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じゅうに
レオナ視点に戻ります。
グレッグさんがメエリタ商会の正式な後継者に決まった後、私は彼にプロポーズされた。
「レオナ、結婚してください。一緒に幸せになろう!」
「はい」
ありふれた台詞。
だけど嬉しかった。
旅をしてたくさんの時間一緒に過ごした。この人なら信用出来る。
そして何より、この人と人生を歩むと思うとわくわくした。
私とグレッグさんの結婚式はとても質素なもので……。
二人で選んだ田舎の教会は、小さくてとても古い。
だけど、私達の出発にはぴったりだねって笑った。
お爺ちゃん神父さんに誓いを立てた後、二人で手を繋いで教会を出る。
青い空に薄く雲が棚引いていた。
フラワーシャワーもウェディングドレスも無い密やかな結婚式。指輪だけは、お揃いのものを買ってお互いに嵌め合った。おもちゃみたいな指輪でも、何だか嬉しくて何度も光に翳して眺めた。
「小さい石でごめんね。もっと自分で稼げるようになったら新しく買うよ」
「いいの。毎日つけられるから、仕事の邪魔にならないもの」
「毎日つけるの?」
「そう、だって、嬉しいの」
結婚して最初は大変だった。私はグレッグさんの仕事の内容をあまり知らなかったけれど、いつも彼は忙しそうで。私は彼が仕事に集中出来るようにサポートに努めた。
交易の中心地となる港町に店を出し、少しずつ支店を増やし、そして結婚から五年。彼は大きな成功を収めた。
「今度王都でドレスから下着や小物まで、総合的に服飾品を扱う店を出すんだ。王都でも一番の規模になる。オープニングパーティーには、レオナも来て欲しい」
「もちろんよっ!おめでとう、グレッグ!!」
「王都に行くのは大丈夫?」
「うん。もう、怖くないもの」
彼と義父、二人の働きでメエリタ商会は大きく成長。現在は食料品から服飾品、薬、家具など、何でも扱う巨大な商会になった。
グレッグは仕事人間だけど、それでもなるべく夜は家に帰ってきてくれる。
私は夜が苦手だから。
彼の匂いと体温に包まれて眠る夜は、幸福に満たされるようだった。
彼の胸はどこよりも安心な場所……。
息子が生まれると、親子三人で眠るようになった。
夜に一人、静寂の中、目が覚める。隣を見ると、健やかな我が子の寝顔と、少し老けただんな様。二人の頬を撫で、また目を閉じる。
もう、私を傷つける人は居ない。
リリィ視点
「あーっ!あのネックレス素敵っ!あの店入ってみようよ!ねぇ、いいでしょ?」
可愛らしい服を来てお洒落をした少女が、お母さんにおねだりをしていた。お母さんは娘と手を繋ぎ笑顔で店に入って行く。
(私にも、あんな時代があったな)
羨ましく思いながら母娘を見ていた。
私にはあってお姉ちゃんには無い思い出。
私は侯爵家で住み込みのメイドとして働いていたが、職場でいじめられて辞めることになった。
何が原因か分からない。屋敷の主人にバレないように行われる陰湿な虐め。
理由が分からない。
目に見えない悪意。
怯えるだけの自分。
結局、虐められたことをメイド長に相談することも無く辞めてしまった。
「侯爵家なんて良い働き口なのに、お給金だって良かったでしょう?どうして辞めたの?」
実家に帰ると、母に理由を聞かれた。けれど私はイジメられたのだとはとても言えなかった。
プライド?恥ずかしさ?
自分でもよく分からない。
今なら、お母さんの虐待を隠していたお姉ちゃんの気持ちが分かる。
今は母と交代で父の介護と家事に追われる日々を過ごしていた。忙しくて身なりを構う暇も無い。
貴族令嬢としてはすっかり婚期を逃したから既に結婚は諦めていた。
「はぁ、あのドレス可愛い」
街の大きな服飾店に飾られたドレスに目を奪われた。
実家が豊かだった頃、これと同じピンク色のドレスを持っていた事がある。
「はあー、あの頃は楽しかったなぁ」
アウァールス男爵家の令嬢としてパーティーに参加していたキラキラした日々。
そんな事を思い出し、懐かしい気持ちになっていたら、背後から女性たちの会話が聞こえてきた。
「メエリタ商会の会頭夫妻よ!新しい店をオープンするから、パーティーを開くらしいわ」
何気なく振り返ると、私のよく知る人が居た。
「お姉ちゃん……」
声を掛けそうになったけど、どうにか声を押しとどめる。
かつての野暮ったいお姉ちゃんの面影は微塵も無い。美しく洗練された姿。オフホワイトのスレンダーラインのドレスを着こなし、立ち振る舞いにも品がある。
(声を掛けちゃいけない……よね)
一瞬、目が合った……ような気がした。
私の事が見えていたのか分からない。お姉ちゃんは、周囲の人たちを見渡して満遍なく笑顔を振りまいていたから。
そこには会頭夫人としての姿があった。
『もう、レオナを自由にしてやれ』
お父さんの言葉を思い出し、私は姉に背を向けて歩き出した。
私達家族から離れて自由になったお姉ちゃん。
私達は家族じゃなかったのだと、あらためて思い知らされた。
☆
「泥棒ー、泥棒ー、奸賊は出ていけっ!」
はぁ、またか……。
家に帰ると父が母に向かって手当り次第物を投げていた。不自由な手で杖を振り回し……。
当たったのだろうか?
母親の手には新しい青痣が見えていた。
「ただいま、お母さん大丈夫?」
「え、ええ」
父は最近物忘れが酷くなった。
時々、母を泥棒と間違えて暴力を振るう。
「お父さん、泥棒じゃ無いわ。リリィよ、娘」
「おっ、そうか……△☓□○」
私の姿を見ると、訳のわからない事をブツブツ言って止めてはくれるのだけど、母の事は認識出来ないみたい。
母のした事をぼんやりと覚えているのかもしれないと思う。
やつれてしまって、青痣を作りながら疲れた表情で介護を続ける母。それでも、お姉ちゃんが王都に居る事を教えたいとは思わなかった。
お母さんがお姉ちゃんを虐げなければ……。
後悔しても戻らない日々を思い、私は夕食を作るべく台所へと向かった。
ーー(完)ーー
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感想ありがとうございます✧◝(⁰▿⁰)◜✧
全て自分の都合良いように解釈する人って居ますよね。
でも、人を利用した人には相応の報いが待ってるよっていうお話です。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
レオナが幸せになれてよかった。
じゅうに・・・
最後
12話なんだけど、『自由に』って読んでしまった💦
感想ありがとうございます
(人 •͈ᴗ•͈)
じゅうに…わかりにくくてすみません。。:゚(;´∩`;)゚:。
拝見しました。
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