呪われた皇帝の執着或いは溺愛

文字の大きさ
7 / 19

6.担当場所が変更になりました。

しおりを挟む


私は赤宮に戻ると皇太后陛下から出て行くよう言われた事をメイド長に話した。

「そう、そんなことが……。教会には被害が及ばないよう対策するわ。安心して。」

赤宮に働くメイドにスパイをするように持ちかける人間も多く、こういう事態は想定してあった。

周囲の人に危害を加えると脅される事も今までにあったので事前に全て報告するように言われていたのだ。

過去には脅しがエスカレートして陛下に毒を盛ったメイドもいたらしい。

「どうするんですか?」

「噂を先に流すのよ。『教会から来たメイドが失敗して皇太后様が教会を罰するとお怒りになった』ってね。そうすれば、教会で不自然なことが起きれば国民は皇太后様を怒らせたからって思うでしょ?だから無闇に手出し出来ないの。」

世間では美しく聡明な皇太后陛下だ。イメージを壊すような愚行には及ばないらしい。

「ジェンナ、今日から担当場所が変更になるわ。皇太后陛下に目を付けられたかもしれないって、陛下からの命令よ。」

「危ないんですか?」

「ええ、過去には男たちに襲われるよう仕向けられた子もいるの。念のため、このエリアから出ないようにって。」

メイド長からそう言われて案内されたのは、陛下のプライベートエリア。私室と寝室があった。

「ここの掃除は今まで陛下自身でされていて、此処に入れるのはごく少人数。私も数回しか入ったことはないし、掃除したことないから詳しい事は陛下が直に指導なさるそうよ。」

大国の皇帝陛下が掃除なんて……。
そんな事あり得るのだろうか?
皇帝陛下は私が思っているよりずっと敵が多いのかもしれない……。

机の上を触るのは憚れるので、床掃除をしていると、陛下が入って来た。

えっ??

入って来た陛下は思わず二度見してしまうほど穏やかな表情。
固まってしまった私に近づくと、蕩けるように微笑みかけられた。

「ジェンナっ……。」

私の目の前まで来ると、愛しげに私の頬を撫でる。

(名前で呼ばれた??)

私は訳が分からなくて、惚けていると陛下が私をソファーへと座らせた。

陛下は離れる気が無いようで、ぴったりと私の横に腰を下ろす。

??

陛下の謎の豹変に戸惑いつつも、距離が近くて緊張してしまい、ドキドキして俯く。

「ジェンナ、僕が分からない??」

優しく問いかけられて、顔を上げると陛下がじっと私の顔を見ている。
その人懐っこい笑みは昼間の陛下とは別人。
けれど、知り合いにはこんなに美形は居ないように思えた。

「も、申し訳ありません。記憶に無くて……。」

「そっか、僕は……レイだ。覚えてる?僕は忘れたことなんて無かった。君の住んでた教会に一年近く居たことがある。」

「れ、レイ??」

「そう、レイ。髪の色も瞳の色も変わっちゃったけど。」

髪と瞳の色だけじゃ無い……。

私の知っているレイは整ってはいたが、もっと頬も丸くて……。

「ふふ、男らしくなったでしょ?」 

男らしいと言うより……やつれてる?
でも笑顔には確かにレイの面影があった。

「レイ?無事で良かった。何度もレイの事を思い出したわ。あんなに怖い人たちに狙われて無事でいるのか……。」

「命だけは無事だった。でも今も狙われている。父は僕の魔力の量だけは評価していたから、優秀な護衛を付けて逃がしてくれてたんだ。他はどうしようも無い父だったけど……。その点だけは感謝してる。」

「れ、レイが皇帝陛下なの……。」

「詳しい事はいずれ話す。それよりも今日からは僕の居住エリアから出ないで。赤宮は安全な方だけど、僕の執務室があるから、どうしても外部の者が入ってくる。間諜もいるんだ。でもここは安全だから……。」

「レイ、魔女の呪いは大丈夫なの?」

髪と瞳の色の変化が気になって、呪いのことを尋ねると、陛下の表情が曇った。

「今の所は。ジェンナ、お願いがあるんだ。僕、ずっと不眠症で……。ジェンナの隣だと安心して眠れるような気がするんだ。お願い。何もしないから添い寝してっ!!」

良くみると、陛下の目の下には濃いクマが……。
顔色も青白い。

「不眠症?」
「そう、ずっと悩まされている。ジェンナ、あの頃と同じように一緒に眠ってくれないか?」

ベッドに入ると言うこと?
しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子だなんて知りませんでした〜

ボタニカルseven
恋愛
「今までお世話になりました」 あぁ、これでやっとこの人たちから解放されるんだ。 「セレス様、行きましょう」 「ありがとう、リリ」 私はセレス・バートレイ。四歳の頃に母親がなくなり父がしばらく家を留守にしたかと思えば愛人とその子供を連れてきた。私はそれから今までその愛人と子供に虐げられてきた。心が折れそうになった時だってあったが、いつも隣で見守ってきてくれた精霊たちが支えてくれた。 ある日精霊たちはいった。 「あの方が迎えに来る」 カクヨム/なろう様でも連載させていただいております

