不眠症魔術師の添い寝婦として雇われました

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1.クビ?



「え、私……クビ……ですか?」

私、クラリッサ・メルチェは王宮の女官として10年勤めてきた。
貧乏男爵家の長女として、少しでも家計の助けになるように頑張ってきたのに…………。

王宮で働くとお給金は良いけれど、仕事が忙しくて繁忙期とか関係無く、年中残業が当たり前。
忙し過ぎる状況に不満はあるが、同僚に迷惑をかけるのが嫌で黙々と身体を動かし仕事を片付ける。
みんながそんな気持ちで働いているんだと思う……。

大体、この王宮は無駄が多い。
同じような報告書を何ヵ所にも提出したり、何か一つ備品を購入するのにも、財務、総務、上長に許可を貰わなければいけない。
各部署の上官である貴族同士の縄張り意識?みたいなものが蔓延っている。

その事を少ーし指摘しただけなのに、女官長と対立することになってしまった。

でもまさかクビになるなんて…………。

お給金は多いけど、皆が疲れきっているのが解る。顔色が悪くても体調が優れない日が続いても、働き続ける人を何人も知っている。
ただでさえ人手不足なのに、私が辞めたら皆の業務が増えるだろう。

でも……
考えてもしょうがない。
クビになってしまったのだから……。
みんな、恨むなら女官長を恨んでね。
私は怒りで少し冷静さを欠いていたと思う。
感情のまま、勢いよく了承の返事をした。

「分かりましたっ。今までお世話になりましたっ!」

扉をバンッと勢いよく閉めて部屋を出ると、途端に後悔の念が襲ってくる。

しまった。
私の悪いクセ。。

新しい勤め先を紹介してもらえば良かった……。
結婚や出産、体調が悪くて免官になった人たちはみんな次の職場を紹介して貰うのに……。

後悔しても遅いかぁー。
はぁー
私物片付けなきゃ……。

王宮より高いお給金の働き口なんてあったっけ?

だいたいあの女官長、なんの予告も無しにクビって酷くない?

あームシャクシャするっ!!

今日はちょっと奮発して飲みに行くか……。

私物の後片付けは明日でいいか。

城下町の酒場は比較的安全で、女一人で行っても大丈夫。
安全な分、料金は高いが……。

飲み屋の近くの宿を取り、一人でやけ酒を呑むため酒場に向かった。

カウンター席で物腰の柔らかいマスターに向かって愚痴を言う。

「だいたい、業務量が多いのよ!無駄が多すぎるっ!!私気がついたら婚期も逃してて、これからどうすればいいのよぉーー!!」

言い出したら次から次へと不満が口から零れ出てきて止まらない。

「あー、これからどうしよう?マスター、いい仕事紹介してよ!」

「ええっ!?思い付かないなー?あっそうだ!
『美魔女』って店のママが接客出来る女の子を探していたよ。」

「接客って……いかがわしいの?」

「いやー、そんなこと無いと思うよ。お客さんの隣に座ってお酒の相手をするだけだよ。そんな下品な客は来ない店だ。ただ、お客さんには口説かれるだろうけどね。」

「ねぇ、マスター。その『美魔女』のママを私に紹介してくれない?」

その時、背後から急に声を掛けられた。

「俺が雇ってやろうか?」

振り向くと王宮魔導師室長のギャビン様が立っていて、私の隣の席にどかりと腰を下ろした。
王宮で見掛けることはあるけど言葉を交わしたことは無い……。
無愛想でいつも眉間に皺を寄せて難しい顔をしている。
ただ、容姿端麗で仕事も出来るから王宮では密かに人気がある。

「ど、どんな仕事ですか?」

「ん?………あとで……な。それよりもお前はどうして王宮を辞めたんだ?」

「書類が多すぎると思いませんか?無駄も多くて……それを変えたいって女官長に言ったら暇を出されました。」

「ああ?……ははは、あの女官長に意見を言うとは大したもんだな。」

「はあー、まぁ溜まってたんで……。」

わぁーこの人って笑うんだ。
笑った顔は存外幼くて………。
男性に免疫の無い私はドキドキして、ひたすら緊張していた。
それ以上は特に共通の話題もなく、私は緊張をほぐすため、無言で果実酒を飲み続けた。

気まずさと宿を予約してあるという安心感から少し飲み過ぎたみたい。
ふわふわして気持ち良くて……。
あっそういえば?

「ギャビン室長、私の仕事って何ですか?」

「少し、言いにくいが……俺と一緒に寝てもらえないか?」

ギャビン室長って独身だけど……。
要するにアレってこと?
なんだ……。
一晩のお相手ね。

私は初めてだけど、経験豊富そうなギャビン室長なら上手く導いてくれそう……かな?
みんな初体験は慣れた人が良いって言ってたし……。

酔って気も大きくなっていた私は明るく頷いた。

「良いですよ?」
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