呪われた皇帝の執着或いは溺愛

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15.レイのお忍び

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夕食が終わり部屋へ戻ろうとすると、アンテーノール家の執事のハルスさんから来客を伝えられた。

「こんな時間に?誰かしら?」

玄関ロビーに行くとそこには黒い外套を羽織り、髪色を変えて変装したレイが。

「レイ?どうしたの?」

外套をハルスさんに渡すと、レイは顔をくしゃりと歪めて微笑んだ。

「やっぱり、ジェンナが居ないと寂しくて……。皇宮に連れて帰りたい……。」

「陛下、それは感心しませんわね。ジェンナさんにはまだまだ淑女教育が必要ですのに……。それよりも、ジェンナさん、うちへメイドとして働くと思ってましたのよ?」

いつの間にか背後にいたジャスミン様にそう言われたレイは、少し驚いたように目を見開いて……私に視線を移した。

「ええ?……ジェンナ、……それは本当?……メイドだと思ったの?」

レイは意外そうに言うけど、普通ただのメイドが侯爵家へ養女に行くなんて想像しないと思う。

「え?……ええ、新しい就職先を紹介してくれたんだと思って……。」

「ちょっと話をしよう。」

レイは私に近づいて手を握るとジャスミン様を振り返った。

「アンテーノール侯爵夫人、部屋を借りれるか?」

「はい。畏まりました。」

レイはハルスさん案内された客室まで私の手を引いていった。


~・~・~・~・~



「えっと……何から話そうか……ジェンナは僕の気持ちに気付いてなかったの?」

「レイの気持ち?」

「僕……ずっとジェンナが好きで、探してたって……。」

「私と一緒だと眠れるからじゃ?」

「違うよ。ジェンナといると安心するのは本当だけどそれだけじゃ無いよ。」

「でも、私は平民で」

「だから、ずっと前からアンテーノール侯爵に養女に迎えてくれるよう頼んでた。アンテーノール侯爵家からお嫁に来て。」

「私が??」

「うん。」

彼は穏やかな笑顔を向ける。
私は彼が泣き虫で怖がりな事も知っている。
そして、国民のために自分を犠牲にする優しい人でもある。
だからこそ、直ぐには頷けなくて………。

「もっと力のある貴族のご令嬢と結婚した方がきっとレイを支えられると思う。」

レイは断られるなんて思わなかったのだろう。
呆然と私を見つめ、身じろぎもしない。

ーーやがて、彼は小さく息を吐いて感情を抑えるように平坦な声で尋ねた。

「どうして?アンテーノール侯爵家から嫁げば侯爵家と王家との姻戚関係も出来るし、淑女教育だって今から頑張れば……。…………皇后になるのは嫌?………それとも他に好きな人がいるの?」

ギラリとレイの瞳の奥で不穏な何かが光るのが見える。
彼が私に固執しているのは解ってる。
ただ、私の胸は悲しさでいっぱいで、ゆっくり首を振って否定した……。

「他に好きな人がいるわけじゃないわ。皇后が嫌って言うのも少し違う。レイ、…………二人共に頼りないままじゃ、駄目だと思うの。」

どう考えても、平民だった私にレイの隣は荷が重い。

ジャスミン様に劣等生だと言われたレイと、今から勉強する私じゃ不安だらけだ。

レイ………。
私の大好きな……人……。

(レイとは結婚できないよ。)

口にしてしまうと涙が溢れそうで、彼を見つめたまま首を振った。

レイは私に向かって伸ばしかけた手を止めてギュっと握りしめた。

「分かったよ。それでも、ここで淑女教育は受けて。もう何処にも行かないで、ジェンナ。」

それだけ言うと、レイは皇宮へ帰っていった。



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