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※R18
(ほんのり)
翌朝、夜叉堂へ向かうが何故だか中へと入れない。
継母と男の会話を聞いて複雑な気持ちになっていた。
命が削られるのが怖い……のではないーーー
ただ、自分は知らずに皆の犠牲にされてきた。
私を一方的に虐げる彼女たちの……。
竹藪の中で少しの時間を潰して私は家へと帰った。
「蓮華、戻ったのかい。中庭の雑草が増えてきたよ。むしってきな!」
私が竹藪から戻ってきたのを確認した継母が、早速用事を言い付けてきた。それが終わると買い物を言い付ける。
『あれ、藪元さん家の上の子だよ。男に襲われたって……。』
『聞いた話じゃ、おとなしそうな顔して、男に色目を使うそうだよ。あの子の実の母親も男漁りが酷かったらしいねー。血は争えないとキヨさんが言ってたよ……。』
商店街に出ると、村の人のヒソヒソ話が耳に入る。
蔑むような視線が私の心を更に傷つける。
母から決してサボらないよう言い付けられてきた夜叉堂の掃除。
それをサボったことに後ろめたさを感じながらも、私は心のどこかで、皆が困ればいい…と思っていた。
それから数日間私は同じように竹藪で時間を過ごし、夜叉堂へは入らなかった。
やがて、引きずり込まれるような強烈な眠気に襲われた。
「どうした?蓮華?」
「一夜さん、一夜さん。」
縋るように彼に飛び付いた。
「どうした?また悲しい事があったのか?」
彼の胸の中では感情が剥き出しになる。
泣きじゃくり、歯が噛み合わないほどしゃくり上げながら話す私の言葉は意味を成さない。
それでも一夜さんは私を受け止めてくれた。
一夜さんは私の身体を慈しむように、優しく抱いてくれる。
身体をくまなく愛されて、今日皿を割ったせいで鞭で打たれた傷の痛みも忘れてしまう。
「蓮華、新しい傷があるね。恥ずかしがらないで、全部見せてごらん。」
全てを晒け出すことが出来た。
彼の腕の中で淫らに喘ぐ。
夢の中で、私は彼と二人きり。
全ての憂いも悲しみも今だけは考えなくてすむ。
母を殺されたことも……。
男に犯されたことも……。
虐待され身体中に醜い傷痕をつけられたことも……。
いつか……あの男に孕まされてしまうことも……。
「一夜さん、私……もう目覚めたくない……。ずっとこの夢の中に居たいの……。」
「ああ……。………蓮華……永遠に我と共に居るか?」
「一夜さん……。いいの?」
「ああ、けれど時間は永遠だ……。人のように離縁も出来ない…。……それでも……いいか?」
「一夜さんと一緒に?」
「我の伴侶となるか?人としての生は終わる。それでも良いか?」
「はい。」
「夜叉堂の奥に我は居る。札を剥がしてくれ。」
予感はしていたーーー
一夜さんは夜叉なんだと………。
※※※※※
一夜さんに札を剥がすよう言われて一週間が経ったが私はまだ剥がせずにいた。
母から決して御札を剥がさないよう小さな頃から言い聞かせられてきたせいで、迷いがあった。
相変わらず竹藪のお堂へは訪れては中に入らず帰って行った。
夢の中の一夜さんも急かすようなことは何も言わなかった。
もし、私のせいで罪のない人たちがあやかしに襲われたら……。
※※※
ある日、買い物をした帰り道、背後からヒタヒタと足音が聞こえた。
あの日の記憶が甦る。
足早に帰り道を急ぐが、足音は、ぴたりと後からついてきた。
(とうとう来た。あの男だ。今日私を拐うつもりなんだ!)
恐怖を感じて、買い物の荷物を捨て去り駆け足で逃げた。足は自然とお堂へと向かった。
「一夜さんっ!!」
50メートルほど先にお堂がある。
前に襲われた現場と同じ場所だった。
男の足音が迫ってくるのを背後に感じる。
懸命に縺れる足を動かしてお堂へと駆け込んだ。
バタン!ーーー
ドタドタドターーー
「一夜さん助けて!」
扉に貼り付けられた御札へと手を伸ばす。
指が触れピリッと軽い感触がして、御札は簡単に剥がれ落ちた。
その瞬間ーーー
「ギャーーーーー!!!」
ぐぎゅ
不気味でイヤな感じの音。
私は誰かの腕の中に抱き留められた。微かに香る白檀。
「蓮華……。」
大きな胸の中は確かに鼓動が聴こえる。
温かい生身の肉体。
「一夜さん……。」
一夜さんと抱き合っていると、血の匂いがした。
まさかーーー
振り向くと、男だった肉片が床に散乱していた。壁には血飛沫が飛び散り、凄惨な様子に言葉を無くす。
「心配するな。餓鬼たちが食べるだろう。跡形も残らない。」
餓鬼と言う言葉に、一夜さんがあやかしだったことを思い出す。
「一夜さん。」
「お前は鬼の花嫁だ。我の根城に行くぞ。」
ふわりと何かに包まれ、浮遊感を感じたと思うとすぐに地面に下ろされた。
「ここは?」
目の前には大きくて立派な城。
藪元の家の数倍はある。
「虎臥山の山頂だ。」
「こんなところに城が?」
「人には城は見えぬ。」
妖怪?のような生き物たちが城門に立っていた。
みなそれぞれに恭しく頭を下げ、一夜さんを出迎えている。
「頭領、そちらのお嬢さんは?ひっく。」
ろくろ首が首だけをにゅーっと伸ばして私に顔を近づけて目をギョロギョロと動かしている。
怖い……けど敵意は無さそう。
「ああ、俺の花嫁だ。」
「そうですか、そうですか。ひっく。では祝言の準備をいたしましょう。」
ろくろ首は首を元に戻すときびすを返して屋敷へと入って行く。
その後を美しい女性が付いて行った。真っ黒な美しい黒髪。
「綺麗……。」
思わず声が漏れると、その女性は立ち止まった。
「そうかい?ありがとね。」
後頭部に口が現れニヤーっと口角を上げた。
「っ!!」
二口女……?
いつの間にか足元に小さい禿げたお爺さんが居た。
「ワシは宗玄です。この屋敷の総括を任されております。花嫁さま、どうぞ頭領をよろしくお願いします。」
ぬらりひょん……?らしき宗玄さんも嬉しそうに私に話し掛けてきた。
言い伝えでは、もののけは人を脅かす邪悪な存在だと聞いていたけど、そんなことは無さそう……。
全体的に歓迎されているみたい。
「……っ!」
強ー烈な視線を感じて振り向くと、柱の影に一つ目小僧の目が半分見えていた。
「一夜さん……あの子……。」
「ああ、あの子は人が怖いんだ。」
一つ目小僧はずっと柱から半分身体を出して此方を見ている。
(怖いんだ……。挨拶しない方がいいみたい…。)
私は一夜さんに肩を抱かれ城へと入っていった。
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