身を引いたのに、皇帝からの溺愛が止まりません ~秘された珠の還る場所~

ささゆき細雪
恋愛
五年前、内乱の混乱のなかで姿を消した最愛の妃・白瑤華(はくようか)。 彼女を失った皇帝・景玄耀(けいげんよう)は、その後ただ一人を想い続けながら執務に追われていた。そんなある日、書類に彼女の名前を発見し、居ても立っても居られなくなる。 ――死んだはずの彼女が、生きている? 同姓同名かもしれないが確かめずにいられなくなった彼は地方巡察を決行。そこで、彼によく似た幼子とともに彼女と再会、地方官吏として働く瑤華と、珠児(しゅじ)を見て、皇帝は決意する――もう二度と、逃がさないと。 「今さら、逃げ道があると思うなよ」 瑤華を玄耀は責めずに、待ちの姿勢で包み込み、囲い込んでいく。 秘された皇子と、選び直した愛。 三人で食卓を囲む幸福が、国をも動かすことになるなんて――?    * * * 後宮から逃げ出して身を引いたのに、皇帝の溺愛は止まらない――これはそんな、中華風異世界ロマンス。

ただの子爵令嬢ですが、なぜか王子の恋愛相談役になりました

はくまいキャベツ
恋愛
王子がメイドに振られるという国家機密相当の現場を目撃してしまった子爵令嬢ダリア・バッケンは、口外しない事を条件に念書へ記名し、お咎めなく日常へ戻るーーはずだった。 しかし数日後、口外していないにも関わらずダリアは王城へ呼び出される。そこにいたのは理屈だけで動く男、王子の側近ブレーデン・ハノーヴァーだった。 「誓って口外などしていません!」 「…分かっている。あなたを呼んだのは別件だ」 ダリアがほっとしたのも束の間、ブレーデンは小声で付け加える。 「まあ完全に別件でもないが」 (もうなんなのよ!) 果たして、ダリアが王城に呼び出された理由とはーー

【完結】公爵子息は私のことをずっと好いていたようです

果実果音
恋愛
私はしがない伯爵令嬢だけれど、両親同士が仲が良いということもあって、公爵子息であるラディネリアン・コールズ様と婚約関係にある。 幸い、小さい頃から話があったので、意地悪な元婚約者がいるわけでもなく、普通に婚約関係を続けている。それに、ラディネリアン様の両親はどちらも私を可愛がってくださっているし、幸せな方であると思う。 ただ、どうも好かれているということは無さそうだ。 月に数回ある顔合わせの時でさえ、仏頂面だ。 パーティではなんの関係もない令嬢にだって笑顔を作るのに.....。 これでは、結婚した後は別居かしら。 お父様とお母様はとても仲が良くて、憧れていた。もちろん、ラディネリアン様の両親も。 だから、ちょっと、別居になるのは悲しいかな。なんて、私のわがままかしらね。

勘違い令嬢の心の声

にのまえ
恋愛
僕の婚約者 シンシアの心の声が聞こえた。 シア、それは君の勘違いだ。

将来の嫁ぎ先は確保済みです……が?!

翠月 瑠々奈
恋愛
ある日階段から落ちて、とある物語を思い出した。 侯爵令息と男爵令嬢の秘密の恋…みたいな。 そしてここが、その話を基にした世界に酷似していることに気づく。 私は主人公の婚約者。話の流れからすれば破棄されることになる。 この歳で婚約破棄なんてされたら、名に傷が付く。 それでは次の結婚は望めない。 その前に、同じ前世の記憶がある男性との婚姻話を水面下で進めましょうか。

年下の婚約者から年上の婚約者に変わりました

チカフジ ユキ
恋愛
ヴィクトリアには年下の婚約者がいる。すでにお互い成人しているのにも関わらず、結婚する気配もなくずるずると曖昧な関係が引き延ばされていた。 そんなある日、婚約者と出かける約束をしていたヴィクトリアは、待ち合わせの場所に向かう。しかし、相手は来ておらず、当日に約束を反故されてしまった。 そんなヴィクトリアを見ていたのは、ひとりの男性。 彼もまた、婚約者に約束を当日に反故されていたのだ。 ヴィクトリアはなんとなく親近感がわき、彼とともにカフェでお茶をすることになった。 それがまさかの事態になるとは思いもよらずに。

悪魔が泣いて逃げ出すほど不幸な私ですが、孤独な公爵様の花嫁になりました

ぜんだ 夕里
恋愛
「伴侶の記憶を食べる悪魔」に取り憑かれた公爵の元に嫁いできた男爵令嬢ビータ。婚約者は皆、記憶を奪われ逃げ出すという噂だが、彼女は平然としていた。なぜなら悪魔が彼女の記憶を食べようとした途端「まずい!ドブの味がする!」と逃げ出したから。 壮絶な過去を持つ令嬢と孤独な公爵の、少し変わった結婚生活が始まる。

処理中です...