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私の騎士様!
鉄仮面の騎士様に連れられて、小さな部屋に入った。
陛下に何も言わずに出てきたけど、良かったのかしら?
「あ、あの……勝手に出てきてしまって良かったのですか?」
「はい、構いません。陛下には話をしてありますので。あの場で謁見の間を出るつもりまでは無かったのですが、陛下の事ですからお許しになると思います」
パーシヴァル様は私を下ろすと、その厳つくて重そうな鉄仮面を脱いでくれた。
「アイティラ様、大丈夫でしたか?」
乱れた髪を掻き上げて、パーシヴァル様は気遣わしげに私を見た。
その優しさが心に沁みる。好き♡
私ってば、普段ははっきりした性格だけど、王妃様と対峙すると未だに萎縮してしまう。当然のように上から物を言う感じなので、反論もタイミングを逃すと逆らえない。
長年の王妃教育で、逆らわず愛想笑いしてきた弊害なのかも……。
「あ、あの……どうしてあの場所に?パーシヴァル様は第3騎士団では?」
「ええ、陛下が療養先から帰都する道中の護衛は第3騎士団に任されておりました。それと、陛下が今回王都を離れて療養するにあたり、第1騎士団の戦力では不十分だと感じられたようで……。実はうちの団長も陛下と一緒に王都を離れておりました。陛下は騎士団の再編成を命じられ、俺はこれから陛下の護衛を任されます」
「ああ、そうだったのですね」
確かに、デーヴィット殿下の護衛騎士はヒョロ騎士だった!あれで王族を護るのは些か不安。
パーシヴァル様は、私と向かい合って、両肩に手を置いた。
「怖かったのではありませんか?いつものアイティラ様とは様子が違ったので思わず連れ出してしまいましたが……」
「は、はい。王妃様を目の前にすると、昔から身体が竦んでしまうので……」
パーシヴァル様があの場所から連れ出してくれて良かった。王妃様の圧に負けて頷いちゃうとこだった。
「パーシヴァル様、ありがとうございます!パーシヴァルを好きになって良かった!」
ぎゅっとパーシヴァル様に抱きついた。
固い、鎧が固いっ!!
力を込めると角とかに当たって痛いので、仕方なく腕の力を緩めた。
ん?
抱きついたんだから、パーシヴァル様だって私の背中に手を回してくれても良いと思うの。
なのに彼が全然動かないから、どうしたのかと思って見上げると、彼は真っ赤になったまま、目をぱちぱちと瞬いていた。
うそ!可愛い!
パーシヴァル様って、恋愛経験ってあまりないのかな?
緊張した表情もなんだか愛おしくて……。
「アイティラ様……愛しています」
「はい」
いきなりの真面目な告白っ!
こんな場所で?
無骨な鎧を着て、鉄仮面を脱いだ乱れた髪のままで……。それがなんだかパーシヴァルらしいな、なんて思ってしまう。
キス……したいな。
なんて、思って上目遣いでパーシヴァル様を見上げる。
身長がかなり違うから、パーシヴァル様が屈んでくれないと、キスが成立しないんだけど……。
パーシヴァル様は直立不動のまま動かない。
って、もしかして……固まってる?
絶対、彼からはキスして来ないだろうって分かった!
奥手だもの。ここは、私から……しちゃう?
「パーシヴァル様っ」
「ん?」
パーシヴァル様は少し首を前に曲げただけ。
はしたない女性なんて、がっかりされたく無いんだけど……。
「パーシヴァル様、膝を曲げてください」
「ん?ああ」
パーシヴァル様は緊張し過ぎて、考える事を放棄したのか、私の言った通りに膝を曲げて屈んでくれた。
「私の事、嫌いにならないでくださいね」
「ああ、もちろん」
「目を閉じてください」
パーシヴァル様が目を閉じた。
なかなか近くでは見れない、パーシヴァル様の顔をじっくりと眺める。
日に焼けた肌。肌質は意外に綺麗でつるんとしている。男らしい眉に切れ長の目。髭の剃り跡がうっすら残る頬に手を当て、親指で乾いた唇をぷにぷにと触った。
私が怖いのか?
睫毛がふるふる震えて……愛おしい。
普通に口づけすればいいのに、私ったら思わず彼の睫毛に唇を落とした。
いや、だって可愛いんだもの。
ビクリと身体を強張らせる、パーシヴァル様。
ますます、翻弄したくなる。
「駄目ですよ。目は開けないでくださいね」
そして、彼の唇に自分の唇を重ねた。わざとリップ音を立て、チュッとして、おまけに唇をぺろりと舐めた。
へへっ。いただき!
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