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15.私と彼の幸せ(終)
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「レオ様!もうすぐ開演ですって。」
「ミュウさん、あまり急ぐと身体に障りますよ。」
あれから2年。
私たちは結婚し、夫婦となった。
今私たちのお腹には一人目の赤ちゃんがいる。
レオ様は妊娠した私に過保護で、少し早めに歩いただけで心配してしまう。
私はぽっこりお腹が素敵だと思っているこの国の女性に筋肉の美しさを伝えたくて、筋肉ミュージカルをしたいとレオンハルト様に伝えた。
すると、騎士を引退した殿方が集まり見事なミュージカルが完成した。
その筋肉美は人々の心を動かし、今では大人気になっている。
『顔が不細工なら筋肉を鍛えよ!』
このキャッチコピーが顔に自信の無い若者の一縷の望みになっている。
ー・ー・ー
「間に合った!良かったわ。」
「本当に楽しみだったんですね。」
席に着いて一息していると、向こうの席に子供たち3人を連れたコーチス伯爵令嬢の姿が見えた。
レオ様の袖を引いて目で合図を送ると、彼はチラリとそちらを見た後「ああ、そう言えば話してませんでしたね。」と小さく頷いた。
「コーチス伯爵令嬢は金銭的に余裕のある、子爵家の後妻に入ったんですよ。」
穏やかに話す彼の様子から、悪い婚姻では無いことが分かった。
「お相手の方は先妻が亡くなったばかりですが、子供たちのために後妻を迎えることに決めたそうです。商売に才のある、誠実な方ですよ。」
子供たちを見つめる彼女の顔がまるで本当のお母さんのようで、彼女が幸せな結婚をしたことにほっとした。
「あっ。始まるわ。」
客席の明かりが落ちて、舞台の緞帳が上がっていく。
筋肉ミュージカルの開演だ。
ー・ー・ー・ー・ー
「素敵だったわーー。」
「あの太い腕、萌えるぅーーー」
「大きな身体なのに可愛く見えるのが不思議ねー。」
若い女性達が興奮気味に話している。
今日も舞台は大成功。
強引そうな筋肉隆々のヒーローが実は奥手で、手を繋ぐのも恥ずかしがる。
そこにギャップ萌えを感じる人が続出した。
「面白かったわ。」
「そうですね。」
筋肉ミュージカルが成功を収めた。
次は眼鏡男子のブックカフェでも開こうかなぁ……。
そんな事を考えながら歩いていたらレオ様が急に立ち止まった。
「どうしたんですか?」
「ミュウさんは、あんな風な筋肉がお好きなんですか?」
え?私が考えごとしてたから?
やきもちかな?
やだっ!可愛い!!
尊い!
もちろんレオ様一筋ですっ。
「レオ様が私の好みです。」
きちんと言葉にして伝えれば彼は安心して、小さく息を吐いた。
次の瞬間にはもう澄ました表情に戻っている。
レオ様は自信無さそうなところは決して見せない。
虚勢を張って、胸を張って生きている。
彼の腕に自分の腕を絡めてギュっと身体を寄せた。
「どうしたんですか?急にくっついて……。」
「ふふふ。」
レオ様はニヤニヤする私を見下ろしてちょっと不思議そうに首を傾げた。
それでも、視線が合うと目を細めてふわりと微笑んでくれる。
その目には確かな愛情が宿っていて、私はいつも幸せを感じることが出来た。
空がオレンジ色に染まり、人々が我が家への道を急ぐ。
前を歩く親子の影が川の字のように長く伸びていた。
それは誰が見ても幸せな家族そのもので……。
私は少し膨らんできたお腹を撫でた。
もうすぐ生まれてくる子供を間に挟み手を繋いで歩く。
そんな未来を想像しながら、私はレオ様に耳打ちした。
「レオ様、愛しています。」
ーー終ーー
「ミュウさん、あまり急ぐと身体に障りますよ。」
あれから2年。
私たちは結婚し、夫婦となった。
今私たちのお腹には一人目の赤ちゃんがいる。
レオ様は妊娠した私に過保護で、少し早めに歩いただけで心配してしまう。
私はぽっこりお腹が素敵だと思っているこの国の女性に筋肉の美しさを伝えたくて、筋肉ミュージカルをしたいとレオンハルト様に伝えた。
