呪われた皇帝の執着或いは溺愛

文字の大きさ
5 / 19

4.王宮でのお仕事

しおりを挟む
皇宮で働き初めて一ヶ月
なかなか快適な職場だった。

皇宮では早番と遅番があり、5時から午後1時までと、1時から9時までの二交代勤務。

食事は赤宮専用の食堂があり、メニューも豊富。最近更に豪華になったらしい。

メイド服も何気に高級な生地が使われ、帝都で一番人気のデザイナーが手掛けていると同僚が喜んでいた。

同じような境遇から来たメイドたちとはすっかり打ち解けて仲良くなっていた。

ただし、業務の都合上どうしても赤宮から出ることがあり、女官たちは相変わらず嫌がらせをしてくる。


~・~・~・~・~



今日は早番だ。
陛下の執務室の窓を開けて早朝の爽やかな空気を室内に取り入れる。
机や床を手早く掃除して花を飾ると陛下が部屋に入ってきた。

「おはよう。」


「「「おはようございます、陛下。」」」

赤宮以外で働く貴族は、私たちメイドへ挨拶なんてしないのに、赤宮で働く貴族や陛下はいつも挨拶してくれた。

陛下はいつも通り鉄仮面のような無表情で部屋へと入り、淡々と仕事を始める。

文官から用意された書類に目を通し、サインをする。
時折、手を止めて少し考え、文官に質問したり、それでも納得出来なければ、他の文官に資料を持って来させる。
陛下は口数が少なくてほとんど無駄なことは話さない。
初めて会った時には恐くて陛下の顔を見れなかったけれど、こうやって見る横顔はどこか窶れて疲れて見えた。

私は陛下や文官がいつでも何か飲めるように、冷たいお茶や果実水を用意して部屋を後にした。

「お疲れ!」
「お疲れ様です。」

皇帝陛下の護衛騎士のマルスさんは気さくで優しい青年。
子爵家の三男で貴族にも関わらず、私たちにも気を遣って声を掛けてくれる。

「今から庭園で花を貰ってくるんだろ?」

「は、はいっ!」

「俺も一緒に行くよ。侵入経路が無いか点検するんだ。ついでにその荷物持ってやるよ。」

「あ、ありがとうございます。」

二人で一緒に歩き出すと、いつの間にか陛下が後ろからついてきていた。

今まで執務室にいたのにっ?

「へ、陛下。どちらへ?」

マルスさんが尋ねると、陛下はぶっきらぼうに答えた。

「庭園だ。」

「何か、用事でも?」

「書類ばかり読んでいて疲れた。気分転換だ。」

今仕事を始めたばかりなのに、そんな事を言って陛下はついてきた。

私たちが歩く後ろを陛下が歩いて、その後ろを陛下の侍従と護衛騎士がついてくる。
何だか変な集団になってしまって、すれ違う人がみんなに二度見された。

陛下が近い距離で後ろをついて来るので、私とマルスさんは何となく話をしにくくなり、無言のまま庭園についた。

「すみません。食堂に飾るお花を頂けますか?」
「食堂なら、匂いの無い花がいいな。これ持ってきなっ!」

庭園を管理している庭師のジムさんに花貰ってその場を後にする。

ふと見ると、無表情のまま庭園を眺める陛下がいた。
全然気分転換出来ているようには見えない。

(本当に何しに来たのかしら?……まさか……監視?……スパイとか疑ってる?) 

冷静に考えれば、皇帝陛下がそんなことする筈ないのに、そんなことが頭を過るほど不自然な行動だった。

す、スパイって拷問とかあるんじゃ………

そんな怖い思いつきのせいで、それからは仕事中陛下の視線が気になって仕方がない。
よく観察すれば、確かに私をよく見ている。

そして私はすっかり陛下に怯えて過ごすようになっていた。

しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子だなんて知りませんでした〜

ボタニカルseven
恋愛
「今までお世話になりました」 あぁ、これでやっとこの人たちから解放されるんだ。 「セレス様、行きましょう」 「ありがとう、リリ」 私はセレス・バートレイ。四歳の頃に母親がなくなり父がしばらく家を留守にしたかと思えば愛人とその子供を連れてきた。私はそれから今までその愛人と子供に虐げられてきた。心が折れそうになった時だってあったが、いつも隣で見守ってきてくれた精霊たちが支えてくれた。 ある日精霊たちはいった。 「あの方が迎えに来る」 カクヨム/なろう様でも連載させていただいております

