悪役令嬢とオッサン商人の不器用な純愛

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結婚式

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「おめでとうー!!良かったね。リリアちゃん。」
「リリアちゃん、可愛い!!」
「リリアさんにこのドレスはよく似合ってますわ。」

結婚式はキャシュール商会本邸の大きな庭で行われた。
従業員達による手作りガーデンパーティーだ。

礼装に身を包んだセインが、私の方に向かって歩いてくるのが遠くに見える。しかし、途中で皆に揶揄われたり、挨拶したりして立ち止まるのでなかなか進まない………。

この結婚式には本部に働く従業員も全員参加している。従業員達の家族も招待していて、子供達は芝生を走りまわっているて、賑やかな声が聞こえてくる。

私は既にユウやお義母さん、シイネさんや仲の良い従業員に取り囲まれていた。
花嫁衣裳は真っ白なプリンセスラインのドレス。スカート部分に淡い水色・薄黄色・ピンクのレースで造られたリボンが水玉模様のようににあしらわれている。
カラフルなキャンディ缶を思い出させるようなポップな花嫁衣裳はこの世界では珍しい。
この世界の花嫁衣裳は白いスレンダーラインで飾り付けが一切ないドレスが一般的だ。花嫁の清廉さを表している。
今後ユウは様々なバリエーションの花嫁衣裳を流行らせたいらしく、私とユウでデザインを考え、私は自分でレースのリボンを編んだ。

「かいとーさんのはなよめしゃー、これきれー。」
いつの間にか、私の足元に小さな女の子がいる。
女の子は私のドレスのスカートに着けたピンクのリボンを指差して、私に向かって一生懸命話しかけてくれる。

「ありがとう。私が作ったのよ。」
女の子はニカッの笑うと「きれーきれー。」とはしゃいでいる。 
女の子の母親らしい女性が慌てて飛び込んきた。
「す、すいません。」
女の子はお母さんを見て
「これ、かーいーねー。」と笑っている。
そのまぁるい手がリボンをしっかり握って離さない。
「ミミ、離して。花嫁さんが困っているわ。」
お母さんが申し訳なさそうに、謝りながら女の子の手を広げようとしている。
スカート部分のリボンは既に縫い付けてあるので外れないが、腰に付いている飾りリボンは取り外しが出来るのを思い出した。
「はい。このリボンはあげれないけど、このリボンをどうぞ。」
女の子はパッと笑顔になり大喜びだ。
「ありとーありとー。うれしーねー。」
お母さんは萎縮してしまい、大慌てだ。
「いいえ、いいえ、こんな大切なもの。」
断ろうとするお母さんの手をぎゅっと握って微笑んだ。
「良いんです。こんなに喜んで貰えて私も嬉しいです。」

ふとセインの方を見ると、セインと目が合う。漸く解放されたらしい。
私とセインがお互いを見ているのに気が付いた周囲の人たちが自然と道を開けてくれる。
その道の真ん中を通ってセインが近づいてくる。
じっと私を見ていて一瞬も目を離さない。真っ直ぐに突き刺さるような視線。
私の前に立つとじっくりと見られているようで恥ずかしい。
適当に笑顔で
「似合うよ。」と言ってくれれば、私も「ありがとう。」と軽く流せるのに、セインはそうしない。

真剣に私の花嫁衣裳を見て、セインはそのままの真面目な顔で真っ直ぐに目を合わせる。

「リリア………綺麗だ。」

その褒め言葉は実直で、私の心にストレートに響く。

けれども、けれどもっっ!!人前では恥ずかし過ぎる。

顔がニヤけるし、火照るしで両頬を手で覆い俯いてしまう。顔に汗を掻いて、化粧が崩れてしまわないか心配になる。頭から湯気が出そうだ。

そんな私の反応に皆の注目が集まるのが分かる。尚更顔を上げられない。
今日は結婚式なのに、顔を上げれないなんて駄目だ。

もう!!
恨めしげに顔を伏せたまま視線だけをセインに移せば、セインは私以上に赤くなっていた。

招待客の生温かいような、居心地の悪い視線の中、私達の結婚式は執り行われた。

二人の誓いを見届ける神父役はお義父さん。
季節の花で飾り付けられた講壇の後ろに立って私達が来るのを静かに待っている。

私はセインにエスコートされ講壇の前に立つ。

「セイン、汝は新婦リリアベールを生涯慈しみ愛することを誓いますか?」
「はい。誓います。」
「リリアベール、汝は新郎セインを生涯慈しみ愛することを誓いますか?」
「はい。誓います。」

お義父さんは神父になりきって恭しく低い声を出しているが、似合わなくてちょっと可笑しい。
ほんの少し笑いを噛み殺しながら、宣誓を行った。


「これで二人は夫婦となりました。皆様!!祝福を!!!」

一斉に風船が空を舞うよう飛んでいく。

見上げれば、空にはカラフルな風船がフワフワゆらゆらと空を彩る。

「リリアの花嫁衣裳とお揃いよ!」
ユウが考えてくれた演出はどれも私を幸福感で満たしてくれる。 

「はなよめしゃーおめとー!!」
さっきの女の子がリボンを大きく振っている。

私が女の子を見ていると、私の視線の先を確認するようにセインが女の子の方を向いた。その手に握られたリボンに気付いたセインは、急に慌て出した。
「え?………え?、あれ、リリアの?」
私のドレスのリボンと女の子のリボンを交互に見て、セインは更に焦り出す。
「いいの。私があげたの。」
私は周囲に聞こえないように小声で囁く。
それでもセインは心配そうに私を見ている。
「で、でも、一生に一度の思い出だ。いいのか?」
ああ、この人はこんなに懸命に、記憶に残る結婚式を私に贈ろうとしてくれている。

私の中にほんの少し残っていた残念な気持ちなんて霧散してしまった。

「いいの。格式とか伝統とかに囚われないこの自由な空気がいいの。私、幸せよ!」
心からの笑顔をセインに向ける。
セインはほんの少し目を見開いたあと、柔らかく微笑んだ。
「ああ、そうだな。」

招待客と距離が近いこの結婚式はやたらと恥ずかしいけれど、皆の祝福が直に届く。
視線と拍手、笑い声、皆がこの私達の記念すべき瞬間を共有している。

顔を隠して逃げてしまいたい瞬間も沢山あった………。
顔がニヤけたり大笑いしたり、恥ずかしくって慌てたり、表情を変えるのに忙しくて頬の筋肉が痛い。

私にとって結婚式は厳かなもので、こんなに明るくて楽しい結婚式をすることになるなんて思わなかった。
けど底抜けに明るいこの結婚式は、私達の未来を明るく照らしてくれる。
セインの隣でずっと笑っていられる。
プロポーズの言葉どおりだ。



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