すると、騎士を引退した殿方が集まり見事なミュージカルが完成した。
その筋肉美は人々の心を動かし、今では大人気になっている。
『顔が不細工なら筋肉を鍛えよ!』
このキャッチコピーが顔に自信の無い若者の一縷の望みになっている。
ー・ー・ー
「間に合った!良かったわ。」
「本当に楽しみだったんですね。」
席に着いて一息していると、向こうの席に子供たち3人を連れたコーチス伯爵令嬢の姿が見えた。
レオ様の袖を引いて目で合図を送ると、彼はチラリとそちらを見た後「ああ、そう言えば話してませんでしたね。」と小さく頷いた。
「コーチス伯爵令嬢は金銭的に余裕のある、子爵家の後妻に入ったんですよ。」
穏やかに話す彼の様子から、悪い婚姻では無いことが分かった。
「お相手の方は先妻が亡くなったばかりですが、子供たちのために後妻を迎えることに決めたそうです。商売に才のある、誠実な方ですよ。」
子供たちを見つめる彼女の顔がまるで本当のお母さんのようで、彼女が幸せな結婚をしたことにほっとした。
「あっ。始まるわ。」
客席の明かりが落ちて、舞台の緞帳が上がっていく。
筋肉ミュージカルの開演だ。
ー・ー・ー・ー・ー
「素敵だったわーー。」
「あの太い腕、萌えるぅーーー」
「大きな身体なのに可愛く見えるのが不思議ねー。」
若い女性達が興奮気味に話している。
今日も舞台は大成功。
強引そうな筋肉隆々のヒーローが実は奥手で、手を繋ぐのも恥ずかしがる。
そこにギャップ萌えを感じる人が続出した。
「面白かったわ。」
「そうですね。」
筋肉ミュージカルが成功を収めた。
次は眼鏡男子のブックカフェでも開こうかなぁ……。
そんな事を考えながら歩いていたらレオ様が急に立ち止まった。
「どうしたんですか?」
「ミュウさんは、あんな風な筋肉がお好きなんですか?」
え?私が考えごとしてたから?
やきもちかな?
やだっ!可愛い!!
尊い!
もちろんレオ様一筋ですっ。
「レオ様が私の好みです。」
きちんと言葉にして伝えれば彼は安心して、小さく息を吐いた。
次の瞬間にはもう澄ました表情に戻っている。
レオ様は自信無さそうなところは決して見せない。
虚勢を張って、胸を張って生きている。
彼の腕に自分の腕を絡めてギュっと身体を寄せた。
「どうしたんですか?急にくっついて……。」
「ふふふ。」
レオ様はニヤニヤする私を見下ろしてちょっと不思議そうに首を傾げた。
それでも、視線が合うと目を細めてふわりと微笑んでくれる。
その目には確かな愛情が宿っていて、私はいつも幸せを感じることが出来た。
空がオレンジ色に染まり、人々が我が家への道を急ぐ。
前を歩く親子の影が川の字のように長く伸びていた。
それは誰が見ても幸せな家族そのもので……。
私は少し膨らんできたお腹を撫でた。
もうすぐ生まれてくる子供を間に挟み手を繋いで歩く。
そんな未来を想像しながら、私はレオ様に耳打ちした。
「レオ様、愛しています。」
ーー終ーー
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みき様~🎶
はじめまして(*´∇`*)
感想ありがとうございます💐
殿下は謀反を企てた証拠と共に隣国に送られているので、処刑されたかと思います。
ちゃんと書いて無いですね。
スミマセン(/´△`\)
可愛い〜❤️素敵な作品ありがとうございました😊
いやーレオンハルトとミユウちゃんのやり取りも初々しくてキュンキュンな一方で、突っ込みどころ満載で面白かったですー殿下が夜会で歌ってるとことか、ミユウが私は美人って言い聞かせてるとことか笑
いつも素敵な作品ありがとうございます!すっかり鍋さまの大ファンです❤️
Jasmine777さま~
感想ありがとうございます😆
いろんなお話を読んでいただけて嬉しいです💖
美醜逆転、書いて見たかったんですよねぇ
(*´σー`)エヘヘ
ファンなんていっていただけてとてもとても光栄です(*/∀\*)
これからもよろしくお願いします😭✨