身を引いたのに、皇帝からの溺愛が止まりません ~秘された珠の還る場所~

ささゆき細雪
恋愛
五年前、内乱の混乱のなかで姿を消した最愛の妃・白瑤華(はくようか)。 彼女を失った皇帝・景玄耀(けいげんよう)は、その後ただ一人を想い続けながら執務に追われていた。そんなある日、書類に彼女の名前を発見し、居ても立っても居られなくなる。 ――死んだはずの彼女が、生きている? 同姓同名かもしれないが確かめずにいられなくなった彼は地方巡察を決行。そこで、彼によく似た幼子とともに彼女と再会、地方官吏として働く瑤華と、珠児(しゅじ)を見て、皇帝は決意する――もう二度と、逃がさないと。 「今さら、逃げ道があると思うなよ」 瑤華を玄耀は責めずに、待ちの姿勢で包み込み、囲い込んでいく。 秘された皇子と、選び直した愛。 三人で食卓を囲む幸福が、国をも動かすことになるなんて――?    * * * 後宮から逃げ出して身を引いたのに、皇帝の溺愛は止まらない――これはそんな、中華風異世界ロマンス。

ただの子爵令嬢ですが、なぜか王子の恋愛相談役になりました

はくまいキャベツ
恋愛
王子がメイドに振られるという国家機密相当の現場を目撃してしまった子爵令嬢ダリア・バッケンは、口外しない事を条件に念書へ記名し、お咎めなく日常へ戻るーーはずだった。 しかし数日後、口外していないにも関わらずダリアは王城へ呼び出される。そこにいたのは理屈だけで動く男、王子の側近ブレーデン・ハノーヴァーだった。 「誓って口外などしていません!」 「…分かっている。あなたを呼んだのは別件だ」 ダリアがほっとしたのも束の間、ブレーデンは小声で付け加える。 「まあ完全に別件でもないが」 (もうなんなのよ!) 果たして、ダリアが王城に呼び出された理由とはーー

【完結】公爵子息は私のことをずっと好いていたようです

果実果音
恋愛
私はしがない伯爵令嬢だけれど、両親同士が仲が良いということもあって、公爵子息であるラディネリアン・コールズ様と婚約関係にある。 幸い、小さい頃から話があったので、意地悪な元婚約者がいるわけでもなく、普通に婚約関係を続けている。それに、ラディネリアン様の両親はどちらも私を可愛がってくださっているし、幸せな方であると思う。 ただ、どうも好かれているということは無さそうだ。 月に数回ある顔合わせの時でさえ、仏頂面だ。 パーティではなんの関係もない令嬢にだって笑顔を作るのに.....。 これでは、結婚した後は別居かしら。 お父様とお母様はとても仲が良くて、憧れていた。もちろん、ラディネリアン様の両親も。 だから、ちょっと、別居になるのは悲しいかな。なんて、私のわがままかしらね。

勘違い令嬢の心の声

にのまえ
恋愛
僕の婚約者 シンシアの心の声が聞こえた。 シア、それは君の勘違いだ。

将来の嫁ぎ先は確保済みです……が?!

翠月 瑠々奈
恋愛
ある日階段から落ちて、とある物語を思い出した。 侯爵令息と男爵令嬢の秘密の恋…みたいな。 そしてここが、その話を基にした世界に酷似していることに気づく。 私は主人公の婚約者。話の流れからすれば破棄されることになる。 この歳で婚約破棄なんてされたら、名に傷が付く。 それでは次の結婚は望めない。 その前に、同じ前世の記憶がある男性との婚姻話を水面下で進めましょうか。

年下の婚約者から年上の婚約者に変わりました

チカフジ ユキ
恋愛
ヴィクトリアには年下の婚約者がいる。すでにお互い成人しているのにも関わらず、結婚する気配もなくずるずると曖昧な関係が引き延ばされていた。 そんなある日、婚約者と出かける約束をしていたヴィクトリアは、待ち合わせの場所に向かう。しかし、相手は来ておらず、当日に約束を反故されてしまった。 そんなヴィクトリアを見ていたのは、ひとりの男性。 彼もまた、婚約者に約束を当日に反故されていたのだ。 ヴィクトリアはなんとなく親近感がわき、彼とともにカフェでお茶をすることになった。 それがまさかの事態になるとは思いもよらずに。

悪魔が泣いて逃げ出すほど不幸な私ですが、孤独な公爵様の花嫁になりました

ぜんだ 夕里
恋愛
「伴侶の記憶を食べる悪魔」に取り憑かれた公爵の元に嫁いできた男爵令嬢ビータ。婚約者は皆、記憶を奪われ逃げ出すという噂だが、彼女は平然としていた。なぜなら悪魔が彼女の記憶を食べようとした途端「まずい!ドブの味がする!」と逃げ出したから。 壮絶な過去を持つ令嬢と孤独な公爵の、少し変わった結婚生活が始まる。

処理中です...