呪われた皇帝の執着或いは溺愛

文字の大きさ
14 / 19

13.王宮を出ることになりました

しおりを挟む
皇太后陛下とイクシオン公爵が魔女の呪いの断罪を受けてから、王宮の改革が進んだ。
イクシオン公爵家の捜索で密偵の疑いのある女官や文官は全て解雇された。

イクシオン公爵に近しい貴族は、その勢いを失くし、皇帝陛下は王族としての伝統の黄金の髪と瞳を取り戻した。

レイは呪いが解けた途端、同衾を止めた。

理性がどうとか言っていたけど……。

正直助かった。

いくら小さい頃毎日一緒に眠っていたとはいえ、最近ドキドキして心臓が持ちそうに無かった。
夜ふと目が覚めると、彼の整った顔が目の前にあって、シャープな頬はもうあの頃のように子供じゃないと感じさせる。
喉仏やたくましい腕にドキドキして、彼の男っぽい匂いに包まれて眠る。
意識しないようにと思えば思うほど恥ずかしくて顔を見れない。
きっと彼は私の事を姉か母親のように思ってる。

……だから、

「レイ、もう添い寝しないんだし、私の部屋は他のメイドと同じ場所に戻っていいかしら?」

「え?」

「だって、レイは呪いも解けたのよ?いつまでもメイドに手を出しているなんて噂が立つのは良くないもの。」

この気持ちに気付かない振りをして、彼から離れてしまいたかった。
きっと彼の傍には素敵な令嬢が寄り添うようになる。
呪いが解けた彼にはこれから縁談が山のように届くのだろう。

「ジェンナ、暫くアンテーノール侯爵の家へ行かないか?」

アンテーノール侯爵の家?

王宮で彼が他の令嬢と過ごすのを見るのはきっと辛い。
侯爵家でメイドとして働くのは良いかもしれない。

「侯爵様は何ておっしゃるのかしら?」

「僕からお願いしたよ。侯爵も喜んでくれているよ。安心して行くといい。」

彼はアンテーノール侯爵の執務室に案内してくれた。

「陛下から聞いている。家には連絡してあるし、今日私の執務が終わったら一緒に帰ろう。それまでに赤宮で一緒に働いていた者たちに挨拶するといい。」

「はい。これからよろしくお願いしますっ!」

侯爵様は迷惑そうな様子も無くて安心した。
穏やかで真面目な人柄だ。
安心して働くことが出来る。

同僚達の所に挨拶に行くと、みんな名残惜しんでくれて、お別れが寂しくなった。

「そっか侯爵様の所で就職するのね。ジェンナならどこでも大丈夫よ。」

「ハルシャワ伯爵令嬢に絡まれて大変そうだったしね。よかったね。いっぱい仕事手伝って貰ったし、今までありがとう。」

赤宮で一緒に働いたメイドたちとはすっかり打ち解けて仲良くなっていた。
恐ろしい皇帝陛下に気に入られた可哀想なメイドだと思われていたみたい。

レイは相変わらず、人前では冷たい冷気を背負ったままだ。
皇帝としての仮面はこれからも被り続けるのだろう。

待遇の良い職場だったから、侯爵家へ行くのは少し寂しい………。

でも……

「レイ、今までありがとう。」

「そんなっ、お別れみたいな挨拶しないで。出来る限り様子を見に行くよ。」

「レイは忙しいんだし、私になんて時間使わないで。」

レイは少し寂しそうに、だけど穏やかに微笑んだ。

「今日からジェンナが居なくても皇帝としてしっかり頑張るよ。」

つきん、と胸が痛んだ。でも、ずっと此処には居れないから……。
私は出来る限り明るく見えるよう微笑んだ。

「さよなら。レイ。」





しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子だなんて知りませんでした〜

ボタニカルseven
恋愛
「今までお世話になりました」 あぁ、これでやっとこの人たちから解放されるんだ。 「セレス様、行きましょう」 「ありがとう、リリ」 私はセレス・バートレイ。四歳の頃に母親がなくなり父がしばらく家を留守にしたかと思えば愛人とその子供を連れてきた。私はそれから今までその愛人と子供に虐げられてきた。心が折れそうになった時だってあったが、いつも隣で見守ってきてくれた精霊たちが支えてくれた。 ある日精霊たちはいった。 「あの方が迎えに来る」 カクヨム/なろう様でも連載させていただいております

