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6.担当場所が変更になりました。
しおりを挟む私は赤宮に戻ると皇太后陛下から出て行くよう言われた事をメイド長に話した。
「そう、そんなことが……。教会には被害が及ばないよう対策するわ。安心して。」
赤宮に働くメイドにスパイをするように持ちかける人間も多く、こういう事態は想定してあった。
周囲の人に危害を加えると脅される事も今までにあったので事前に全て報告するように言われていたのだ。
過去には脅しがエスカレートして陛下に毒を盛ったメイドもいたらしい。
「どうするんですか?」
「噂を先に流すのよ。『教会から来たメイドが失敗して皇太后様が教会を罰するとお怒りになった』ってね。そうすれば、教会で不自然なことが起きれば国民は皇太后様を怒らせたからって思うでしょ?だから無闇に手出し出来ないの。」
世間では美しく聡明な皇太后陛下だ。イメージを壊すような愚行には及ばないらしい。
「ジェンナ、今日から担当場所が変更になるわ。皇太后陛下に目を付けられたかもしれないって、陛下からの命令よ。」
「危ないんですか?」
「ええ、過去には男たちに襲われるよう仕向けられた子もいるの。念のため、このエリアから出ないようにって。」
メイド長からそう言われて案内されたのは、陛下のプライベートエリア。私室と寝室があった。
「ここの掃除は今まで陛下自身でされていて、此処に入れるのはごく少人数。私も数回しか入ったことはないし、掃除したことないから詳しい事は陛下が直に指導なさるそうよ。」
大国の皇帝陛下が掃除なんて……。
そんな事あり得るのだろうか?
皇帝陛下は私が思っているよりずっと敵が多いのかもしれない……。
机の上を触るのは憚れるので、床掃除をしていると、陛下が入って来た。
えっ??
入って来た陛下は思わず二度見してしまうほど穏やかな表情。
固まってしまった私に近づくと、蕩けるように微笑みかけられた。
「ジェンナっ……。」
私の目の前まで来ると、愛しげに私の頬を撫でる。
(名前で呼ばれた??)
私は訳が分からなくて、惚けていると陛下が私をソファーへと座らせた。
陛下は離れる気が無いようで、ぴったりと私の横に腰を下ろす。
??
陛下の謎の豹変に戸惑いつつも、距離が近くて緊張してしまい、ドキドキして俯く。
「ジェンナ、僕が分からない??」
優しく問いかけられて、顔を上げると陛下がじっと私の顔を見ている。
その人懐っこい笑みは昼間の陛下とは別人。
けれど、知り合いにはこんなに美形は居ないように思えた。
「も、申し訳ありません。記憶に無くて……。」
「そっか、僕は……レイだ。覚えてる?僕は忘れたことなんて無かった。君の住んでた教会に一年近く居たことがある。」
「れ、レイ??」
「そう、レイ。髪の色も瞳の色も変わっちゃったけど。」
髪と瞳の色だけじゃ無い……。
私の知っているレイは整ってはいたが、もっと頬も丸くて……。
「ふふ、男らしくなったでしょ?」
男らしいと言うより……やつれてる?
でも笑顔には確かにレイの面影があった。
「レイ?無事で良かった。何度もレイの事を思い出したわ。あんなに怖い人たちに狙われて無事でいるのか……。」
「命だけは無事だった。でも今も狙われている。父は僕の魔力の量だけは評価していたから、優秀な護衛を付けて逃がしてくれてたんだ。他はどうしようも無い父だったけど……。その点だけは感謝してる。」
「れ、レイが皇帝陛下なの……。」
「詳しい事はいずれ話す。それよりも今日からは僕の居住エリアから出ないで。赤宮は安全な方だけど、僕の執務室があるから、どうしても外部の者が入ってくる。間諜もいるんだ。でもここは安全だから……。」
「レイ、魔女の呪いは大丈夫なの?」
髪と瞳の色の変化が気になって、呪いのことを尋ねると、陛下の表情が曇った。
「今の所は。ジェンナ、お願いがあるんだ。僕、ずっと不眠症で……。ジェンナの隣だと安心して眠れるような気がするんだ。お願い。何もしないから添い寝してっ!!」
良くみると、陛下の目の下には濃いクマが……。
顔色も青白い。
「不眠症?」
「そう、ずっと悩まされている。ジェンナ、あの頃と同じように一緒に眠ってくれないか?」
ベッドに入ると言うこと?
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