呪われた皇帝の執着或いは溺愛

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3.怖い?優しい?皇帝陛下

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赤宮で働くことになった私たちは、メイド長に赤宮内を案内された。

はじめに案内してくれた人がやっぱりメイド長で、私たちに自己紹介をしてくれた。

「赤宮のメイド長をしているブランカよ。宜しくね。」

ブランカメイド長は
「皇帝陛下は見かけ程怖い人ではないから。」と言うが、あの冷たい雰囲気に晒された私たちは恐くて、皆が皇帝陛下に直接関わらない業務を希望した。

しかし、唯でさえ少ない赤宮のメイドは緊急時にどの仕事もこなせるようにと、一週間ごとに担当業務が変わることになっているそうだ。

「あらっ、ごきげんよう、メイドの皆様。皇宮に来るのに、相応しく無い服装ですわね。」

私たちが説明を受けていると、メイドとは違う制服を着た女性が話し掛けてきた。

「皇宮には王族や高位貴族の方々もいらっしゃるんですのよ。皇宮の品位を落とさないように気を付けて働いてくださいませ。」

ブランカメイド長は表情を変えず、何も言い返さない。
しれっとしたその態度で、こんな事は日常茶飯事なのだと分かった。

「は、はい。よろしくお願いします。」

「いやぁねぇー田舎者丸出しで……。挨拶もまともに出来ないの?」

クスクス笑う女性たち。
私たちへの侮蔑を込めた視線を隠そうともしない。

「お前たち女官は無駄口を叩くのが仕事か?」

冷ややかな声が背後から聞こえた。
振り向くと、凍えるような視線で女官達を睨む陛下が……!

「ひっ!へ、陛下。」

女官たちは陛下が居るのに驚いて、みるみる顔色が悪くなっていく。

「も、申し訳ありません。い、行くわよっ!!」

そして謝罪の言葉だけ口にすると、そそくさとその場を立ち去った。

「お前たちも女官とは話をするなっ!」

陛下は女官たちの後ろ姿を忌々しそうに見送ると、私たちにも視線を移し威圧感たっぷり言い放つ。
その存在感と圧力で身を竦めていると、陛下が私をじっと見ているのに気が付いた。

「お主……痩せすぎておるな。」

「は、はいっ!」

びっくりしてやけに大きく返事をしてしまった。

「健康状態に問題はないのか?」

不機嫌そうに尋ねられて、私は緊張しながら答えた。

「わ、わたくしは…教会の孤児院におりまして……、子供たちの食べ物を優先して参りました。ですので少し痩せているかもしれません。けれど、健康状態には問題ないので、皆様のご負担にならないように仕事はきちんと…」

「そのような事を聞いておるのではないっ!」

陛下は私の言葉を遮ってそう言うと、近くに居た侍従に指示をだした。

「赤宮メイドの仕事は他の部署より多忙を極める。今日からメイド用の食事を一品増やすようにするように料理長に伝えよ。」

「え?」

親切だわっ!
ぶっきらぼうだけど、とっても親切。
驚いて皇帝陛下を見ると、その顔は青白く疲れて見えた。
??
皇帝陛下の方が健康に気を付けた方が良いのでは?
そう言いかけて慌てて口を噤んだ。

(いけない。この方は皇帝陛下よ。)

「ふむ、食事よりデザートを出した方が良いだろうか?」

皇帝陛下って、メイドのメニューをそんなに気にしてくれるものなのだろうか?
ブランカメイド長に目を移すと、ポーカーフェイスの彼女が目を白黒させて驚いている。

「これはあくまで業務に支障をきたさないための処置だ。」

慌てて考えた言い訳のようなことを言って皇帝陛下は去っていった。

メイド長の『怖い人ではない』が分かった。

(メイドをこんなに気遣ってくれるなんて)

表情や態度は怖いけれど、根は悪い人では無さそう。
他のメイドもそう思ったようで、みんなどことなく安心したような表情を浮かべていた。

(それにしても、女官の人ってメイドの事を嫌ってるのかしら?)
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