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ロリィとの出逢い
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あの後、セインとユウは他国へ行ってしまった。彼らは各国を商談のために回っているようだった。
私は、ユウのノートを受け取ってから未来を変えるべく勉学にマナーに殿下との交流にと努力を怠らなかった。
ノートに書いてある自分にはならないように、控えめに振る舞い、常に笑顔を絶やさず………。
ノートの中ではロリィは手作り菓子で殿下と仲良くなっていった。
なので私もお菓子作りを真剣に取り組み、今ではお店で売っている物と遜色ないお菓子を作れるようになっていた。
お菓子の差し入れに王宮へ行くと、いつも殿下は笑顔で迎えてくれた。
お妃教育は厳しくて、泣いてしまう日も多かったけど、殿下には決して弱音を吐かなかった。
私は殿下が初恋で大好きだったし、フェルナンド殿下もいつも優しくて二人は想い合っていると、そう思っていた。
ロリィが入学するまでは…………
学園に入学した一年後に教会の壁画に描かれている光の乙女そっくりの少女が光の魔力が大きいことが判明し、光の乙女だと騒がれていた。
名前はロリィ。
ノートに書いてある通りに未来は進んだ。
「君の名前は?」
「ロリィと申します、フェルナンド様。仲良くしてくださいね。」
ロリィに初めて会った時の殿下の顔を思い出す。あの衝撃を受けたような表情、その後も目を離せず、ずっと追うように彼女を眺めていた。
きっとその行為は無意識。
その瞬間、隣に立つ私の事なんてきっと忘れている。その事がどうしようも無くて、消えてしまいたかった。
隣になんて居なければ良かった。そうすれば、殿下のこの表情に気付ずに済んだのに。
一瞬で彼女に心を奪われた………この瞬間を。
ロリィは空色の髪に太陽のような明るいオレンジの瞳を持つ。
肩まで伸びた髪は彼女と同じようにふわふわと自由奔放。彼女の放つ華やかで自由な空気は、他の生徒にも伝染していつしか周りには人が集まり、彼女は学園生活を彩る華のような存在になっていった。
「フェルナンド様~!!」
廊下を歩く殿下をロリィが大きな声で呼び止めた。
中庭でその光景を目にした私は思わず足を止めて殿下の表情を伺ってしまう。
「どうした?」
殿下は名前で呼ばれたことの不敬も問わず、彼女に優しい笑顔を向ける。
「これ……クッキーを作ったんですが良かったら、食べてください。みんなに配ってるんです。」
殿下は包みを大切そうに受け取ると、その場で広げて食べ始めた。
毒味も通さずに無防備にクッキーを齧る。
「うん。美味しい。ロリィ、ありがとう。」
殿下はひとつひとつのクッキーを丁寧に味わうと、心の底から湧き上がるような笑顔を彼女に向けた。
クッキーを大切そうに扱うその仕草。
なんの警戒もない無防備な笑顔。
そんな笑顔は向けられたことがない。
私が作る物よりずっと拙い形のクッキー………、殿下のために作ったのでは無く、皆に配ったのと同じ物だというのに………。
私は王宮へお菓子を持っていく時は必ず殿下の側近に手渡す。
毒味を通すと私たちがお茶を飲んでいるところへ綺麗に盛り付けられた菓子が侍女達によって運ばれてくる。
いつも、それを二人で談笑しながら食べていた。
今目の前にある光景は、殿下の心が私に無いことをまざまざと見せつける。
努力ではどうしようも無い、その差を見てユウのノートが偽りで無かったのだと確信する。
私が5年間どんなに頑張っても、殿下だけを見ていても得られなかった笑顔。
私は、ユウのノートを受け取ってから未来を変えるべく勉学にマナーに殿下との交流にと努力を怠らなかった。
ノートに書いてある自分にはならないように、控えめに振る舞い、常に笑顔を絶やさず………。
ノートの中ではロリィは手作り菓子で殿下と仲良くなっていった。
なので私もお菓子作りを真剣に取り組み、今ではお店で売っている物と遜色ないお菓子を作れるようになっていた。
お菓子の差し入れに王宮へ行くと、いつも殿下は笑顔で迎えてくれた。
お妃教育は厳しくて、泣いてしまう日も多かったけど、殿下には決して弱音を吐かなかった。
私は殿下が初恋で大好きだったし、フェルナンド殿下もいつも優しくて二人は想い合っていると、そう思っていた。
ロリィが入学するまでは…………
学園に入学した一年後に教会の壁画に描かれている光の乙女そっくりの少女が光の魔力が大きいことが判明し、光の乙女だと騒がれていた。
名前はロリィ。
ノートに書いてある通りに未来は進んだ。
「君の名前は?」
「ロリィと申します、フェルナンド様。仲良くしてくださいね。」
ロリィに初めて会った時の殿下の顔を思い出す。あの衝撃を受けたような表情、その後も目を離せず、ずっと追うように彼女を眺めていた。
きっとその行為は無意識。
その瞬間、隣に立つ私の事なんてきっと忘れている。その事がどうしようも無くて、消えてしまいたかった。
隣になんて居なければ良かった。そうすれば、殿下のこの表情に気付ずに済んだのに。
一瞬で彼女に心を奪われた………この瞬間を。
ロリィは空色の髪に太陽のような明るいオレンジの瞳を持つ。
肩まで伸びた髪は彼女と同じようにふわふわと自由奔放。彼女の放つ華やかで自由な空気は、他の生徒にも伝染していつしか周りには人が集まり、彼女は学園生活を彩る華のような存在になっていった。
「フェルナンド様~!!」
廊下を歩く殿下をロリィが大きな声で呼び止めた。
中庭でその光景を目にした私は思わず足を止めて殿下の表情を伺ってしまう。
「どうした?」
殿下は名前で呼ばれたことの不敬も問わず、彼女に優しい笑顔を向ける。
「これ……クッキーを作ったんですが良かったら、食べてください。みんなに配ってるんです。」
殿下は包みを大切そうに受け取ると、その場で広げて食べ始めた。
毒味も通さずに無防備にクッキーを齧る。
「うん。美味しい。ロリィ、ありがとう。」
殿下はひとつひとつのクッキーを丁寧に味わうと、心の底から湧き上がるような笑顔を彼女に向けた。
クッキーを大切そうに扱うその仕草。
なんの警戒もない無防備な笑顔。
そんな笑顔は向けられたことがない。
私が作る物よりずっと拙い形のクッキー………、殿下のために作ったのでは無く、皆に配ったのと同じ物だというのに………。
私は王宮へお菓子を持っていく時は必ず殿下の側近に手渡す。
毒味を通すと私たちがお茶を飲んでいるところへ綺麗に盛り付けられた菓子が侍女達によって運ばれてくる。
いつも、それを二人で談笑しながら食べていた。
今目の前にある光景は、殿下の心が私に無いことをまざまざと見せつける。
努力ではどうしようも無い、その差を見てユウのノートが偽りで無かったのだと確信する。
私が5年間どんなに頑張っても、殿下だけを見ていても得られなかった笑顔。
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