。」
「でも……でも……振り向いてもらえなかっだーー。」
「大丈夫。それでもリリアベールはいい女だ。好きに泣いていいから。」
「ひっぐ、ひっぐ、わらじ、さいごまで、じゃんと、すきだったのに…………」
泣き過ぎて、しゃくりあげ過ぎて、上手く歯も噛み合わない。
「ろーじて、どれすもみれくれないのー、ろーじて。」
何を言っているのか分からない私の話を黙ってセインは聞いていてくれた。
ロリィが現れるまでは確かに心を通わせていたと思っていた。
こんなに簡単に殿下の気持ちが変わってしまうなんて。
私がどんなに想っていても、彼の心は離れていった。今日はドレスさえも見てくれなかった。
悲しくて悲しくて…胸が潰れてしまいそう。
セインが背中を擦ってくれる。大きな手から温かい体温が伝わって、私の心を徐々に鎮めてくれていった。
私は今日の出来事を、彼の右腕となった従者によって6年前に予言されていた。
彼の従者はユウといって、本人は異世界から来たと話していた。
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