身を引いたのに、皇帝からの溺愛が止まりません ~秘された珠の還る場所~

ささゆき細雪
恋愛
五年前、内乱の混乱のなかで姿を消した最愛の妃・白瑤華(はくようか)。 彼女を失った皇帝・景玄耀(けいげんよう)は、その後ただ一人を想い続けながら執務に追われていた。そんなある日、書類に彼女の名前を発見し、居ても立っても居られなくなる。 ――死んだはずの彼女が、生きている? 同姓同名かもしれないが確かめずにいられなくなった彼は地方巡察を決行。そこで、彼によく似た幼子とともに彼女と再会、地方官吏として働く瑤華と、珠児(しゅじ)を見て、皇帝は決意する――もう二度と、逃がさないと。 「今さら、逃げ道があると思うなよ」 瑤華を玄耀は責めずに、待ちの姿勢で包み込み、囲い込んでいく。 秘された皇子と、選び直した愛。 三人で食卓を囲む幸福が、国をも動かすことになるなんて――?    * * * 後宮から逃げ出して身を引いたのに、皇帝の溺愛は止まらない――これはそんな、中華風異世界ロマンス。

ただの子爵令嬢ですが、なぜか王子の恋愛相談役になりました

はくまいキャベツ
恋愛
王子がメイドに振られるという国家機密相当の現場を目撃してしまった子爵令嬢ダリア・バッケンは、口外しない事を条件に念書へ記名し、お咎めなく日常へ戻るーーはずだった。 しかし数日後、口外していないにも関わらずダリアは王城へ呼び出される。そこにいたのは理屈だけで動く男、王子の側近ブレーデン・ハノーヴァーだった。 「誓って口外などしていません!」 「…分かっている。あなたを呼んだのは別件だ」 ダリアがほっとしたのも束の間、ブレーデンは小声で付け加える。 「まあ完全に別件でもないが」 (もうなんなのよ!) 果たして、ダリアが王城に呼び出された理由とはーー

【完結】公爵子息は私のことをずっと好いていたようです

果実果音
恋愛
私はしがない伯爵令嬢だけれど、両親同士が仲が良いということもあって、公爵子息であるラディネリアン・コールズ様と婚約関係にある。 幸い、小さい頃から話があったので、意地悪な元婚約者がいるわけでもなく、普通に婚約関係を続けている。それに、ラディネリアン様の両親はどちらも私を可愛がってくださっているし、幸せな方であると思う。 ただ、どうも好かれているということは無さそうだ。 月に数回ある顔合わせの時でさえ、仏頂面だ。 パーティではなんの関係もない令嬢にだって笑顔を作るのに.....。 これでは、結婚した後は別居かしら。 お父様とお母様はとても仲が良くて、憧れていた。もちろん、ラディネリアン様の両親も。 だから、ちょっと、別居になるのは悲しいかな。なんて、私のわがままかしらね。

勘違い令嬢の心の声

にのまえ
恋愛
僕の婚約者 シンシアの心の声が聞こえた。 シア、それは君の勘違いだ。

将来の嫁ぎ先は確保済みです……が?!

翠月 瑠々奈
恋愛
ある日階段から落ちて、とある物語を思い出した。 侯爵令息と男爵令嬢の秘密の恋…みたいな。 そしてここが、その話を基にした世界に酷似していることに気づく。 私は主人公の婚約者。話の流れからすれば破棄されることになる。 この歳で婚約破棄なんてされたら、名に傷が付く。 それでは次の結婚は望めない。 その前に、同じ前世の記憶がある男性との婚姻話を水面下で進めましょうか。

年下の婚約者から年上の婚約者に変わりました

チカフジ ユキ
恋愛
ヴィクトリアには年下の婚約者がいる。すでにお互い成人しているのにも関わらず、結婚する気配もなくずるずると曖昧な関係が引き延ばされていた。 そんなある日、婚約者と出かける約束をしていたヴィクトリアは、待ち合わせの場所に向かう。しかし、相手は来ておらず、当日に約束を反故されてしまった。 そんなヴィクトリアを見ていたのは、ひとりの男性。 彼もまた、婚約者に約束を当日に反故されていたのだ。 ヴィクトリアはなんとなく親近感がわき、彼とともにカフェでお茶をすることになった。 それがまさかの事態になるとは思いもよらずに。

悪魔が泣いて逃げ出すほど不幸な私ですが、孤独な公爵様の花嫁になりました

ぜんだ 夕里
恋愛
「伴侶の記憶を食べる悪魔」に取り憑かれた公爵の元に嫁いできた男爵令嬢ビータ。婚約者は皆、記憶を奪われ逃げ出すという噂だが、彼女は平然としていた。なぜなら悪魔が彼女の記憶を食べようとした途端「まずい!ドブの味がする!」と逃げ出したから。 壮絶な過去を持つ令嬢と孤独な公爵の、少し変わった結婚生活が始まる。

処理中です...