呪われた皇帝の執着或いは溺愛

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14.メイドでは無い?

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アンテーノール侯爵家では、侯爵夫人のジャスミン様が出迎えてくれた。

銀髪はかっちり纏め上げられ一筋の乱れもない。眼鏡を掛けていて学校の厳しい先生のような印象の人だ。

「今日からお世話になります。ジェンナです。」

「宜しくね、ジェンナさん。私の名前はジャスミンよ。私の事はお母様と呼んでくださいね。」

「え?お、お母様?」

「あら?貴女、何も聞いてらっしゃらないの?」

「は、はい。このお屋敷でメイドとして雇っていただけるのかと………。」

そう言えば、レイからはっきりとメイドとして働くとは聞いていない。
しばらく侯爵家に行くように言われただけだ。

「アンドリュー陛下は何も話してらっしゃらないのね。呆れた……。貴女は今日から我が家の養女になります。手続きはもう済んでいるわ。私から話せるのはそれだけ。後は陛下ときちんと話し合いなさい。」

「よ、養女ですか………。」

もう手続きも済んでいる?
いつの間に………。

「そうよ。そして私は夫と陛下から、貴女への淑女教育を頼まれています。」

「淑女教育……。」

侯爵家の養女となるには必要なのだろう。
アンドリュー陛下は身寄りの無い私を案じてくれたのかもしれない。

でも侯爵家へ養女って………爵位が高すぎて、ちょっと困る。
どうしよう……。

私の困惑に気付いたのか、ジャスミン様は私をソファーに座らせ話をしてくれた。

「そうですわね。平民として育ったのに、いきなり侯爵家の養女になって淑女教育を受けるなんて戸惑うのも解るわ。でもね、アンドリュー陛下もずっと平民として生活してきて、即位前に急いで私が家庭教師をしたのよ。」

そうだ、教会にいた時もレイは平民の子供と同じように生活していた。
レイもジャスミン様に教えてもらったのか……。

「皇帝となるために彼は学ぶことが多くて大変だったの。だから、アンドリュー陛下は、まだまだ劣等生。あの方の考えていることは分かりやすすぎるわ。だから陛下の周囲から女官を排除せざる得なかった。」

「だから赤宮には女官が居なかったんですか?」

「そうよ、イクシオン公爵家と通じている女官は多かった。あの家はずっと行儀学校の資金援助をしてきたから………。陛下の考えてることは筒抜けで危険だったの。」

そんなに分かりやすかったのだろうか?
皇帝陛下としての彼はいつも冷たい表情をしていた。

「いい?文官や女官は仕える人間の視線を見てるのよ。」

「視線……ですか?」

「訓練された人間から見れば陛下のお考えになっている事は直ぐに分かるわ。貴女が皇宮に来て謁見したその時に、陛下が貴女を気に入っているとその場にいる全ての人間が気付いたそうよ。」

「えっ?あの、謁見の時に?」

初日は皇帝として冷たい表情しか見ていないけど……。
あんな表情のどこが『気に入っている』なのだろう?

「陛下は……そ、その…とても無表情でしたが……。」

「あの無表情は付け焼き刃。傍に仕える者は常に主人の目線を見ていて、何を見ているかを常に注目している。けれどあんな鉄仮面は駄目。悟らせるべきところと悟らせないところをコントロール出来ないと。」

「目線で………。」

「常に側仕えの者が居る立場になるには、きちんとした訓練が必要なの。」

ジャスミン様はソファーから立ち上がるとパンパンと手を大きく叩いた。

「さぁ!お喋りは此処までよ。アンテーノール家の人間を名乗るためにはきちんとした行儀作法が必要です。私は厳しいですよ。」

私がこの家の養女になるのは決定事項のようだ。
私は困惑しながらもこの状況を受け入れるしかなかった。

私はそのままアンテーノール侯爵家の使用人を紹介され、部屋へと案内された。
私が養女になることはいつから決まっていたのだろう?
内装は私の好きな色で統一され、サイズのピッタリな服がクローゼットに並んでいる。

「お嬢様、夕食は食事マナーの勉強を兼ねるそうですので、早めにお越し下さい。」

「は、はい。」

こうして私はここアンテーノール侯爵家で勉強づけの毎日を過ごすことになった。
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